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上腕骨骨幹部ですが、まず、「上腕骨」は肩関節と肘関節の間をつなぐ骨です。
その骨幹部は上腕骨の中央部を指します。
上腕骨骨幹部骨折は、直達外力(事故や転倒)により生じます。
これは、打撃や衝突などの外力により加わった力が直接患部に作用した結果です。
また、腕相撲や投球動作の繰り返しによる骨折の場合もあります。
腕相撲の捻転力による骨折では、骨折の様式が「螺旋骨折」になります。
骨折部位ですが、骨幹部の中央1/3の場所で好発するとされています。
上腕骨骨幹部骨折は比較的治りやすい(骨癒合が得られやすい)とされており、これは、骨幹部が軟部組織に富み血管が豊富なためです。
上腕骨骨幹部骨折が生じると、以下のような症状が出現する事が考えられます。
•骨折部における疼痛
•骨折部の変形
•骨折部の不安定性
•開放性骨折(骨折部の骨が皮膚をつきやぶる)
•血管損傷(指の冷たさ、色調が悪いなどが観察される)
•橈骨神経麻痺(まれに正中・尺骨神経麻痺もある)
•偽関節(受傷後6ヶ月以上たっても治癒しない骨折)
上腕骨骨幹部骨折では、保存療法が第一選択になります。
これは、開放骨折が少ないことや、軟部組織が多く血行が良好に保たれやすいことが関係しています。
ハンギングキャスト法
ハンギングキャスト法は、整復位保持不可や不安定型骨折の場合適応になりません。
骨幹部中央1/3より遠位の骨折に適応とされています。
ハンギンキャスト法は、ギプスの重さで骨折部を整復位に保持する方法です。
これは、骨折部周囲筋を緊張させ、骨折部を固定させる働きがあります。
固定肢位は、肘関節屈曲90°、前腕回内外中間位、上腕中央から手部までギプス固定し、前腕中央より吊り紐を装着して首から吊り下げます。
肩関節亜脱臼や、骨折部の離開に注意する必要があります。
一つ難点としては、座位で寝る必要があることです。
機能的装具
機能的装具は、骨折部周囲を硬性装具で固定するものです。
骨折部周囲の筋を圧迫させた状態で筋収縮を促すと、転位した骨に圧迫力が生じます(筋容積増大に伴う)。
これにより、骨折部を安定させる効果があります。
さらに、筋収縮により血流が改善され、骨癒合促進の効果も期待できます。
骨折後数週はハンギングキャスト等による固定が行われ、その後機能的装具に変更されるパターンが多く取られます。
三角巾
三角巾は軽度な骨折に適応(亀裂骨折など)されます。
三角巾のみでは固定力が得られにくいとされています。
そのため、バストバンドを使用し、体幹に固定する事で安定性を得られるようにします。
三角筋の巻き方に注意で、肩と肘の位置関係に注意しながら固定する事が大切です。
その他
U字型副子や創外固定があります。
上腕骨骨幹部骨折における保存療法のリハビリテーションでは、骨折部に転位が生じないように注意しながら進める必要があります。
骨癒合の程度に応じて、リハビリ内容を決定していく事が大切なので、Drの指示を元に運動方向や負荷量を決定していきます。
まずは浮腫の増大や、運動しないことによる関節拘縮が生じないようにすることが重要です。
浮腫の増大は関節拘縮に繋がりやすいため、アイシングや患部外の可動域の確保をまずは行います。
Stooping exは、自分の腕の重みにより軟部組織を伸張させるトレーニングです。
立位や腹臥位で行われます。
上腕骨骨幹部骨折におけるStooping exでは、骨折部の転位がないかを確認しながら行います。
ハンギングキャスト法やU字型副子では骨折部への影響に注意します。
これは、骨折部に外反力や回旋力が生じやすいためです。
上腕に対する肘の位置を一定に保てるようにStooping exを行います。
骨幹部中央1/3や近位部の骨折では、肘関節に対してはアプローチがしやすいと言えます。
まずは等尺性収縮で上腕筋や上腕三頭筋のトレーニングを行います。
上腕筋や上腕三頭筋を把持し、横スライドさせたりつまみ上げることで柔軟性を確保します。
浮腫管理として手指の運動は重要です。
機能的装具では筋収縮を促す事で、転位した骨に圧迫力が生じ、(筋容積増大に伴う)骨折部を安定させる効果があります。
そのため疼痛自制内で肘関節運動を行います(自動or自動介助)。
上腕骨骨幹部遠位部の骨折では、肘関節への影響が大きくなります。
上腕筋や上腕三頭筋に対するアプローチが重要です。
骨折部の安定が得られてきたら(Drに確認)、痛みも考慮しながら上腕筋や上腕三頭筋の等尺性収縮やストレッチを行います。