人口膝関節置換術(TKA)の術後では、リハビリテーションに加えて無理のない範囲で自主的にトレーニングを行うことも大切です。今回、TKA術後の自主トレーニングとして、膝関節周辺の筋膜を緩める方法を紹介していきます。

TKA術後の自主トレ!関節可動域や痛み改善のために膝周辺の筋膜を緩める!!

なぜ筋膜を緩めるのか

人工膝関節置換術(TKA)では、軟骨の磨り減った関節部は真新しいものに取り替えますが、周辺の筋肉に関してはそのままです。
手術前は患者様の膝の状態はほとんどの方が悪いと思います。
関節可動域が制限され、痛みもあり、そのため膝を大きく動かすことなく日常生活を送っていたと思われます。
そのような状態では、膝周辺の筋肉は硬くなってしまうことは目に見えています。

ところで、筋膜という言葉は聞いたことがあるでしょうか。

筋膜(きんまく)とは、脊椎動物の筋肉や内臓を包む膜(例えば腎臓と副腎を包むゲロタ筋膜)の総称である。

筋膜は全身の組織を包み込んでいるだけでなく、組織間の結合も担う結合組織である。筋膜という単語一つでまとめるのは困難であり、解剖学的に詳細な名称付けが必要だが、専門家の間でも分類方法が定まっていないのが現状である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AD%8B%E8%86%9C

このような説明がありますが、少しわかりづらいかなと思います。

鶏肉を調理した経験のある方ならわかるかもしれませんが、鶏肉の皮と肉の間には、薄い膜があるのをご存知でしょうか。
あれが筋膜です。
あの筋膜があるために、皮膚と筋肉は滑走性があり柔軟性が確保されるのです。
その筋膜が硬くなれば、組織が動いた時に滑りがない状態となり、無理やり動かそうとすれば痛みを生じてしまいます。

膝が悪い状態の方は、恐らく膝周囲の筋膜の滑りが悪くなっているはずなのです。
そのため、筋膜を緩めることで関節の可動性を改善しやすくしたり、痛みを軽減させるようにしていくことが必要になります。
このあたりのことは、理学療法士の蒲田和芳先生がセミナー等で言われていることです。
DVD等も出ているので、詳しくはそちらを参照してください。


 

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どこの筋膜をほぐせば良いのか

筋膜といっても、膝周囲には様々な筋肉があり、どの部分を緩めていけばよいか迷うこともあると思います。
膝が悪い方では、だいたい同じような場所の筋膜が硬くなっている傾向になります。
そのため、自主トレとしてはその部分を中心に緩めていくことができればよいと思います。

主に緩めておきたい筋膜は以下のようになります。
・腸脛靭帯
・内側広筋
・大内転筋
・外側広筋
・ハムストリングス
・鵞足

これらの場所を知っておけば、患者さんは自分で膝周囲の筋膜を緩めることができます。

 

どのように筋膜を緩めていくのか

筋膜を緩めるには、以下のように行います。
①一方の手で皮膚と筋肉の間をつめむようにします。
②もう一方の手で筋肉の走行に従って皮膚と筋肉の間をつまむようにします。
③つまんだ指を筋肉に対して垂直に動かします。

図でみるとこのような感じになります。

結構皮膚が引っ張れているように見えると思います。
膝などの疾患がある方においては、この皮膚がかなり引っ張りにくくなっていることが多くあります。

これを行うと、つまんだ所はかなり痛みが生じます。
しかし、筋膜が緩んでいくと痛みは軽減していきます。
はじめは最高の痛みが10とすると、7とか8とかの痛みになるかもしれません。うまくほぐしていけると、痛みは半分や1/3程度に変化していくはずです。
この状態を目指していきます。

筋膜ほぐし①腸脛靭帯

腸脛靭帯は太ももの外側にあります。
図で示している箇所です。

この部分を、膝周囲から股関節周囲まで緩めていきます。

筋膜ほぐし②内側広筋

内側広筋は、膝蓋骨(膝のお皿の骨)の内側上の部分に付着しています。
図で示している箇所です。

この部分を、膝周囲から股関節周囲まで緩めていきます。

 

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筋膜ほぐし③大内転筋

大内転筋は、太ももの内側の部分です。
図で示している箇所です。

この部分を膝周囲から股関節周囲まで緩めていきます。

筋膜ほぐし④外側広筋

外側広筋は、膝蓋骨(膝のお皿の骨)の外側上の部分に付着しています。
図で示している箇所です。

この部分を、膝周囲から股関節周囲まで緩めていきます。

筋膜ほぐし⑤ハムストリングス

ハムストリングスは大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋から構成されています。
太ももの裏は、椅子に座っていると圧迫を受けやすい部分であり、筋膜が硬くなりがちです。
ハムストリングスは膝にも作用のある筋肉なので、その筋膜を緩めることはとても重要です。
太ももの裏の皮膚と筋膜の間をつまむと、膝周囲はつまみやすく、お尻に向けて徐々につまみにくくなっていくと思います。
つまみにくいということは筋膜が硬いということなので、その部分を中心に緩めていきます。

筋膜ほぐし⑤鵞足

鵞足は、膝の屈筋腱が集まっているところです。
そのため、ここの皮膚と筋膜の滑りが悪いと膝の運動制限が起こりやすくなります。
場所は下図の通りです。

この付近を緩めていきます。

改めて、、、筋膜ほぐしはとても重要

経験上、HTO(高位脛骨骨切り術)の方で、可動域があっても正座が行いにくい方が、筋膜をゆるめることにより正座ができるようになるなどの効果は体感しています。
もちろんTKA術後の方でも同様で、痛みの軽減や関節可動域の改善には筋膜がゆるまっていることは非常に重要だと思います。
自主トレとして除痛や関節可動域練習が行えれば、在宅復帰も早期に行えることにつながるかもしれません。
痛みはありますが、患者様にしっかりと説明し、意義をわかってもらった上で指導することが必要になります。