肩関節挙上時の痛みとして、肩峰下インピンジメントが考えられます。今回、なぜ肩峰下インピンジメントが起こるかについて、評価方法を交えながらまとめていきたいと思います。
目次
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肩関節拘縮の評価と運動療法 (運動と医学の出版社の臨床家シリーズ)
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肩を60-100°程度上げた時の痛みの原因としては、肩峰下インピンジメントが考えられます。
肩峰下インピンジメントには、受動要素と能動要素による原因に分けることができます。
受動要素:関節の可動性の問題(関節の可動範囲の中でのスムーズな動きが制限される)
能動要素:腱板の機能低下(筋力低下など)、肩甲胸郭関節の機能低下(筋力低下など)
肩の上げ始めに痛い場合、収縮時痛の原因を考えなければなりません。
詳しくは以下の記事を参照してください。
肩の上げ始めに痛い原因!収縮時痛はなぜ起こるのか?
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肩峰下インピンジメントとは、上腕骨の下方への滑り運動が阻害された結果、大結節が肩峰下を通過できなくなる状態のことを指します。
肩峰下インピンジメントでは、肩峰下にある棘上筋、棘下筋、肩峰下滑液包が挟み込まれることで痛みが生じます。
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受動的要素における肩峰下インピンジメントの原因としては、
・肩峰下滑液包の癒着(肩甲上腕関節の上方軟部組織の拘縮含む)
・後方関節包の拘縮
が考えられます。
能動的要素における肩峰下インピンジメントの原因としては、
・各腱板筋の機能低下(筋力低下、筋出力低下など)
・肩甲胸郭関節の機能低下(筋力低下、筋出力低下など)
が考えられます。
肩峰下滑液包は、腱板の上に存在する組織です。
キャタピラのような動きをすることで、肩峰下滑液包において癒着が生じると、キャタピラの機能が果たせなくなるため、スムーズな関節運動が阻害されます。
肩峰下滑液包の癒着では、肩関節内転時に肩甲骨の下方回旋が確認できます。
肩甲上腕関節の上方軟部組織の拘縮があると、肩挙上時の上腕骨の下方への滑り運動が阻害され、スムーズな関節運動が阻害されます。
肩甲上腕関節の上方軟部組織の拘縮では、肩関節の内転制限が確認できます。
後方関節包の拘縮があると、肩挙上時の上腕骨頭の後方滑りが阻害され、スムーズな関節運動が阻害されます。
関節包については以下の記事も参照してください
肩関節の評価とリハビリ!可動域制限に関わる部位の推測、見分け方!
各腱板筋は、肩挙上時に上腕骨頭を関節窩に対して求心位に保つ役割があります。
腱板筋の筋力低下があると、肩挙上時に三角筋の収縮力を大きくしようとするため、インピンジメントが起こることが考えられます。
また、痛みがなくても筋力低下がある場合、インピンジメントにつながる可能性があります。
そのため、どの部位の腱板の機能低下がみられるかを把握することが重要になります。
肩甲胸郭関節の機能低下があると、肩峰下インピンジメントが生じることがあります。
上肢挙上時の肩甲骨の上方回旋が不足すると、相対的に、第2肩関節スペースが狭くなる。
運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略
筋力だけではなく、筋の伸張性(筋緊張)も考慮する必要があります。
前鋸筋は肩甲骨の内転、菱形筋が肩甲骨の外転、肩甲挙筋が肩甲骨の下制、小胸筋が肩甲骨の後傾を制限することで、肩甲骨の生理的な運動が制限されることになる。
肩関節拘縮の評価と運動療法
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インピンジメントテストには、代表的な評価がいくつかあります。
ニアーテスト:肩関節内旋位で挙上
ホーキンステスト:肩挙上位から内旋
これらのテストでは、インピンジメントが起こるかどうかを確認する評価であり、その原因が確認できる訳ではありません。
ニアーテストでは、内旋位で挙上するので、主に棘下筋上部、棘上筋後部の問題があるかもしれない、ホーキンステストでは、上腕骨内旋位での挙上なので小結節が衝突するため、肩甲下筋上部の問題があるかもしれないなどと、背景には何が問題かを探りながらテストを行うことに意義があります。
