膝関節術後の痛みに関しては様々な要因がありますが、精神的な不安状態などが慢性的な痛みにつながる可能性もあります。今回、膝関節術後の痛みと精神的フォローについて、まとめていきたいと思います。

膝関節術後の痛みのケア!情動(不安など)の評価とケア!

膝関節術後の痛みの原因

膝関節術後の痛みの原因には様々なものが考えられます。
手術して間もない間は炎症反応もあり、痛みが生じるのは仕方がないことです。
炎症反応に関しては「時間が薬」ということもあり、徐々に炎症が取れてくると、それに関連した痛みは軽減されることが期待できます。

早期に痛みが改善する方もいれば、改善がゆっくりな方もいます。
リハビリテーションを受けた後、退院時でも痛みは残存している可能性が高く、半年、1年とういような長い期間で痛みは軽減していく方が多いように思います。
手術を受けた方の中には(10〜20%程度)、術後も痛みが残存する方もいるようです。

術後、膝の痛みが強くなりやすい傾向としては、
・術前の膝の痛みが強くあった
・術前の膝周囲の筋力低下が強くあった
・術後にこれまで使用していなかった筋肉を使うことで、炎症反応が起きた
・不安(痛み、人間関係、仕事)が強い
などが考えられます。
この中で、不安というのは精神的側面ですが、不安は安静時痛(動いていない、夜間寝るとき)に関連があるとされています。
リハビリテーションでは、これらの要因を評価しながら、痛みの原因を取り除く必要があります。

 

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精神的側面(情動)と痛み

痛みに対する不安や恐怖には、脳の扁桃体という部位が関与していると言われています。
また、関節炎のモデルラットを使用した研究において、扁桃体基底外側の活動の増加と、内側前頭前野の活動が減少したとの報告があります。
内側前頭前野(前帯状回含む)は、意欲や意志決定に関与しており、慢性痛患者ではその部分の萎縮がみられるとされています。
前頭前野、帯状回の萎縮は、意思決定能力や意欲の低下を引き起こす可能性があります。

 

痛みに対してどのような対処をしているか

痛みが強い方は、自分を励ましたり、大丈夫と言い聞かせるというようなことはあまり行いません。
また痛みが強かったり、その頻度が高いと、うつ状態になることもあります。
痛みに対する対処方法を把握することで、その方の痛みに対する認知面の状態や、痛みと健康状態との関連を考える材料にすることができます。
痛みの認知面に対するアプローチとしては認知行動療法があります。
痛みの対処方法の評価としては、CSQ(Coping Strategy Questionnaire)日本語版があります。
評価の詳細は、以下の記事を参照してください。
痛みの対処方略の尺度:CSQ日本語版の概要と評価方法、結果の解釈

慢性的な痛みと破局的思考の評価

痛みが長く続くことを慢性痛と呼びますが、慢性痛と関係が深いのが破局的思考です。

破局的思考は、痛みの経験をネガティブに捉える考え方です。
慢性疼痛は破局的思考が軽減するに伴って改善するとも言われています。

破局的思考の評価として、Pain Catastrophizing Scale日本語版があります。
この評価を行うことで、破局的思考が頭から離れない(反すう)、実際の痛みより大きな問題としてとらえる(拡大視)、痛みに対して自分でできることができないように感じる (無力感)の程度を知ることができます。
評価を行うことで、対象者にとって上記のどの項目が痛みに影響しているかを知ることができ、またその項目に対してどのようにアプローチすればよいかの材料を得ることができます。
評価方法に関しては以下を参照してください。
Pain Catastrophizing Scale(PCS) 日本語版の概要と使用方法、結果の解釈

痛みと関連した不安や抑うつの評価

先ほど、痛みが抑うつと関連すると述べました。
対象者の心理状態を把握しておくことで、痛みの原因が身体機能的な要因なのか、もしくは不安や抑うつからくるものなのか、どちらの比重が大きいのかを判断する材料にできます。
また抑うつ状態にあれば、アプローチ中のセラピストの態度や言動も支持的なものにしなければなりません。
不安と抑うつの評価として、Hospital Anxiety and Depression Scale日本語版があります。
評価方法は、以下の記事を参照してください。
不安と抑うつの評価:HADS日本語版の概要と評価方法、結果の解釈

 

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自己効力感はどの程度あるか

痛みがあっても動ける、楽しめる、目標が達成できるというような、自己効力感を持ち合わせていることは、対象者が意欲的に行動し、人生を満足して送る上で重要なことです。
痛みがあっても社会的生活を遂行できていると感じてもらえるようにアプローチしていくのもセラピストには求められる役割だと思います。
痛みに対する自己効力感の評価方法として、Pain Self Efficacy Questionnaire日本語版があります。
評価方法は以下を参照してください。
痛みに対する自己効力感の評価:PSEQ日本語版の概要と評価方法、結果の解釈

膝術後の痛みのケアの方法

膝術後とありますが、術前から痛みに関するケアを行えるのが理想的だと思います。
手術前には、手術による痛みの影響や経過などをしっかりと説明することも求められます。
術後には、コメディカルはもう一度痛みに関する教育的指導を行うとともに、対象者が抱いている不安因子を共有しておくことが大切になります。
痛みが生じている場合にはどのような対処方法があるか、対処方法を行ったことでどのような変化があるかを対象者が研究していく姿勢も大切だと思われます。

痛みがあっても活動量が増えていたり、歩行数が増えているなど、具体的な数字を用いることで、自己効力感を高めることができるかもしれません。
自己効力感を高めるために、日記をつけるアプローチがあります。
詳しくは以下の記事を参照してください。
文献レビュー:人工膝関節置換術と自己効力感について