軽度認知障害(MCI)や認知症者では、記憶障害がによりエピソードを覚えていないことをしばしば経験します。この記憶障害に対しては、ヒントを与えるなどの方法が提唱されていますが、時期によって対応方法を変える必要があるのをご存知でしょうか。今回、認知症や認知機能低下と記憶障害において、時期による対応方法の違いについてまとめていきたいと思います。
目次
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まずは、加齢に伴う物忘れと、認知症に伴う物忘れの違いをまとめていきます。
加齢に伴うもの忘れ | 認知症に伴うもの忘れ |
体験の一部分を忘れる | 全体を忘れる |
記憶障害のみがみられる | 記憶障害に加えて
判断や実行機能障害がある |
物忘れを自覚している | 物忘れの自覚に乏しい |
探し物を努力して見つけようとする | 探し物を誰かが盗ったと言うことがある |
見当識障害がみられない | 見当識障害がみられる |
取り繕いはみられない | しばしば取り繕いがみられる |
日常生活に支障はない | 日常生活に支障をきたす |
きわめて徐々にしか進行しない | 進行性である |
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加齢に伴う物忘れの特徴は、「思い出せない」ということです。
これは、引き出しの中にはエピソードなどが収納されてるが、いざそれを取り出そうとするときに取り出せない状態と言えます。
我々でも、例えばラジオから曲が流れていて、「何の曲だったかな?」と思い出せないことがあると思います。
その時の思い出すきっかけを考えてみると、例えば歌っているアーティストの名前を聞いたり、主題歌として使われていたドラマを聞いたりすると、案外思い出せることが多いと思います。
このように、加齢に伴う物忘れでは、手がかりを与えることで引き出しに収納されている記憶を取り出すことが可能になるということが特徴になります。
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我々は体験したエピソードを記憶することができますが、これは「海馬」という脳の部位がきちんと機能しているからです。
海馬とは、大脳側頭葉の内側部で側脳室下角部に位置し、エピソード記憶等の健在性記憶の形成に不可欠な皮質部位となります。
つまり、体験したエピソードの記憶を保持することができないということになります。
アルツハイマー型認知症の方では、その場の会話としては可能(ワーキングメモリの機能は保たれやすい)ですが、間に違う話を入れると、先ほど話していた内容が忘却されてしまうということがよくあります(これは海馬の機能が必要)。
覚えられないのですから、加齢に伴う認知症のように、手がかりを与えるような対応はどうでしょうか?
ヒントになるどころか、逆に混乱してしまうでしょう。
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これまでの話から、加齢に伴う物忘れと、認知症に伴う物忘れでは、対応方法としては別のことを考えていかなければならないことがわかりました。
ここからは、”食事を食べてことを忘れてしまっている”という問題について、時期別の対応方法を考えていきたいと思います。
「食事を食べたことを忘れる」問題があると、対象者の欲求不満から不穏や攻撃的行動に繋がったり、被害妄想などからケアの拒否につながることなども考えられることから、しっかりと対応することが必要になります。
認知症が初期または軽度認知障害(MCI)の場合では、海馬機能の低下はあるものの、ヒントを与えることでエピソードを引き出しから取り出すことも可能なことがありますから、ヒントを与えることは間違いではありません。
食事を済ませたことを言葉で伝えたり、メモを残しておく、食べ終わったお皿を見せるなどの対応で問題が解決できることも多いと思われます。
認知症が進み、エピソードや体験が「覚えられない」ようになってくると、同じような対応をすることは適切ではありません。
それは前途しましたが、ヒントを与えると逆に混乱してしまうからです。
記憶機能が低下している場合、
あらかじめ半分の量を出しておき、対象者の訴えがあればもう半分を出す
というような対応により解決できる場合があります。
このような対応は、ケアをする側が折れて、対象者の状態に寄り添っていくような治療的なケアの方法になります。
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