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圧痛を確認することにより、痛みの原因が肩峰下滑液包の痛みなのか、腱板の痛みなのかを推測していきます。
そのためには、上腕骨を回旋させて評価を行います。
中間位では肩峰の真下に大結節が位置しています。そのため、この時に圧痛があれば棘上筋腱or肩峰下滑液包の痛みが考えられます。
内旋位では、肩峰の真下には棘上筋腱はありません。あるのは、肩峰下滑液包or棘上筋後部、棘下筋腱です。
このようなことから、中間位、内旋位(外旋位含む)とも圧痛が確認されれば、肩峰下滑液包の痛みの可能性が高くなります。
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上腕骨内外旋中間位にて肩峰の下に指を添えます。
肩甲骨面にて肩関節挙上に対して抵抗をかけます。
肩峰下滑液包の癒着が存在すると棘上筋が収縮してもそれが腱に伝わりません。
なお、三角筋が収縮しているときは指をかなり押してくる感覚が得られます。
棘上筋の収縮の場合は「ピン」と張る感覚が得られます。
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肩甲上腕関節上方軟部組織の評価として、肩関節内転制限の確認を行います。
肩関節内転、伸展位に他動的に誘導します。その際、上腕骨を内旋、外旋位にすることで、どの筋に問題があるかを推測していく必要があります。
上腕骨外旋位で内転:棘上筋前部、肩甲下筋上部、上腕二頭筋長頭腱
上腕骨内旋位で内転:棘上筋後部、棘下筋上部
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肩甲骨固定にて3rd(肩関節90°屈曲位)内旋の可動域制限を確認します。
文献により記載は異なりますが、内旋50°が基準値となっていたり、健側と比較して20°以上の制限がある場合に陽性とすることがあるようです。
後方関節包の伸張性を評価する時には、棘下筋下部繊維の筋緊張が亢進していないかを確認する必要があります。
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以下の肢位で等尺性収縮を行います。
①上腕骨内外旋中間位で肩甲骨面挙上45°、90°に対して抵抗をかける
②上腕骨内旋位で肩甲骨面挙上45°、90°に対して抵抗をかける
③上腕骨外旋位で肩甲骨面挙上45°、90°に対して抵抗をかける
収縮時痛での腱板機能テストについては以下の記事を参照してください。
肩の動作時痛(挙げ始め:0-60°)における腱板機能テストと結果の解釈
90°挙上位において抵抗に抗せない場合、肩甲骨をサポート(肩甲骨下方回旋をとめる)することで、腱板筋の問題なのか、肩甲骨周囲筋の問題なのかを判断していきます。
肩甲骨のサポートでも下がる→腱板の問題
肩甲骨のサポートで止まる(抵抗に抗せる)→肩甲骨周囲筋の問題
となります。
中間位で痛い:全腱板、棘上筋、棘下筋上部
内旋位で痛い:棘下筋上部、棘上筋後部
外旋位で痛い:肩甲下筋上部、上腕二頭筋長頭、棘上筋前部
に問題がある可能性が高くなります。
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以上のような評価から、受動要素としての肩峰下インピンジメントが、
・肩峰下滑液包の癒着
・肩甲上腕関節の上方軟部組織の拘縮
・後方関節包の拘縮
のうちのどの要素が原因になっているかを把握していきます。
また、能動要素としての肩峰下インピンジメントが、
・各腱板機能の低下
・肩甲胸郭関節機能の低下
のうちどの要素が原因になっているかを把握していきます。
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評価により腱板筋の弱化が判断できれば、その筋に対してトレーニングを行うことになります。
その際、筋力低下が認められる肢位においてトレーニングを行うことが重要になります。
肩甲骨面上45°、肩甲骨面上90°、上腕骨中間位、内旋位、外旋位の組み合わせになります。
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