リハビリテーションで行われる評価の中で、腱反射はよく行われると思います。しかしながら、脳卒中の方に腱反射を行う意味にはどんなことが考えられるのでしょうか。今回、脳卒中片麻痺者に腱反射をする意義と、脊髄レベルの興奮性をみる理由について考えていきたいと思います。
目次
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一般的に知られている腱反射を行う意義や目的ですが、
・障害部位が中枢性(上位ニューロン)か末梢性(下位ニューロン)かの診断の手立て
・筋緊張亢進の有無・程度を知る
・身体機能の予後予測
などがあります。
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腱反射(伸張反射)は、腱を叩くことでそれに付いている筋が伸張され、刺激された筋が収縮する状態です。
腱反射は単シナプス反射(反射弓がひとつのシナプスで構成される)になります。
そのメカニズムは以下のようになります。
・腱が伸び、筋や筋紡錘も伸びる
・筋紡錘(筋の長さを感知する受容器)の興奮
・脊髄前角細胞に伝達され、筋が収縮(反応時間が短く、刺激された筋と同じ筋に出現)
もう少し詳しく説明すると、
・錘内繊維(筋紡錘にある)が受容器となり、Ⅰa繊維が求心性にインパルスを発してα運動ニューロンを興奮させ、筋収縮が生じる
ということになります。
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腱反射の亢進、減弱と筋緊張の関係性をみていきます。
腱反射が亢進している状態では、筋緊張は亢進していることが多く、
腱反射が減弱している状態では、筋緊張も低下していることが多いです。
また、筋緊張は低下、腱反射の軽度亢進が見られる場合、一見弛緩様と呼ばれます。
筋緊張が亢進しているが、腱反射の亢進が見られない場合、筋強剛または短縮の状態が考えられます。
筋緊張については以下の記事も参照してください。
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伸張反射を亢進させるメカニズムとしては、
①Ia繊維の興奮性が増大する
②α運動ニューロンの興奮性が増大する
③シナプス前抑制機能の低下
④Ib抑制機能の低下
⑤Ia抑制機能の低下
⑥反回抑制機能の低下
が考えられます。
これらのうち、③〜⑥については随意的なシステムとなっています。
①Ia繊維の興奮性が増大する②α運動ニューロンの興奮性が増大するの2つについては、腱反射でその様子をモニタリングすることが可能です。
すなわち、Ia繊維、α運動ニューロンの興奮度合いをモニタリングすることが可能ということです。
腱反射を通じて、脊髄レベルのモニタリングが可能になるということです。
ということは、腱反射を評価として行い、その結果が(++)や(+++)では、脊髄レベルでの興奮性が高まっていると考えられます。
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我々が運動発現するまでの過程は大まかには、
一次運動野→皮質脊髄路→脊髄運動ニューロン→筋収縮
という流れになります。
このとき、例えば皮質脊髄路で損傷を受けたと過程した場合、損傷を受けた部位だけではなく、運動発現の流れの中でつながりのある一次運動野、脊髄運動ニューロンにも機能低下を生じる可能性が考えられます。
この、遠く離れた部位にも機能障害が現れることをディアスキシスといいます。
ディアスキシスは、損傷部位と神経繊維連絡がある部位にに可塑性の機能抑制を生じさせている状態です。
この場合、可塑性の機能抑制とある通り、一定期間が経てば活動が再開し、自然回復されるものだと考えられています。
ここで腱反射の話に戻りますが、腱反射は脊髄レベルの興奮性のモニタリングができることは前途した通りです。
皮質脊髄路の損傷でディアスキシスにより遠隔部位(一次運動野、脊髄運動ニューロン)に機能抑制が生じていて、それが一定期間経過したときに自然回復してくるのだとすれば、腱反射を通じて脊髄レベルの回復度合いを知ることが可能になります。
機能抑制が生じている場合、腱反射を行っても反応はあまりないかもしれませんが、腱反射により反応があれば、脊髄レベルにおいて自然回復が進んでいると捉えることが可能です。
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腱反射により、脊髄レベルにおける興奮性を把握することができれば、それを治療プログラムにも反映させることが可能になります。
たとえば、関節運動が生じていない状態でも、腱反射亢進が認められている場合、今後の筋緊張変化や腱反射の変化を丁寧にみていくことが必要になるでしょう。
分離ができていない方で、腱反射の亢進があまり見られていない方(経過を追っている中で腱反射の大きな変化がない)では、どんどんと分離運動のトレーニングを進めていくことが可能です。
また筋出力が低下している方で、同様に腱反射の亢進があまり見られていない方(経過を追っている中で腱反射の大きな変化がない)でも、どんどんと出力を上げるようなトレーニングを行っていくことが可能です。
しかし、分離運動または筋出力が低下しているるが、腱反射が経過を追っていく中で亢進していくような場合は、どんどんと出力を上げるようなアプローチを行うことで筋緊張が亢進してしまうことも考えられます。
そのような場合は、毎日の腱反射の変化を見ながらトレーニング内容を適宜変更していくことが必要になります。
脳卒中に対するトレーニングは以下の記事を参照してください。
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