今回、脳卒中ガイドライン(2015)から、エビデンスのある記憶障害へのアプローチについてまとめていきたいと思います。
目次
スポンサードサーチ
スポンサードサーチ
スポンサードサーチ
「脳卒中治療ガイドライン2015」では、
・脳卒中一般
・脳梗塞・TIA
・脳出血
・クモ膜下出血
・無症候性脳血管障害
・その他の脳血管障害
・リハビリテーション
について、内科的薬物治療のみではなく、外科的治療、急性期における全身管理、嚥下障害と栄養摂取、合併症予防、リハビリテーション、地域連携等の視点から述べられています。
また、各論文のエビデンスレベルが5段階で評価され、それをもとに下図のように推奨グレードが決定されています。
脳卒中ガイドラインについては以下の記事も参照してください。
脳卒中ガイドライン(2015)と高次脳機能障害!評価と介護負担感の関係性!
脳卒中ガイドライン(2015)とエビデンスから見た失行へのアプローチ!
脳卒中ガイドライン(2015)とエビデンスから見た遂行機能障害へのアプローチ!
脳卒中ガイドライン(2015)とエビデンスから見た注意障害へのアプローチ!
脳卒中ガイドライン(2015)とエビデンスから見た半側空間無視へのアプローチ!
スポンサードサーチ
軽度の記憶障害が確認される対象者については、内的ストラテジーや外的代償手段を使用することを行うように勧められています。
また、重度の記憶障害が確認される対象者については、生活に直結する外的代償手段を使用することを行うように勧められています。
エラーレス学習は、行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠はないとされています。
認知リハビリテーションに関しては、効果の根拠が十分に示されてはいません。
内的ストラテジーとは、記憶術のように捉えるとわかりやすいと思います。
例えば12星座を覚える時に、私は
「おお不可思議、おてさいやみう」と覚えました。
これは、それぞれの星座の頭文字(「オヒツジ、オウシ、フタゴ、カニ、シシ、オトメ、テンビン、サソリ、イテ、ヤギ、ミズガメ、ウオ」)をとって、順番に並べたものです。
このような戦略は「頭文字記憶法」と呼びます。
他にも、視覚イメージ法やPQRST法などがあります。
視覚イメージ法は名前を覚える際に、動物やキャラクター、有名人に似ているなどの視覚イメージを用いる方法になります。
PQRST法は記憶障害の方に対する学習方法の一つで、「Previw」「Question」「Read」「Self-Recitation」「Test」からなります。
PQRST法は、言語性記憶障害のある方が対象になります。
要するに、
Previw:全体的なものとして捉えるためにはじめにざっと目を通す
Question:文章の鍵となる意味内容について尋ねる
Read:上記の質問に答えれるように文章を読み込む
Self-Recitation:読み終えた情報を積極的に覚えていく
Test:質問に答え、正誤を再検討する
というような構成になっています。
PQRST法は、文章を記憶するために有効な学習法であり、このような戦略は言語的記憶戦略法と呼ばれています。
外的代償手段には、
・メモリーノート
・ICレコーダー
・アラームやタイマー
・スマートフォンのアプリ
などがあります。
これらは活用できると便利なものですが、それが定着するまでをしっかりと練習しなければなりません。
まずは、外的代償手段を使用する意義や使用意欲を高めていく必要があります。
般化に向けては、アラームなどの補完手段と組み合わせることが考えられます。
携帯のアラームでメッセージをつけれる機能があれば、定期的にノートの使用を促す機会になるかもしれません。
特定の場面ではノートを使用できるが、環境が異なるとノートの使用ができなくなることもあるため、般化には、患者をとりまく周囲の環境設定が重要になってきます。
「場面」「課題」「支援者」で区別することで、般化に至らない要因を発見することに役立ちます。
「場面」では、同じ指示内容を同じ支援者が違う場面で言う場合です。他の環境(例えば周囲が騒がしい)にて同じ指示を書き分けることができない場合、支援者は口頭指示に加えて視覚的な提示や個別に指示を与えるなど場面設定を行う必要があります。
「課題」では、同じ支援者が一定場面で違う指示内容を言う場合です。指示内容の変化により書き分けることができない場合、口頭指示に加えて視覚的な提示を行ったり、キワーワードを強調する、あらかじめ異なる課題を指示することを説明するなどの設定が必要になります。
「支援者」では、同じ指示内容を一定場面で異なる支援者が言う場合です。
この場合は、人による違いのため、段階としてはいきなり新たな支援者からの指示とせず、今までの支援者と新たな支援者両方いる場面で新たな支援者が指示を出すなどのステップが日必要です。
スポンサードサーチ
エラーレス学習(誤りなし学習)とは、誤りをさせない学習方法です。
一方、誤り(試行錯誤)を通じて学習していく方法は、エラーフル学習(誤りあり学習)になります。
記憶障害を有する方においては、エラーレス学習とエラーフル学習を比較すると、エラーレス学習の方がよい成績になると言われています。
そのため記憶障害を有する方には、エラーレス学習を中心にリハビリテーションを行っていく必要があるとされています。
記憶障害を有する方では、一度間違えて覚えてしまうとその誤反応が残ってしまい、正しい反応や行動に修正しにくくなるという特徴があります。
このことから、記憶障害を有する方が、新規の事を覚えようとする際には、先に誤った反応が出るのを避ける必要があるといえます。
そのため、最初から正しい(覚えてほしい)反応が出るように、セラピストや介護スタッフ、家族は関わっていく必要があります。
健常者では、エピソード記憶が正常なので、誤反応があったとしても、その体験をもとに正しい反応や行動に修正することが可能です。
潜在記憶は記憶障害者にも保たれているため、自分の行った誤り反応が潜在記憶に残り、次回以降も同じ誤りを繰り返す結果になると考えられている。
綿森 淑子ら「記憶障害のリハビリテーション-その具体的方法-」リハビリテーション医学 VOL.42 NO.5 2005
潜在記憶は簡単に言うと無意識レベルの記憶で、専門的に言うと「意識的な想起を伴わない記憶」となります。
誤反応が無意識レベルの記憶として保たれてしまうというわけです。
スポンサードサーチ