肩上方の痛みの原因のひとつに、肩峰下滑液包があります。肩峰下滑液包に問題があると、肩峰下インピンジメントを生じることがあります。今回、肩上方の痛みと肩峰下インピンジメントの評価について、文献を参考にまとめていきたいと思います。
目次
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肩上方にかかる力学的ストレスとして、圧縮ストレスがあります。
上肢挙上により肩関節上方組織が肩峰の深くに入り込むことで圧縮ストレスが生じます。
第2肩関節は、圧縮ストレスを受けやすい組織です。
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肩峰下滑液包は、烏口肩峰靭帯、烏口突起、肩峰からなる烏口肩峰アーチと腱板の間にある滑液包です。滑液包は三角筋まで至るものや、烏口突起下に至るものもあります。
肩峰下滑液包の存在により、第2肩関節に生じる圧縮ストレスを和らげる働きがあります。
肩関節挙上により上腕骨は上方へ転がり、下方に滑りますが、この運動により大結節が肩峰下に入っていきます。その通路には内旋位で通過する前方路、外旋位で通過する後外側路、中間位で通過する中間路があります。
上腕骨の下方への滑り運動が行えなくなると、大結節が肩峰を通過できなくなり、これを肩峰下インピンジメントと呼びます。
肩峰下インピンジメントにより肩峰下にある棘上筋、棘下筋、肩峰下滑液包に加わる圧縮ストレスが強まります。
圧縮ストレスによりこれらに由来する疼痛が生じると考えられます。
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肩峰下滑液包は、体表から触れることはできないため、肩峰下における圧痛や超音波、画像所見にて確認します。
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①肩関節内旋した下垂位を開始肢位とします。
②検者は肩甲骨と前腕遠位部を把持し、肩甲骨を固定した状態から肩関節内旋挙上運動を行います。
解釈:疼痛(+)で陽性
*肩関節内旋位での挙上運動では、anterior path(前方路)を大結節が通過します。ここでインピンジメントが生じれば、疼痛を生じさせ、圧縮ストレスにより肩峰下滑液包や腱板損傷を引き起こしたと考えることができます。
*テストの感度が低いため、陰性でも画像所見などの情報を得るようにします。
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①肘関節屈曲した肩関節90°水平内転位を開始肢位とします。
②検者はそれぞれの手で肩峰、上腕骨遠位部を把持し、肩関節内旋を他動的に行い(強制し)、その時に肩峰が挙上するのを抑えます。
解釈:疼痛(+)で陽性
*肩関節90°水平内転位での内旋運動は、rotational glide(60°〜90°)でのanterior path(前方路)における大結節の通過を評価しています。
*テストが陽性の場合は高い確率で肩峰下インピンジメントがあると考えられますが、肩峰下インピンジメントがあってもテストが陰性となることもあります。
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第2肩関節において、摩擦ストレスが増強する状態が肩峰下インピンジメントであり、腱板の肥厚や石灰沈着、肩峰下滑液包炎や癒着が問題となり、これらは画像所見から評価します。
運動学的な要因としては、肩甲上腕関節の上方軟部組織の拘縮があると、下方への滑り運動が阻害され、相対的に上腕骨が過剰に上方変位するため、インピンジメントの原因となります。
また上肢挙上時の肩甲骨の上方回旋の不足により相対的に第2肩関節のスペースが狭くなり、インピンジメントを起こす原因となります。