対象者の退院の条件として、トイレに行けることが挙がることがありますが、動作レベルの問題の他に、尿意がなく尿失禁してしまうことも問題に挙げられることがあります。今回、尿意再獲得のための排尿誘導の方法とポイントについてまとめて行きたいと思います。
目次
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尿失禁のガイドライン上に置いて、排尿誘導にはどのような種類があるのかを見て行きます。
時間排尿誘導法は、あらかじめ誘導する時間を決めておいて、そのスケジュールを元にトイレ誘導する方法です。
時間排尿誘導法は、排尿が自立していない対象者に有効だとされています。
大まかな誘導スケジュールとしては2-4時間ごとに誘導することが多いです。
時間排尿誘導法は、スタッフが主体になってトイレ誘導をするので、対象者の動機付けが必要ないこと、また認知症などによって認知機能の低下がみられる対象者にも有効な方法となっています。
パターン排尿誘導法は、対象者それぞれの排尿パターン(排尿習慣)を把握し、そのパターンに合わせて排尿誘導をしていく方法です。
パターン誘導法では、それがある程度決まっている対象者に有効な方法になります。
病院や施設においては、スタッフ側のマンパワーの問題などもあり、必ずそのパターンに合わせられるかというと疑問点が残りますが、自宅などで介護者がそばについていられる環境ではパターン排尿誘導法が有効になることが多いです。
排尿習慣を再学習するような場合、対象になるのは尿意は曖昧ながらもある程度認識できるような方になります。
リハビリテーションの場面でも行うことがありますが、
失禁の有無を確かめたり、排尿の意思(排尿したいか)を確認します。次に、その意思の有無に関わらずにトイレ誘導します。
この時、できていたこと(意思表示できたこと)に対しては賞賛し、外的報酬を与え、排尿習慣の再獲得を促して行きます。
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排尿障害は脳卒中患者の30-70%に合併すると言われています。
また脳卒中患者においては排尿障害や尿失禁を有するものでは梗塞巣が大きく重症度も高いとも言われています。
尿便意のない、または曖昧な方では排泄もオムツ対応になることも多く、排泄動作の獲得に目を向けられないこともしばしば見受けられます。
「尿意のない脳卒中患者の尿意再獲得に対する排尿誘導法の効果の後方視的研究」という短報において、回復期リハビリテーション病棟においての排尿誘導法についての記述がありましたので、それを元に排尿誘導法の有効性について考えて行きたいと思います。
排尿誘導の方法としては、
排尿誘導法は,個々の患者の排尿記録を行い,失禁パターンに基づきトイレに座らせ,排尿を促す,という方法で行い,この誘導法が比較的安全に行える患者を選択し,昼間帯のみ施行した.
失禁パターンが明確でない患者については,一定時間間隔での排尿誘導を行った.
また,リハビリテーション(以下,リハ)の時間を考慮し,その前後に排尿誘導を行い,2〜3時間に1回程度の排尿誘導を施行した.高野 真他「尿意のない脳卒中患者の尿意再獲得に対する排尿誘導法の効果の後方視的研究」Jpn J Rehabil Med 2016;53:947-951
というようなものです。
結果としては、短報を参照してもらえると良いのですが、排尿誘導法を施行した15例のうち9例(60%)に尿意が出現し,排尿誘導法を施行しなかった26例では,7例(26.9%)にしか尿意が出現しなかったとのことです。
そして、尿意の出現した群ではFIM利得が有意に大きいとのことでした(これは排尿誘導法の有無に関わらない)。
ここからは私見ですが、尿意獲得のためには、排尿誘導法(時間排尿誘導、パターン排尿誘導)は早期から行われるべきだと思います。
しかしながら、脳卒中対象者では身体機能の問題により便座への移乗や前座での座位が安定しにくい方も中にはいると思います。
そのような場合にも対応できるように、トイレにも差し込めるようなシャワーキャリーがあると、早期から尿意獲得に向けたトレーニングができるのではないかと思います。