手術後は状態が落ち着き次第できる限り離床を促し、身体・精神機能の賦活を図っていくことが求められます。今回、術後の臥床行動と離床拒否の解消の仕方のヒントを示していきたいと思います。
目次
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手術後では離床がなかなか進みにくい方をしばしば経験することがあります。
手術後に離床拒否が生じる原因としては以下のようなことが挙げられます。
・疼痛が強いため
・認知機能低下により離床の意義が理解できないため
・離床しないことを注意されることでさらに離床意欲が低くなる
手術が行われると組織が侵害されるため、炎症反応が生じます。
ちなみに、急性期の疼痛は術後〜2週間(3週間との意見もある)ぐらいの間までだとされています。
炎症が存在すると、侵害受容器(自由神経終末)の閾値は低くなります。そのため運動が引き金となって、疼痛は生じやすくなります。
運動により疼痛があると逃避収縮が生じます。
それによる筋の持続的な収縮は局所循環を悪化させ、発痛物質が蓄積し発痛を引きおこします。
痛みによる反射的な筋収縮は筋紡錘の感度を高めます。
すると、少しの伸張刺激でも筋は収縮し、痛み刺激となり痛みが生じやすい状況を作り出してしまっています。
このような術後疼痛がある場合、離床する際の動作時痛も加わって、どうしても離床に対してネガティブな印象や感情を持ってしまいます。
特に認知症者の場合、ネガティブな感情や情動は残存しやすいため、離床拒否に繋がる状況を作ってしまいます。
認知症などにより認知機能が低下している場合、離床することの意義を理解できないことがあります。
認知機能がクリアな対象者では、離床する意義を説明されるとそれを理解し、疼痛があっても離床が進みやすいと言えます。
認知機能が低下し離床の意義が理解できない場合、セラピストやケアスタッフは対象者に対して離床を促しますが、離床できない場合に注意をすることも時にはあるでしょう。
この時対象者にとって、「注意を受ける」という体験は負の情動体験を伴います。
この負の情動体験が嫌悪刺激となり、さらなる離床拒否につながってしまうことも考えられます。
前途しましたが、注意や叱責などの負の情動体験を受けると、離床に対する動機付けは大きく低下するでしょう。
術後離床拒否について、以下のような負の循環があります。
即時的に創部痛が生じるであろう.臥床時間が長くなれば,腰痛なども生じる.疲労感や息切れを生じる可能性も高い.これらは嫌悪刺激である.
一方,離床によって体が楽に動かせるようになる訳ではない.合併症の予防は重要だが,それについて説明を受けても認知症の対象者では理解できない可能性が高い.
つまり,認知症の対象者にとって早期離床は弱化,消去されやすい行動なのである.
こういった行動を強制されるとムカムカイライラなどの情動反応(レスポンデント行動)が生じる.
離床には,セラピストの顔や声が対提示されているので繰り返せば,レスポンデント条件付けによってセラピストは条件性嫌悪刺激化する.
対象者は,セラピストの顔を見るだけでムカムカするようになる.このような状況下では,触るなほっといてくれなどの攻撃的な言葉を伴う訓練拒否が生じやすくなる山崎 裕司他「認知症に対する応用行動分析学的介入」平成28年度 高知リハビリテーション学院紀要 第18巻
認知症者では、負の情動(不快刺激)は持続しやすいため、注意を繰り返していると、セラピストの存在自体が嫌悪刺激となることがあります。
運動学習理論においてもコーチングにおける負のフィードバックはマイナスにしかならないと言われていますが、術後離床においても同様のことが言えます。
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ここで、離床を促し方と定着のポイントについて解説をしていきます。
前途した、
・疼痛が強いため
・認知機能低下により離床の意義が理解できないため
・離床しないことを注意されることでさらに離床意欲が低くなる
の3つの要因を含めながら考えていきます。
術後すぐで炎症性の疼痛が強い場合、鎮痛剤の服用に合わせた離床を促すことが必要になります。
また離床前にリラクゼーション等を行い、セラピストの離床誘導自体が嫌悪刺激にならないように配慮する必要があるかもしれません。
セラピストは離床を促す際に、離床拒否があればベッドサイドで傾聴をするという行動をよくとります。
そしてベッドサイドで関節可動域運動を行うことも良くあるパターンでしょう。
しかしながら、その行動がさらに離床を促すことを難しくしている可能性もあります。
それはなぜかというと、対象者にとっては臥床していることで話を聞いてもらえたりリラクゼーションを受けられるということが、快刺激となり離床を妨げていることにつながっているかもしれないからです。
そのような側面から考えると、例えば昼食などを理由に強引に離床させている時に、よく話しかけたり話を聞いたり、賞賛を与えたりスタッフの笑顔を見せるなどの刺激を与えることの方が、離床を促しやすくなるかもしれません。
リハビリスタッフは対象者と関われる時間は少ないですから、ケアスタッフ(看護師や介護士)と連携を取り、対象者が座れている時には積極的に話しかけたり賞賛してもらうなどの報酬を与えるようにすることが必要になります。
以前関わった方では、行動療法的に報酬を与えたことがありました。
その報酬は「お菓子を渡す」ということで。
その方はお菓子が大好きで、お菓子を食べれることを匂わすと、離床してくれる方でした。
しかしながらこのような方法は、報酬がないと動いてくれないというように、長期的にみていくと成果につながらないこともありますので、注意しながら対応を見極めていく必要があるでしょう。
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