くも膜下出血は脳血管障害の中でも予後予測が難しいと言われている疾患の一つです。今回、くも膜下出血の予後予測について、機能予後やADLの予後を予測するために必要なことをまとめていきたいと思います。
目次
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くも膜下出血の予後予測は難しいとされている理由としては、その症状や経過が多彩なことにあります。
くも膜下出血では意識障害が長引いたり、手術や水頭症などの合併症により回復が難しくなることが多くあります。
また、逆のパターンとして急激に回復が見られる例もあったりします。
このような理由から、くも膜下出血の予後予測は難しいとされています。
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くも膜下出血の予後予測に必要なもの(材料)としては以下のようなものがあります。
今回は、宮越先生の「くも膜下出血において退院時ADLに影響を与える因子の検討―Classification and regression trees(CART)を用いた予後予測の試み―」を参考にしていきます。
・年齢
・Fisher分類
・意識障害の持続期間
Group 1
血液の認められないもの
Group 2
びまん性または垂直の脳槽に1mm 未満の血液層
Group 3
局所的な血腫あるいは脳槽に1mm 以上の血液層
Group 4
びまん性くも膜下出血またはくも膜下出血がなくても、脳内または脳室内に血腫
Fisher group1-4は点数が大きいほど重症にはなっておらず,group1-3はくも膜下出血の程度に比例して点数が増えていますが,Fisher group4はくも膜下出血がないか非常に薄く,通常は脳内出血や脳室内出血だけがあることを示しています.
基本的にくも膜下出血があれば,脳内出血や脳室内出血の有無にかかわらず Fisher group1-3のどれかになります.
Fisherの原典の趣旨は,重度のくも膜下出血に症候性の脳血管攣縮は起こるが,脳内出血や脳室内出血だけで は脳血管攣縮は起こらない,言い換えるとFisher group3のみに症候性の脳血管攣縮が起こることでした.小宮山他「Fisher group 4 の誤解」脳卒中の外科 43: 232 〜 233,201
JCS(Japan Coma Scale)
Ⅰ 刺激しなくても覚醒している状態(―桁で表現)1 大体意識清明だが、今ひとつはっきりbない
2 見当識障害がある 3 自分の名前、生年月日がいえない |
Ⅱ 刺激すると覚醒する状態−刺激をやめると眠り込む−(2桁で表現)10普通の呼びかけで容易に開眼する (合目的的な運動をするし言葉もでるが間違いが多い) 20大きな声、または体を揺さぶることにより開眼する (簡単な命令に応ずる。例えば離握手) 30痛み刺激を加えつつ、呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する |
Ⅲ 刺激しても覚醒しない状態(3桁で表現) 100痛み刺激に対し、はらいのけるような動作をする 200痛み刺激で手足を動かしたり、顔をしかめる 300痛み刺激に反応しない |
注 R :不穏、I: 失禁、A :無動性無言、 失外套症候群
この中で、2桁以上の意識障害の持続期間を因子としています。
意識障害の評価については以下の記事も参照してください。
意識障害(せん妄含む)のメカニズムと評価方法、リハビリテーションアプローチ!
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前途した、「くも膜下出血において退院時ADLに影響を与える因子の検討―Classification and regression trees(CART)を用いた予後予測の試み―」において、年齢、Fisher分類、意識障害の持続期間を用いたくも膜下出血の予後予測が紹介されています。
それによると、
63歳以上のADL非自立予想群:85.7%
62歳以下でFisher分類2以下のADL自立予想群:83.3%
全体:77.4%
で予測が的中していたとのことです。
ADLの自立、非自立については、自立をFIM116点以上、非自立をFIM115点以下としています。
出典:くも膜下出血において退院時ADLに影響を与える因子の検討―Classification and regression trees(CART)を用いた予後予測の試み―
図を見てもらうと、年齢が63歳以上の方ではADLに何らかの介助が必要であるのが85.7%という予測になります。
62歳以下の方では、Fisher分類が2以下であればADLが自立するのが88.3%という予測になります。
また、62歳以下の方で、Fisher分類が3以上であれば、
・JCS(Japan Coma Scale)の2桁以上の意識障害の持続期間が6日間以下であればADLが自立するのが66.7%という予測になります。
・JCS(Japan Coma Scale)の2桁以上の意識障害の持続期間が7日間以上であればADLに何らかの介助が必要であるのが60.0%という予測になります。
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