肩上方の痛みがある場合、肩甲上神経が原因のひとつとして考えられます。肩甲上神経は伸張ストレスがかかることで問題が起こることが多く、肩甲胸郭関節の安定性低下が根本にあることが多いです。今回、肩上方の痛みと肩甲上神経の評価について、文献を参考にまとめていきたいと思います。
目次
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肩上方には力学的ストレスがかかりますが、上肢を下垂しているときには伸張ストレスがかかります。
肩関節内の転運動では、肩甲上腕関節の上腕骨頭は下方に転がり、上方に滑る。そのため、上腕骨頭の上方への滑りが生じずに、下方に吊り下がる場合には、肩甲上腕関節の上方に伸張ストレスが加わる。
運動器障害の「なぜ?」がわかる評価戦略 P10
肩甲上神経は頸部から肩甲骨上部にかけて走行しており、ストレスがかかりやすくなっています。
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肩甲上神経は腕神経叢上神経幹から枝分かれし、肩甲骨の切痕部で肩甲骨の前方から後方に回り込みます。
そこから棘上窩の外に側に向けて走行し、肩甲棘の外側で走行を内側に変えます。走行が変わる部分を棘窩切痕と呼び、肩甲切痕から棘窩切痕間にて棘上筋への筋枝を出し、棘窩切痕を通過してから棘下筋への筋枝を出します。
肩甲上神経は肩甲骨に固定されていると考えることができ、肩関節の運動に伴う肩甲骨の運動(位置変化)により、肩甲上神経は伸張されることがあります。
肩関節が水平内転すると、肩甲骨は外転する。そうすると、肩甲上神経が棘窩切痕で伸張される。
また、肩甲切痕部には、肩甲横靭帯が存在するため、肩甲骨が下制すると肩甲上神経に牽引力が作用する。運動器障害の「なぜ?」がわかる評価戦略 P16
肩甲上神経は、肩甲切痕通過後、肩甲上腕関節の部分の知覚を支配する枝を出します。肩甲上神経に上記のようなストレス(牽引)が過剰に加わると、肩上方の関連痛として痛みを生じさせることが考えられます。
肩甲骨下方回旋していると、棘上筋や棘下筋上部の距離が短くなり、腱板の張力が低下します。すると上腕骨頭の下方への牽引力が強まり、肩甲上腕関節上部に牽引ストレスが強くかかります。このようなことも肩甲上神経に負担をかける原因となります。
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肩甲上神経に対するテストは存在していないため、肩甲骨の位置を徒手的に変化させながら、疼痛が再現できるかどうかを確認していきます(例:肩甲骨外転や肩甲骨下制)。
肩甲上神経が痛みの原因となっている場合、対象者の訴えとしては「だいたいこの辺りが痛い」というようなこともあります。
肩上方の痛みのうち、肩甲上神経が原因と考えるのは、他の軟部組織の損傷がないと考えてからでもよいとされています。