脳卒中などの脳血管障害では排尿障害が見られることがあり、その存在はADL自立の妨げになったり、対象者のQOLを低下させることが知られています。今回、脳卒中における排尿障害の症状とメカニズムについてまとめていきたいと思います。
脳卒中における排尿障害の症状とメカニズム!
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脳卒中ではどのような排尿障害が見られるか
脳卒中や脳出血などの脳血管障害が生じると、様々な排尿障害が生じる可能性があります。
蓄尿症状としては、
・夜間頻尿
・切迫性尿失禁
・尿意切迫感
・昼間頻尿
・遺尿症
などがあります。
また排出症状としては、
・排尿困難感
・残尿
などがあります。
脳血管障害においては、排尿障害の中でも、過活動膀胱が多くに見られるようです。
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過活動膀胱とは何か
過活動膀胱とは、下記のような症候群をさします。
過活動膀胱とは、急に起こる我慢出来ないような強い尿意(尿意切迫感)を主症状とする症候群です。
正常な膀胱は脳からの指令によってコントロールされていますが、過活動膀胱では何らかの原因により膀胱がコントロールを失ったような状態となり、少量の尿で膀胱が過剰に収縮してしまい、我慢出来ないような強い尿意切迫感が急激に起ります。
そのため、トイレが近くなったり(頻尿)、就寝後何回もトイレに起きたり(夜間頻尿)、強い尿意によりトイレにたどりつくまでに我慢が出来ずに尿が漏れる(切迫性尿失禁)などの症状を伴います。
亀田メディカルセンター ウロギネ・女性排尿機能センター ホームページより
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蓄尿症状の各種類について
夜間頻尿
夜間、排尿のために1回以上起きる必要がある状態です。
夜間多尿(1日の尿量のうち33%以上が寝ている間に産生される状態)、膀胱容量の低下、睡眠障害などが原因とされています。
尿意切迫感、切迫性尿失禁
急に起こり、それを感じてしまうと排尿を我慢する余裕がないような膀胱の知覚を尿意切迫感と言います。
切迫性尿失禁は、尿意切迫感を感じると同時、またはその直後に不随意に尿が漏れてしまうタイプの尿失禁になります。
昼間頻尿
日中に、一般的に8回以上排尿回数がある状態です。
膀胱容量低下、残尿による有効膀胱容量減少、多尿(1日の尿量が2800ml以上または40ml/kg以上)などが原因だとされています。
遺尿症
尿が不随意に、または無意識に排出される状態です。
随意的に尿意をコントロールできない状態とも言えます。
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脳卒中と排尿障害における病変とメカニズム
排尿障害と脳病変
脳卒中などの脳血管障害において、排尿障害に関係があると思われるのは、
・前頭葉
・大脳基底核(特に被殻)
・視床
・脳幹(橋や延髄)
だとされています。
蓄尿と排尿のメカニズムについて
蓄尿
①
膀胱に尿が溜まると、膀胱壁内の伸展受容器が刺激される
↓
求心性刺激が骨盤神経を介し、仙髄オヌフ核、胸腰髄交感神経中枢に伝わる
↓
交感神経中枢の興奮が下腹神経を介し、膀胱を弛緩、内尿道括約筋を収縮させる
②
仙髄オヌフ核の興奮が陰部神経を介し外尿道括約筋を収縮させる
③
膀胱の求心性神経からの刺激が橋排尿中枢、大脳皮質へ伝達される
↓
大脳(前頭葉)が尿意を感じる、橋排尿中枢を意図的に抑制する(我慢できるように)
排尿
排尿を行う意思により橋排尿中枢の抑制を解除する
↓
遠心性刺激が仙髄副交感神経中枢を興奮させる、交感神経中枢と仙髄オヌフ核を抑制する
↓
内尿道括約筋・外尿道括約筋の弛緩、膀胱排尿筋の収縮が起こる
↓
排尿する
脳卒中で排尿障害が起こるメカニズム
前途したように、蓄尿においては前頭葉が橋排尿中枢を意図的に抑制していましたが、脳卒中により前頭葉が損傷を受けると、その抑制が困難になり(脱抑制)、蓄尿障害が生じます。
また、橋排尿中枢に対する前頭葉からの促進性の刺激が亢進し過ぎてしまうことも一つの要因だと考えられています。
前頭葉病変では、帯状回を含む部位の損傷で排尿障害が生じることが多いとされています。
橋排尿中枢(橋被蓋の青斑核近傍に存在)の病変では排出障害が生じることが考えられています。
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