認知症の対象者に対してはパーソンセンタードケアの視点が重要視されており、そのためにバックグラウンドである生活史の把握が重要だとされています。今回、認知症者の生活史(生活歴)の把握に利用できるライフヒストリーカルテの概要と利用方法をまとめていきたいと思います。
目次
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認知症対象者の生活史を知るには、
・認知症対象者へのインタビュー
・主たる介護者や家族へのインタビュー
を行うことで把握できます。
生活史を知るための項目としては以下のものが挙げられます(あくまで例なので、認知症対象者に合わせてください)。
・出生地、住んでいる場所、親・兄弟、家族の人柄・性格、地域の特徴
・学校、好きな科目、最終学歴、学校の友達、どんな遊びをしたか
・いつから働いたのか、何の仕事か、どのような仕事が好きか
・配偶者、いつ結婚したか、子供は何人、子供は何をしているか
・趣味・興味、今の趣味・興味、休みの日の過ごし方
・印象に残っていること、頑張った・苦労した事、楽しみだった事、嬉しかったこと、好きだったこと
・節目(就学、就職、転居、結婚、戦争、家族の変化など)
また、この時写真などを見せることで自伝的記憶が想起されやすくなることがあります。
認知症対象者に見せる写真や実物の例として、
・お手玉、おはじき、めんこ、かるた、竹とんぼ、こま、かるた
・教科書、ランドセル
・結婚式の写真、着物、嫁入り道具
・そろばん、ミシン、織り機
・草花、蚊帳、風鈴、うちわ、火鉢
・正月、節分、ひな祭り、お盆、月見、お祭り
・レコード、歌詞、ハーモニカ
・ラムネ、芋ご飯、すいとん、かき氷
などがあります。
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生活史(生活歴)を把握する事は、認知症対象者だけでなく援助者(医療職・介護職)にもメリットがあります。
例えば、医療的な情報だけでは認知症対象者がどのような人生を歩んできて、何に興味を持ちどのような関心があるのかまでは把握することができません。
生活史(生活歴)を把握していると、例えばケアの際に認知症対象者が好きな歌を一緒に歌うことで安心感を感じてもらえたり、それによってケアをうまく受け入れやすくなることもあるかもしれません。
また日中特に何もすることがない方でも、以前趣味にしていたことがわかれば、その情報を元に作業活動をしてもらい、それが日中活動につながることも考えられるでしょう。
生活史に基づいた会話を展開できれば、認知症対象者は安心感を得られるでしょうし、それが信頼関係の構築に役立つことも考えられます。
西九州大学の上城先生が、「対象者にとってのキーワード(我に返れる魔法の言葉)」を用いて、コミュニケーションを取りながら行動を修正していくことも大切だと仰っていましたが、生活史(生活歴)の把握から魔法の言葉が見つかることもあるかもしれません。
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ライフヒストリーカルテとは、作業療法士の田中寛之先生らによって開発されたものです。
作業療法士が重要と考えているナラティブな視点を他医療・介護職への理解を促進させるためのツールとして、高齢患者・利用者の生活史を簡便に把握できるライフヒストリーカルテを開発した
田中寛之他「ライフヒストリーカルテの導入が医療介護職員の患者・利用者理解度に与えた影響」作業療法:38 405-415,2019
ライフヒストリーカルテは、
・ふるさとについて(出身地、その土地の環境など)
・家族関係(両親や兄弟について、家庭での役割)
・学校、友達、遊びについて(教育歴、好きだった教科、先生、友達とした遊びなど)
・職業(仕事の内容や思い出、人付き合いなど)
・結婚について(結婚式での思い出、子育てなど)
・趣味(好きな歌、旅行など)
・本人がされていた日課や休日をどのように過ごしていたかなど生活習慣
・本人の人柄。どのような姿が印象に残っているか
・本人の特技や自慢できること、生きがい、大切にしていること
病院・施設などの入院・入所時に、ご家族の方にライフヒストリーカルテに記入してもらうことが理想的だと思われます。
入院・入所後は業務の関係もありご家族の方と出会いにくいということも十分に考えられるためです。
また、得られた情報を随時追加しておくことで、さらに対象者の生活史を詳細に把握することに繋がります。
認知症対象者のコミュニケーション能力が残存しているのであれば、ライフヒストリーカルテの情報をもとに、さらに生活史を引き出し、対象者の思いや考え方などを他職種間で共有できることができると思われます。
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