小脳は、運動調節や運動学習に関わりますが、実際にはどのような経路を経て、どのような情報のやり取りが行われているのでしょうか。今回、小脳における運動の調節と運動学習はどのように行われるかについてまとめていきたいと思います。
目次
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小脳と大脳は、3つの脚によって繋がれています。
・上小脳脚(出口)ー歯状核
・中小脳脚(入り口)ー橋核
・下小脳脚(入り口または出口)ー下オリーブ核
ここで言う「出口」は小脳から情報が出て行くもの(出力)、「入り口」は他部位から小脳へ情報が伝わるもの(入力)を指します。
小脳は機能的に3つの部位に分けられており、その機能は以下の通りです。
・大脳小脳:随意運動の調節と組み立て、フィードフォワード機能
・脊髄小脳:近位筋・遠位筋の運動における実行、フィードバック機能
・前庭小脳:姿勢維持、眼球運動
小脳には3つの核があります。
・歯状核(大脳小脳からの上行性出力に経由する核):意図的な上肢運動などの内部モデル化した記憶が貯められる
・中位核(脊髄小脳からの上行性出力に経由する核)
・室頂核(脊髄小脳からの上行性出力に経由する核):姿勢制御などの内部モデル化した記憶が貯められる
出典:中上 博之先生の脳画像資料より
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先ほど、小脳への入力には2つの脚(中小脳脚、下小脳脚)があると述べました。
その中で、橋小脳路では中小脳脚が関与します。
大脳小脳には、橋小脳路を介して大脳皮質からの情報(前頭橋路を経由したもの)が入力されます。
四肢や体幹からの意識にのぼらない感覚情報は、脊髄小脳路を経由して脊髄小脳に入力されます。
脊髄小脳路には3つの経路があり、上小脳脚や下小脳脚を経由します。
脊髄小脳には、他にも入力される情報があり、虫部には視覚や聴覚情報が、小脳半球中間部には大脳皮質からの情報が入力されます。
大脳皮質や脊髄、小脳核からの感覚情報は、下オリーブ核から下小脳脚を経て対側小脳皮質に入力されます。
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室頂核、中位核を経由して視床(VL:外腹側核(Ventral lateral nucleus))に送られて、一次運動野に投射されます。
中位核、対側赤核を経由して、赤核脊髄路として交差し屈筋群の活動に関与します。
歯状核を経由して、視床(VL:外腹側核(Ventral lateral nucleus))に送られて、一次運動野、運動前野、前頭前野に投射されます。
橋網様体脊髄路を経て四肢伸筋、体幹筋の運動に関与します(筋緊張や反射の調節)。
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新規学習(初めての運動や動作)の場合、まずは実際にやってみるということになります。
そのため脳内では、
運動野→放線冠→内包後脚→大脳脚→橋核→延髄→脊髄前角→α運動ニューロン
という流れになります。
この段階では、フィードバック情報をもとに運動調節と運動学習が図られていきます。
先ほどと同じく、運動野からの情報は錐体路を介して出力されますが、それと同時にその情報(得られるはずの感覚情報:予測された結果に関する感覚情報)は小脳半球にコピーされます(皮質橋小脳路を介して)。
この情報は小脳核から下オリーブ核に送られます。
実際に運動したことで得られる感覚情報(運動の結果に関する感覚情報)は、筋紡錘、腱紡錘や関節受容器から下オリーブ核に送られます(脊髄オリーブ小脳路を介して)。
そこではそれぞれの情報が照合され、誤差信号として検出されると小脳にフィードバッックされると(登上繊維を介して)、平行繊維-プルキンエ細胞のシナプス伝達効率が長期抑圧を受けることでコピーされた運動モデルが書き換えられます。
運動学習により短期と長期の記憶痕跡が小脳皮質と小脳核にそれぞれできるのですが、短期の運動記憶痕跡はプルキンエ細胞のシナプスに長期抑圧が生じることによりできるとされています。
なお、長期抑圧とは、登上線維によってエラーの情報がプルキンエ細胞に繰り返し伝わると、登上線維と同時に活動していた平行線維からの信号がその後長期間にわたりプルキンエ細胞に伝わりにくくなる現象を言います。
このような誤差信号に基づく内部モデルの変化を経ながら、手続き記憶となっていくと考えられています。
そのことによって、感覚フィードバックに依存しなくても運動が行えるようになります(フィードフォワード制御)。
なお、内部モデル化した記憶は小脳核に貯められます。
運動学習については以下の記事も参照してください。
小脳のリハビリテーションについては以下の記事も参照してください。
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