住宅改修を成功させるためには、対象者の身体機能レベルと動作能力に応じた適切な手すりの設置位置を決定する必要があります。今回、住宅改修とトイレ動作における適切な手すり設置位置の考え方についてまとめていきたいと思います。
目次
市川洌・他:手すりを上手に使う.福祉用具シリーズVol.14:財団法人テクノエイド協会手すりにもたれて下衣の上げ下げを行う動作の効果
トイレ動作において、主に手すりが必要な工程としては、
①起立・着座
②移乗
③下衣操作
などが挙げられます。
住宅改修では、これらの工程に対する最適な手すり設置位置を検討・決定することが求められます。
起立・着座に手すりを用いるメリットは、体幹前傾による重心の前方移動や膝・股関節による重心の上下移動を、手すり使用で上肢の力を借りれることです。
一般的に、起立における縦手すりは身体より前方に設置する方が良いと言われています。
その理由としては、前方縦手すりにより体幹前傾が行いやすくなり足部に重心が乗りやすくなるためです。
一方で縦手すりが前方に位置しすぎていると、下肢にかかる負担を軽減できないため、近すぎず遠すぎずの最適距離を検討することが重要になります。
着座においては、縦手すりが前方に位置しすぎている場合、下肢にかかる負担を軽減できないことがあります。
トイレ動作での起立・着座動作における手すり位置の決定方法について考えていきます。
縦手すりの設置では、便座座位(自然に姿勢をまっすぐにして座っている状態)をとり、前方に真っ直ぐ腕を伸ばした時の指先の先端がおおよその設置基準となります。
その位置を基準として起立・着座を行ってもらい、安全に、効率よく、何回行っても安定して行える距離を検討します。
また、縦手すりを把持する位置(上下)も検討し、同様に安全性・効率性・安定性の視点から把持位置を検討します。
トイレ動作において横手すりは座位保持の補助にする場合に用います。
横手すりを設定する場合は、便座座位(自然に姿勢をまっすぐにして座っている状態)をとり、上肢下垂位で肘関節90°屈曲位での中指の高さがおおおよその設置基準となります。
横手すりはトイレの室内移動にも用いられることがありますが、その場合、移動に使用する横手すりの高さと、座位保持や立ち上がりに使用する横手すりの高さの両方に使用できる高さを検討する事が必要になります。
立位での下衣操作時に縦手すりにもたれながら行うことがあります。
手放しで立位保持できない片麻痺者などにおいて、壁離れ寸法の長いL字手すりの縦部分に、麻痺側もしくは非麻痺側で体幹を手すりにもたれることで非麻痺側上肢の自由度が高まり、下衣の上げ下げ動作がしやすくなる可能性があります。
壁離れ寸法についてですが、通常の手すり設置であれば、壁から手すり把持位置までの距離は最小限に取られることが多くなります。
壁離れ寸法の長い手すりの設置とは、図のような手すりの設置位置になります。
壁離れ寸法が長く設定されていると、壁との間にスペースを取りやすいことから、手すりに身体接触させる場合に安定したバランスを保ちやすくなります。
住宅改修により手すりを設置するか、もしくは介護保険の福祉用具レンタルによりベストポジションバーを用いるかは、対象者の心身機能や活動能力、置かれている環境により変わります。
例えば、対象者の住宅が賃貸の場合、住宅改修は難しい場合も多く、その時はベストポジションバーなどを使用します。
また、退院までに住宅改修が間に合わない場合の一時的な措置として福祉用具を用いる場合もあります。
住宅改修により手すりを設置する最大のメリットは、対象者の心身機能と活動能力に応じた位置に、最大限能力を発揮できる場所に手すりを設置できることになります。