大腿骨近位部骨折術後では、術後レントゲンから様々な情報を読み解くことが可能です。今回、大腿骨近位部骨折に対する術後画像所見(レントゲン、CT)読影のチェックポイントについてまとめていきたいと思います。
目次
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大腿骨近位部骨折の術後レントゲン写真では、以下の点を注意して評価する必要があります。
・皮質、骨梁
・大腿骨頸体角
・大腿骨前捻角
・インプラントの至適位置
・TAD(Tip Apex Distance)
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calcar(カルカ(Adams弓)):大腿骨頚部の内側下部にある骨の厚くなった部分
大腿骨転子間骨折では、CHSやγ-nailが用いられますが、calcarの連続性が保たれているかを画像上チェックすることが必要になります。
calcar(内側皮質骨)の連続性が保たれているのであれば、術後の荷重時には安定した支持性が得られると予測できます。
calcar(内側皮質骨)に力学的安定性があるか同課により分類したものがEvans分類となっています。
出典:大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)を一部改変
Evanns分類において、Type1(主骨折線が小転子近傍から外側遠位に向かう骨折)のgroup1(転位なし、内側皮質の粉砕がない)とgroup2(転位あり、内側皮質の粉砕が軽度で整復可能)なものが、calcarの連続性が保たれていると判断できます(赤四角で囲まれた部分)。
連続性がどの程度保たれているかによって術後の荷重時の支持性に影響します。
不安定型は疼痛が大きく、術後のリハビリに難渋する人が多い傾向にあります。
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大腿骨頸体角は、大腿骨頚部と大腿骨骨幹部とのなす角度です。
大腿骨頸体角は通常120-130°とされています。
大腿骨頸体角が120-130°より大きい場合を外反股
大腿骨頸体角が120-130°より小さい場合を内反股
と言います。
大腿骨頸体角の増加により剪断力は減少します。
寛骨臼との適合性は低下し、関節面の単位面積当たりにかかる圧力は増大します。
圧力の増大によって、大腿骨頭や寛骨臼の関節軟骨や骨組織は変形します。
その状態に骨粗鬆症が加わると、大腿骨頭内に大腿骨頸が嵌入して生じる大腿骨頸部骨折の危険性が高まります。
外反股では大腿骨中心から外転筋付着部までの距離が短くなります。
すると大腿骨頭への荷重量が増加し、大きな外転筋力が必要となります。
内反股では荷重方向への剪断力が増加します。
そのため大腿骨頸部骨折の危険性が高まります。
立位荷重線とは、「大腿骨中心から足関節中心を結ぶ下肢機能軸(膝関節部で大腿骨顆部,脛骨顆部中央を通過)」のことを言います。
外反股があると膝関節で外側に変位(X脚)、内反股があると内側(O脚)に変位します。
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大腿骨前捻角とは、大腿骨体部と大腿骨頚部の捻じれの角度を表したものです。
正常では大腿骨前捻角は10-15度だとされています。
出典:大腿骨頸部前捻角が股関節屈曲角度に及ぼす影響
出典:THAにおけるCTを用いた大腿骨頚部前捻の評価および機種選択
大腿骨前捻角の増大すると、立位時に股関節内旋位になることが多いと言われています。
逆に前稔角が減少すると、股関節外旋位になると言えます。
大腿骨前捻角が過前捻になると、股関節前方組織(内旋筋、前方関節包、腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯)は短縮すると言われています。
また後方組織(外旋筋、後方関節包、坐骨大腿靭帯)は伸長すると言われています。.
大腿骨前捻角が後捻すると、股関節前方組織(内旋筋、前方関節包、腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯)は伸長され、後方組織(外旋筋、後方関節包、坐骨大腿靭帯)は短縮するとされています。
大腿骨前捻角が大きい場合、外旋筋群の停止部である大転子が後方に位置することで股関節外旋筋群の筋張力の低下が生じる可能性があります。
また立位時に股関節内旋位にすることは、外旋筋の張力を発生し易くしている可能性があります。
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エックス線単純写真正面像および側面像で骨頭の頂点からラグスクリュー先端までの距離を測定する.
ラグスクリュー径を基準にエックス線写真の拡大率を補正して,真の距離を算出する.
正面像と側面像から求めた距離の合計をTADとする.
TAD値が20以下になるとラグスクリューのcut outの危険性が低くなる.
ラグスクリューの真の直径をDtrueとすると,TAD値は以下の計算式で求められる.
大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
cut outとは、インプラントの先端が骨頭を貫いている状態のことをいいます。
出典:大腿骨転子部骨折術後にcut outを生じた5症例
リハビリテーションによる過負荷によりcut outが生じる場合があるため注意深く経過を追っていく必要があります。