先日、大阪府で開かれた認知症対応力向上研修に参加してきました。関西医科大学の嶽北先生のお話の中で、認知症の周辺症状に対する薬物療法について学んだことをまとめていきたいと思います。
目次
スポンサードサーチ
スポンサードサーチ
行動・心理症状(BPSD)は認知症に伴い出現する行動や心理的な症状をさします。
心理的なものとして、不安、多幸、妄想、幻覚、抑うつなどがあります。また行動面では興奮、夜間行動、易怒性、異常行動、脱抑制などがあります。
行動・心理症状(BPSD)があると、対象者本人のQOLの低下や、介護者の負担を大きくしてしまうことにつながります。
認知症の中核障害があると、時間や場所(見当識)がわからくなったり、簡単な計算ができなくなるなど認知機能の低下がみられます。そのような機能低下が影響して、日常生活上が不自由になったり、不安感が大きくなってくると、行動・心理症状(BPSD)が出現することがあります。
また本人の置かれている環境や介護者の対応など、様々な要因が絡み合い行動・心理症状(BPSD)を生じさせる可能性があります。
認知症初期では、「自分は何か病気があるかもしれない」という意識から、不安感の増大や抑うつ症状が現れることがあります。また誤りや失敗を訂正されると怒り出すこともあります。
軽度認知症での行動・心理症状(BPSD)でよく観察されることとしては、
活動性・意欲低下
興味関心の低下
抑うつ(気分の落ち込み)
不安感
異常に怒る
抵抗や攻めるような態度
などがあります。
中等度認知症での行動・心理症状(BPSD)でよく観察されることとしては、
質問を繰り返えす、後追い、突然の叫び声など
徘徊、睡眠障害、幻覚(幻聴、幻視)
脱抑制や攻撃などの不適切行動
などがあります。
重度認知症での行動・心理症状(BPSD)でよく観察されることとしては、
蹴る、たたくなど介護者への攻撃行動
叫ぶ、うめくなどの非言語的な行動
自宅内を一人で歩けない
などがあります。
スポンサードサーチ
認知症の周辺症状に対しては、以下のような薬物が処方されますが、以下にその概要と注意点を述べていきます。
第2世代の抗精神病薬(リスペリドン、クエチアピンなど)が中心に使用されます。
主に徘徊や暴力、不穏、焦燥、妄想などの軽減を目的に使用されます。
レビー小体型認知症では、症状悪化の原因になることもあります。
リスパダールの服用は、認知症の対象者の余命を下げるというような報告があるようです。
リスパダールが使用されなければいけない状況というのは、症状が重症な場合であり、そのために早く亡くなられるという視点もあり、また、服用することによる副作用で早くになくなってしまうという視点もあります。
そのため良し悪しの判断はしにくいとのことです。
抑うつ症状として希死念慮が強かったり、他者に危害を加えたり、自分に危害を加えたりするような場合、抗精神病薬や気分安定薬、漢方薬などが使用されることはあります。
しかしながら、服用する場合には、体の状態変化やリスクを病棟内で確認していくことが大切になります。
安易に投与されるものではないという認識を持っておくことが必要になります。
また、短期間の使用にとどめておく事が大切になります。
SSRIなどが中心となり、主に抑うつなどに使用されます。
多くの研究結果から、効果は不確実だとされています。
少量の使用で睡眠の安定化に使用する場合があります。
抗てんかん薬やリチウムなどが中心になります。
主に暴力や不穏、焦燥などの軽減に使用されます。
抑肝散や抑肝散加陳皮半夏などが中心になります。
主に不安や焦燥の軽減に使用されます。
スポレキサントやラメルテオンが中心になります。
通常の不安や不眠に対して用いられる広義のベンゾジアゼピン受容体作動薬はあまり使用されません。
ベンゾジアゼピン系(レンドルミン、サイレースなど)は、せん妄を発現するリスクが非常に高く、また筋弛緩作用により筋肉が緩まることで転倒につながる可能性が高くなるため注意が必要です。
マニュアル的に不眠時にはレンドルミンなどと処方内容が決まっているような場合には注意が必要になります。
一方で、非べンゾジアゼピン系(マイスリー、ルネスタなど)については処方しても大丈夫と言われた事が一時期あったようですが、作用機序としてはべンゾジアゼピン受容体に作用して効果が発現するものなので、非ベンゾジアゼピン系の薬物も上記のようなリスクはあると言えます。
現時点で推奨できる薬物としては、ベルソムラ、ロゼレムなどの薬剤や抗うつ薬(トラゾドン、テトラミド)を少量服用する場合があります。
それでも改善が難しい場合には、短時間で作用する抗精神病薬(クエチアピン、セロクエル)などを少量する事が現実的には一番良いという事がわかっているとの事です。