MMSEは動作性IQの項目を多く含み、認知症の有無を評価するために使用されることが多い評価バッテリーです。今回、MMSEの評価項目と脳機能との関連や、詳細評価に繋げるための視点についてまとめていきたいと思います。
目次
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Mini-Mental State Examination(MMSE)は認知機能障害のスクリーニング検査として、世界的に用いらている評価バッテリーです。
MMSEは、
・時間の見当識
・場所の見当識
・記銘(3つの単語の即時記憶)
・計算(シリアル7:100から7を引いていく)
・復唱
・三段階の指示への従命
・読字
・想起(3つの単語の遅延再生)
・命名
・書字
から構成されています。
そして、その点数う配分としては、言語機能が主になる課題が29点分、視空間認知を主になる課題が1点分の、計30点満点になっています。
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MMSEのカットオフについては有名な話ですが、認知症の疑いについては23点以下がカットオフ値になっています。
なお、23点以下をカットオフ値とした場合、その感度は81%、特異度は89%となっています。
では軽度認知障害(MCI)の場合はどうでしょうか。
MCIの場合、MMSEの得点において27点以下をカットオフ値とし場合、MCIが疑われます。
なお、27点以下をカットオフ値とした場合、その感度は45-60%、特異度は65-90%となっており、やや物足りなさが残ると言えます。
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時間の見当識においては、関連する脳機能は「海馬」です。
海馬とは、大脳側頭葉の内側部で側脳室下角部に位置し、エピソード記憶等の健在性記憶の形成に不可欠な皮質部位となります。
海馬の機能低下により、エピソード記憶における短期記憶障害が生じます。
アルツハイマー型認知症の方では、この時間の見当識障害が現れやすいことが特徴です。
アルツハイマー型認知症の方では、その場の会話としては可能(ワーキングメモリの機能は保たれやすい)ですが、間に違う話を入れると、先ほど話していた内容が忘却されてしまうということがよくあります(これは海馬の機能が必要)。
場所の見当識の設問については、意味記憶とエピソード記憶が必要になり、これは側頭葉や海馬の機能が必要になります。
即時記憶では、主にワーキングメモリーの働きによって再生されますので、関連する主な脳領域としては前頭前野になります。
MMSEにおいては、100から順番に7を引いていくということで、かなり複合的な能力が要求されます。
主なものとしてはワーキングメモリ、計算能力、注意機能が関与します。
脳機能部位としては前頭前野が関与します。
MMSEのマニュアル通りに実施すると、上記のどの機能低下が計算能力に影響しているかが捉えにくいというデメリットがあります。
そのため、①口頭指示②文字提示③筆算式の提示などを行います。
ADの多数例の検討では、5〜3点の範囲は分配性注意障害によって失点する傾向があり、2〜0点は持続性注意や数字概念および計算の障害が多く影響していると報告されている。
Evidence Based で考える 認知症リハビリテーション
遅延再生では、記憶の保持(近時記憶)と再生の能力が必要となり、これは海馬の機能によるものです。
アルツハイマー型認知症では初期から点数うが低くなりやすいことが特徴です。
遅延再生(近時記憶)の設問では、マニュアル通りに実施すると、近時記憶がどの程度障害されているのかがわかりにくいので、①自由回答で答える(3点)②単語のカテゴリのヒントを与える(2点)③3つの単語から選択してもらう(1点)とすることで、近時記憶能力を把握しやすくなります。
物品呼称では、関連する脳機能は側頭葉です。
後頭葉からの視覚刺激がWhatの経路を通り、側頭葉で記憶情報と統合されることで、それが何であるかを認識します。
この設問では、指示されたことの聴覚的理解と、それを運動変換する能力が必要になり、それを担っているのは弓状束になります。
この設問では、書字提示されたことの視覚的理解と、それを運動変換する能力が必要になり、それを担っているのは上縦束になります。
書字は、角回、頭頂葉、前頭葉、側頭葉が関与します。
図形模写では、視覚性の空間情報処理が関与し、頭頂葉の機能が必要になります。
図形模写課題は、アルツハイマー型認知症では初期から障害されやすいことが特徴です。
MMSEの模写課題に加えて、立方体透視図を検査に加えることも推奨されています。
なお、立方体透視図は遂行機能も反映されていると言われており、
①手本を見る
②手本の認知(思考・判断:12本の線がどのように繋がっているか、立体になっているかなど)
③どのように描くかを考える(計画のプログラミング)
④図形を描く(モニタリング(どこを書いているか、線が正しく描けているかなど)しながら実行)
①の工程では、選択的注意(前頭葉)を働かせながら手本を見ます(後頭葉)。
②の工程では、立体認知(頭頂葉)、立方体の概念とその記憶の引き出し(側頭葉)、関係性の統合(前頭葉)。
③の工程では、遂行機能(前頭葉)
④の工程では、遂行機能(前頭葉)
がそれぞれ関与すると思われます。
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