脳卒中片麻痺者の排泄動作において、ズボン操作に伴って立位保持をする際に姿勢が崩れてしまう方を経験することも多いと思います。今回、脳卒中片麻痺者と排泄動作における、ズボン上げ下ろしをするための姿勢筋緊張コントロールに必要なことについてまとめて行きたいと思います。
目次
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今回は、脳卒中片麻痺者のズボン操作時に姿勢が崩れてしまう原因を、筋緊張の側面から捉えていくので、まずは筋緊張についての復讐をして行きます。
筋緊張の定義として、以下のようなことが言われています。
- 神経生理学的に神経支配されている筋に持続的に生じている筋の一定の緊張状態
- 骨格筋は何も活動していないときにも絶えず不随意的にわずかな緊張をしており、このような筋の持続的な弱い筋収縮
- 安静時、関節を他動的に動かして筋を伸張する際に生じる抵抗感
Wikipedia
ここでポイントとなるのは、筋緊張は不随意にコントロールされるというということでしょう。
不随意、すなわち無意識的に筋緊張がコントロールされているということです。
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姿勢筋緊張には、以下のような概念や意味が含まれています。
・起立するために必要な持続的な筋張力
・様々な姿勢・運動を維持・継続するために必要な筋張力
・内側運動制御系を構成する「促通系」や「抑制系」のバランスで決定される
ここで、内側運動制御系について触れておきます。
運動制御には、外側運動制御系と内側運動制御系があります。
外側運動制御系である錐体路には、
・皮質脊髄路
・赤核脊髄路
があり、これらは一次運動野が起始となっています。
主に遠位筋の中でも屈筋を支配しています。
内側運動制御系である錐体外路(錐体路以外の伝導路)には、
・橋網様体路
・延髄網様体路
・前庭脊髄路
・視蓋脊髄路
があり、これらは前運動野 、補足運動野が起始となっています。
橋網様体路:抗重力筋の促通、下肢伸展活動の促通と維持
延髄網様体路:抗重力活動からの解放
前庭脊髄路:下肢伸筋の運動ニューロンを興奮
視蓋脊髄路:頭と眼球を動かす定位反応
内側運動制御系の特徴としては、
・同側の前索を下行
・両側性支配
・体幹筋、近位の伸筋群を制御
・起立、歩行に関与
・姿勢反射、平衡、筋緊張に関与
挙げられます。
我々が何か運動をしたり動作を行う場合には、バランスを保ちながら行うことが重要になりますが、その要素のひとつに姿勢筋緊張があり、それは内側運動制御系によりコントロールされています。
筋緊張には促通と抑制の要素があり、それらによって姿勢コントロールが協調的に行われています。
屈筋と伸筋がある中で、ある時には屈筋を抑制して伸筋を促通し、またある時には屈筋を促通して伸筋を抑制するというようなコントロールがなされているというわけです。
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排泄動作におけるズボンの上げ下ろしを考える際に、どのような要素が必要かを考えて行きます。
・立位で膝を30度程度屈曲したり、伸展させる動作におけるバランス保持能力or筋力
・腰背部に手を回すための関節可動域
・ズボンを把持し、上げ下ろしするためのピンチ力or握力
・ズボンが上がりきっているかを認識するための感覚
などが挙げられます。
ここで、「立位で膝を30度程度屈曲したり、伸展させる動作におけるバランス保持能力or筋力」という所を詳しく見て行きます。
脳卒中片麻痺者においてよく観察される現象としては、リハビリの際の立位保持(軽度スクワット肢位なども含む)においてはその肢位を保持できるのですが、いざ排泄動作でズボン操作を行うと立位が崩れてしまうパターンがあります。
これは、どのようなことが原因になっているのでしょうか。
その原因と思われる一つに、筋緊張があります。
リハビリ場面では、「○○さん!膝を軽く曲げた状態でキープしてくださいね!そう、膝をその位置で!」などと言いながら、対象者に意識的に立位保持をコントロールさせていることが多いと思います。
でも、よく考えてください。
排泄動作のズボン操作となると、立位を保持するだけでなく、立位を保持しながらズボンを操作するという、2つの課題に同時に取り組むことが必要になります。
このような二重課題と言えるような状況では、どちらも意識的にコントロールするだけの余裕はなかなか生まれません。
ここで、前途した筋緊張(姿勢筋緊張)について考える必要があります。
筋緊張は、不随意(無意識的)にコントロールされるものでした。
リハビリ場面でよく行っていることは、皮質レベルで意識的にα運動ニューロンの活動を高めて姿勢保持をしていることになります。
しかし、排泄動作のズボン操作に必要な要素としては、無意識的に立位保持をコントロールしながら(姿勢筋緊張を姿勢の変化に伴って適切な状態に、無意識邸に変化させながら)ズボンの上げ下ろしを行うことと言えます。
このことから、排泄動作のズボンの上げ下ろしについては、随意的な筋活動のコントロールを行えるかという問題点と、いかに不随意的に姿勢変化に合わせた適切な筋緊張コントロールができるかという問題点について考える必要があるということです。
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最後は繰り返しの復習になりますが、脳卒中片麻痺者において、排泄動作のズボン上げ下ろしができない方を評価する際のポイントを挙げて行きます。
・意識的に、ズボンの上げ下ろしに必要な姿勢を取れるか、または保持できるか
・ズボンを操作する時に限って姿勢が崩れやすくならないか
・筋緊張に影響が出るような脳部位の損傷がないか
などを確認していくことが重要になります。
姿勢筋緊張の問題があれば、γ運動ニューロンの活動を高めるためのアプローチを行って行きます。