尿意の回復が期待できる方へのリハビリテーションとして、排尿自覚刺激療法があります。今回、排尿自覚刺激療法の概要と適応、実施方法についてまとめていきたいと思います。
目次
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排尿自覚刺激療法(PV:Prompted Voiding)は排尿誘導の方法の一つです。
他の排尿誘導の方法としては、
・習慣化排尿誘導(HT:Habit training)
・定時排尿誘導(TV:Timed Voiding)
があります。
なお、習慣化排尿誘導は、対象者の排尿パターンにあわせてトイレに誘導する方法で、定時排尿誘導は一定の時間を設定し、トイレに誘導する方法です。
本題の排尿自覚刺激療法(PV:Prompted Voiding)ですが、これはある程度尿意の自覚が持てる可能性のある対象者に尿意確認やトイレ誘導を行い、成功すれば賞賛(強化)をする行動療法になります。
排尿自覚刺激療法では、排尿をしたいということを他者に教える能力を身につけてもらうことを目的に行われるリハビリテーションになります。
排尿自覚刺激療法では、1-2時間ごとにパッド内の尿漏れの状態を確認するのですが、羞恥心や自尊心の問題、もしくはマンパワーの問題により毎回の確認ができない問題などが指摘されていますが、パッド確認を行わないでも、尿意の有無を確認するという方法を行っている研究も存在します(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jagn/15/1/15_KJ00007062639/_pdf/-char/ja)。
排尿自覚刺激療法の適応ですが、前途しましたがある程度膀胱充満感や尿意の自覚が持てる可能性のある対象者となっており、この中には軽度の認知症が含まれても良いとなっています。
さらに、トイレ介助の訴えが行え、トイレ誘導に応じることができることが条件となります。
また、排尿援助には膀胱機能評価が重要視されており、その評価内容としては1回排尿量、失禁量、残尿量などがあります。
機能性尿失禁の中には膀胱機能が低下している場合があり,膀胱機能が低下している場合は排尿誘導を実施しても尿失禁は改善されない.
その適切な援助方法は,対象者にあったおむつを選択し快適な日常生活が送れるように援助することであり,機能が維持されている対象者には,トイレで排尿できるように援助することである.
その適切な援助内容を決定するために膀胱機能のアセスメントが重要である.田中久美子他「尿失禁を有する在宅要介護高齢者の看護―尿失禁を有する高齢者の実態と看護についての文献的考察から―」川崎医療福祉学会誌 Vol. 21 No. 2 2012 310−319
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排尿自覚刺激療法の実施前には、対象者の状態評価と準備を行う必要があります。
まずは、排尿自覚刺激療法が適応かどうかの評価を行います。
・尿失禁のタイプ
・排尿日誌の記録
などから、対象者の排尿パターンや尿失禁率、尿意の有無などを評価します。
1.パッドまたはクロスが尿でぬれているか、またはドライ(dry)の状態か尋ねる
2. 本人の了解を得て、尿パッドを実際に確認する
3.パッドの状態が本人の説明通りドライであれば、漏れることなく、正しく報告してくれたことについて、対象者を賞賛する
4.パッドが尿でぬれていれば、(羞恥心や自尊心に配慮しながら)本人にフィードバックする。対象者には、排尿したいときは介助者に伝えるように説明する
5.現在の尿意知覚の有無の確認をする
6.尿意があればトイレに誘導し、排尿を終了した段階で、トイレで排尿したことを賞賛する
7.尿意がない場合は、少し時間をおき2回まで同じ働きかけを実施する
8.次回の排尿予定時間を説明し、それまではできるだけ排尿を我慢するように説明する
9.時間の排尿予定を確認し、排尿量、尿漏れの具体的な状況について日誌に記載する佐藤和佳子「長期ケア施設における集団的アプローチの有効性に関するエビデンス」 EB NURSING 2002:2(2):192-8.
これらのプロトコールが基本になり、介入期を6-8週間とします。
日中の8-10時間を介入時間とし、その間で排尿パターンに応じて上記を実施していきます。
その後の経過観察期では、獲得した尿意、または排尿の意思を自ら伝えられることを目的として、基本的には尿意の訴えを待ち、誘導時間になっても訴えがない場合には誘導を行なうようにしていきます。