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骨盤骨折の原因としては、
・高エネルギー外傷
・脆弱性骨盤骨折
の2つがあります。
骨粗鬆症があると、転倒など軽い外傷でも骨折する可能性があります。
立位からの転倒や、それ以下の外力(歩行等)でも生じることもあります。
臀部痛や腰痛を主訴として来院し発覚するケースがあります。
X線検査では診断できず、CTやMRIで確認できる不顕性骨折の場合もあるため注意が必要です。
痛みが続く場合は、不顕性骨折の可能性があります。
脆弱性骨盤骨折の分類には、「Rommens分類」が用いられます。
Type1、2は転移がない状態です。
Type3、4は転移がある状態です。
脆弱性骨盤骨折のRommens分類Type I は保存治療が行われます。
Type IIは保存治療で開始することが基本になります。
ただし、疼痛が改善せず歩行訓練が進まない、転位が増悪する等の傾向がある場合、手術療法となる事があります。
保存療法ではベッド上安静期間(2~4週)が必要なため、早期離床が行えないというデメリットがあります。
この辺りは、骨折の程度と医師の判断によるものとなります。
安静期間を終えると、車椅子移動を開始していくことになります。
安静期間と免荷の目安については、骨折の程度と医師の判断により異なります。
眞鍋らの報告(眞鍋 亘 , 雅樂十一 , 他 : 当院における脆弱性骨盤骨折の診断と治療の検討 . 骨折 39:846 850,2017 )によると、以下のようになっています。
・全例に保存的治療を実施
・前方骨盤輪単独骨折の場合:
入院時より1週間ベッド上安静、2週間免荷
・後方骨盤輪単独骨折および前方骨盤輪骨折合併の場合:
2~4週間ベッド上安静、4~6週間免荷
・ベッド上安静期間中、疼痛制限内で積極的に座位とした
・疼痛と全身状態に応じ可及的にリハを十分に行った結果、Type III
以上の症例 10 例で保存療法にて改善と報告
ベッド上安静期間においては、【ポジショニング】が重要になります。
骨折部の疼痛により過剰収縮や体動が少なくなり、二次的な疼痛(筋萎縮や短縮による可動域制限による)が生じ、廃用につながる可能性があります。
ベッド上安静では疼痛回避に努めることがポイントです。
そのために安楽姿勢の評価を行います。
具体的には、膝下のクッション調整やギャッジアップ角度等を調整します。
疼痛回避姿勢による可動域制限の危険性も考える必要があります。
ベッド上安静では、股・膝関節屈曲、足関節底屈しやすくなります。
そのため、股・膝関節伸展、足関節背屈の可動域制限が出やすいと言えます。
拘縮予防のためにも、股・膝関節屈筋、足関節底屈筋のストレッチをしっかりと行うことが必要です。
骨折では、疼痛による筋肉の過剰収縮が生じやすくなります。
これは、股関節周囲筋、背筋、肩甲骨周囲筋に影響を及ぼしやすくなります。
また、ベッド上安静に伴い、骨盤・胸腰椎可動性の低下します。
さらに、生活場面での上肢挙上を用いる動作がないことも影響します。
筋収縮が得られないと収縮性が低下し短縮しやすくもなります。
実際には僧帽筋や広背筋の伸長性低下が目立つようになります。
上肢挙上制限は、更衣動作等の制限にも関わりやすいため、自主トレ指導として臥位での上肢挙上を指導する事も大切です。
ベッド上での関節可動域練習では以下のことに気をつけながら行います。
まず、短縮しやすい筋肉の伸長性を維持させる事が重要となります。
具体的には、腸腰筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋、脊柱起立筋、僧帽筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋
などがあります。
関節可動域運動は痛みに配慮して行うこともポイントです。
•他動運動や自動運動が、骨折部に影響を与えないかは事前に確認しておく(骨折部の離開に繋がらないように)ことが必要です。
離開方向働く場合は筋活動を抑制し、圧縮方向に働く場合は筋収縮を促していきます。
痛みが強ければ等張性の関節運動を行い、筋のポンプ作用を利用していきます。
上肢活動は両側とも行うことが重要です。
対象者にとって、退院後に必要な日常生活課題につなげる意識も必要になります。
上肢運動(リーチ)は、以下の要素にアプローチすることができます。
・股関節や骨盤、胸腰椎運動を促す
・前方への重心移動を経験できる
これらのことは、立ち上がりや立位バランスの改善につながることが期待できます。
伸長性低下にはストレッチ、収縮性低下には収縮を促すようにします。
痛みへの配慮は引き続き行うことが大切です。
座位での上肢課題に困難さがあれば、側臥位での課題も考慮することが必要です。