認知症者の意欲障害の評価として、Apathy Evaluation Scale 介護者評価(AES-I)の日本語版があります。今回、認知症におけるアパシー(意欲障害)の評価として、AES-I-Jの概要と評価方法、結果の解釈についてまとめていきたいと思います。
目次
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認知症では、中核症状である記憶力低下、見当識低下、判断力低下などを軸にしながら、行動・心理症状(BPSD)が生じることがあります。
BPSDには、摂食障害、攻撃性・暴力、易刺激性、不安、脱抑制、抑うつ、多幸、睡眠障害、アパシーなどがあります。
アパシーが生じやすい疾患として血管性認知症が挙げられていますが、アルツハイマー型認知症においてもアパシーが高頻度でみられるとの報告もあります。
アパシーは自発性低下などによりADL障害を引き起こすことを考えればアパシーへの知識や対処方法を知っておくことは重要になります。
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アパシーはADL低下などを主とし、睡眠障害、異常行動、摂食障害などと同様に身体症状として区分されています。
アルツハイマー型認知症において、アパシーは高頻度に発生しやすいことが示唆されています(発生頻度の幅は広い)。
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アパシーの病態について、
前頭葉前部で皮質下構造でのコリン作動性ニューロンの損失に関連がある可能性があるともいわれているが、この場合、こうしたワーキングメモリに影響があり、それによって感情を発露することを含めた、行動の実効性が阻害されているのかもしれない。
脳疾患によるアパシー(意欲障害)の臨床 P77
とあります。
前頭連合野は、ワーキングメモリと関連がありますが、ワーキングメモリは行動や決断のために情報を統合し、行動を行うための脳内のシステムといえます。
前頭連合野がその中心となっていますが、ワーキングメモリは情報の受容、保持、行動の出力の3つの過程からなります。ある情報処理で、前頭連合野に刺激が入ると、それぞれの過程が層状に進行していき、行動を導いていきます。
アルツハイマー型認知症におけるアパシーでは、内側眼窩正面の前帯、舌状回、その周囲で活動低下が起こっています。また前頭回での活動量低下もあり、これにより認知、情動・抑うつといったアパシーの症候が出現すると考えられています。
海馬においても活動性の低下がみられますが、海馬は動機付けのコントロールにも関与していると言われることから、アルツハイマー型認知症でアパシーが高頻度でみられることを理解する一助となるかもしれません。
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AES-I-Jは、介護者が、過去4週間における対象者の気持ちや行動について評価するものとなっています。
質問項目は18項目から構成されています。
得点は4段階(4,3,2,1)で選択していき、合計は72点満点となります。
まったくあてはまらない=4点(逆転項目は1点)
わずかにあてはまる=3点(逆転項目は2点)
多少あてはまる=2点(逆転項目は3点)
とてもよくあてはまる=1点(逆転項目は4点)
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評価項目
①興味を持っていることがある
②その日の仕事(家事も含む)をその日のうちに済ませている
③自分から何かを始めることは、大切なことである
④新しい体験をすることに興味がある
⑤新しい物事を学ぶことに興味がある
⑥何をするのにもあまり努力をしない
⑦一生懸命に人生を過ごしている
⑧何かの物事を初めから終わりまで見届けることを大切に思っている
⑨興味のあることに時間を使っている
⑩毎日するべきことを、誰かが言う必要がある
⑪自分の問題(病気など)に関して、あまり気にしていない
⑫友人がいる
⑬友人と一緒に集まることを大切にしている
⑭何か良いことが起こるときに、ワクワクした気持ちになる
⑮自分が抱えている問題を正しく理解している
⑯その日の仕事(家事も含む)をその日のうちに済ませることを大切にしている
⑰自主性がある
⑱やる気がある
出典:Apathy Evaluation Scale 介護者評価の日本語版(AES-I-J)作成
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アパシーの有無については、AES-I-J のカットオフ値を45/46とした際に、その感度が89.5%、特異度が81.0%となったと報告しています。
なお、元版では、認知症患者を対象としてのカットオフ値は41/42となっているようです。
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