認知症予防を行うなら、科学的根拠のある、エビデンスの高いものを取り入れることが必要です。今回、エビデンスに基づいた認知症予防としての運動トレーニングと脳トレの方法についてまとめていきたいと思います。

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目次

認知症予防とエビデンス!運動トレーニングと脳トレ、コグニサイズの方法!

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引用・参考文献

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軽度認知障害(MCI)のタイプと運動による予防のメカニズム

軽度認知障害(MCI)のタイプ

軽度認知障害(MCI)では、認知症の診断基準は満たさないが、本人・家族から認知機能低下の訴えがあるが日常生活上は大きな問題はない状態です。

この状態に、検査での記憶障害の有無、他の認知機能(言語、視空間認知、注意、実行機能など)の障害の有無により4つのタイプに分類されます。

具体的には記憶に問題があるか、障害領域が単一か多重領域かによって4つに分かれます。

島田らの調査では、要介護認定を持たない65歳以上の高齢者の19%がMCIと判定されたとの報告があります。

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MCIからの回復

MCIからの回復について、

健忘型MCIの単一領域の問題であれば、2年後に認知障害がない状態に回復する率は44%であるが、健忘型MCIの多重領域に問題を持っていると10.9%しか回復しないと報告した。

非健忘型MCIでも同様に単一領域の問題では31.0%が回復したのに対し、多重領域の問題では5.0%の対象者しか正常の認知機能に戻る者はいなかった。

運動による脳の制御 認知症予防のための運動 P13

とあります。

高齢者の認知機能低下のパターンは3つに分かれ、

ひとつにはMCIからの回復がなく認知症に移行する早期発症型、

2つにはMCIから正常に回復、もしくは長期間MCIを保持するが認知症に移行する遅延発症型、

3つにはMCIから正常に回復もしくは長期間MCIを保持して認知症を発症しない非発症型があります。

このことから、認知症予防では早期発症型から遅延・非発症型へ移行していくことが重要になります。

運動による認知症予防

運動による認知症予防のメカニズムには、運動器系、神経系、循環器系の3つの要因があります。

運動器系では、身体機能の向上や転倒予防に伴う頭部外傷の予防がアルツハイマー型認知症に対して有効となる可能性が考えられています。

神経系では、脳由来神経栄養因子(BDNF)やインスリン様成長因子-1(IGF-1)の脳内発現が運動により向上し、海馬領域の可塑的変化につながることが報告されています。

BDNFは神経細胞の成長を調節する脳細胞の増加に不可欠なものと考えられており、これによる認知機能向上のメカニズムとしては、

神経伝達物質の放出調整を行うsynapsinⅠの活動が、BDNFによって惹起されることにより、神経処理速度が向上することが考えられている。

BDNFによる記憶機能向上の機序の1つとしては、神経細胞ニューロン間の恒久的持続を確立するタンパク質を、転写・翻訳するのに必要な因子であるcAMP応答配列結合タンパクがBDNFによって活性化され、その結果長期記憶機能が向上するとされている。

運動による脳の制御 認知症予防のための運動 P16

とあります。

海馬は高齢期の認知症発症との関連があります。

海馬には神経幹細胞があり、そこからアストロサイト細胞に分化しますが、アストロサイト細胞から作られるWnt3は神経幹細胞から神経細胞への分化を促し、神経幹細胞のβカテニンが安定化されます。

安定化されたβカテニンは核内に移行し、他の転写因子TCF、LEFと複合体を形成し、この複合体が神経幹細胞から神経細胞への分化を左右する制御配列を認識することが明らかにされている。

運動による脳の制御 認知症予防のための運動 P16

アストロサイト細胞は加齢や疾病、ストレスによりWnt3の産生量を減少させることがわかっています。

Wnt3は老化した脳内においても運動により産生を高め、結果的に海馬での神経新生を促進させます。
他の要因としては下記のものがあります。

運動により新生した神経細胞内のレトロトランスポゾンのクロマチン制御の状態が、アストロサイト細胞が産生するWnt3の量に依存し、運動がゲノム応答に影響を及ぼして海馬における高齢期の萎縮防止に有効となる可能性が示されている。

疎水性アミノ酸残基のアミノ末端側でペプチド配合を切断する膜貫通型のメタロエンドペプチダーゼであるネプリライシンの働きである。

ネプリライシンは、アミロイドβ分解酵素であり、この活性が下がると脳内アミロイドβのレベルが上昇することが知られている。

ネプリライシンの脳内活性が、身体活動度と密接な関係を有しており、ADの予防に日常身体活動の向上が寄与する可能性が示唆されている。

アセチルコリンは、学習時の重要な神経伝達物質であるが、加齢とともに海馬における放出が減少する。これは海馬におけるアセチルコリンレベルを上昇させ、これが神経新生を促す可能性が示されている。

運動による脳の制御 認知症予防のための運動 P16-17

循環器系では、運動による代謝の亢進、身体組成の適正化、高血圧予防、脂質代謝の改善、インスリン抵抗性の改善、炎症マーカーレベルの低下、抗酸化作用、毛細血管増加、脳血流量の増加、脳内酸化ヘモグロビンの向上、脳の虚血耐性上昇などの効果がみられます。

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運動の組み合わせが大切

島田らによる研究では、従来の有酸素運動や筋力トレーニングのみでは認知機能向上は難しかったが、これらを組み合わせ、さらに記憶や計算などを行う二重課題(コグ二サイズ)を行うことで、全般的認知機能の保持や記憶の改善が確認できたとしています。

 

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認知症予防と有酸素運動

有酸素運動とは呼吸によって常に酸素を取り込みながら行う持続的運動です。

歩行やジョギング、ステップ台を使った運動などが代表格とされます。

有酸素運動は最大酸素摂取最に注目した有酸素的代謝にその由来があります。

人が運動を実施する際のエネルギー源は体内に蓄えられたグリコーゲンや脂肪である.

運動時にはこれらが動員され分解されてエネルギーを放出する.

グリコーゲンは複雑なプロセスを経て乳酸になり,さらに分解されて二酸化炭素と水になる.

乳酸になるまでは酸素を必要としない無酸素過程であり,ここで生じるエネルギーが無酸素エネルギーである.

これに対して,TCAサイクルとよばれる乳酸が二酸化炭素と水になる過程は酸素の助けを必要とする有酸素過程である.

運動に際して酸素が十分に供給されていれば,グリコーゲンは完全に二酸化炭素と水まで分解される.

生じた二酸化炭素と水は体外に排出され体内に余分なものは蓄積されない.

つまり十分な酸素供給の下で行われる運動時には,老廃物が蓄積されることはないので運動は長時間持続できる .

運動による脳の制御 P121

有酸素運動と無酸素運動の個人差

同じ運動でも個人によって有酸素になるか無酸素になるかは異なります。

その要因として個人ごとに異なる最大酸素摂取量があります。

最大酸素摂取量に最も強く関与するのは心臓で、最大拍出量が大きいほど最大酸素摂取量は大きくなり、有酸素運動が最大酸素摂取量を高める効果を有しています。

最大酸素摂取量が同じ者同士でも、有酸素運動と無酸素運動の境界は同じというわけではなく、そこには無酸素作業聞値が関与しています。

様々な強度で運動した時の血中乳酸濃度を測定したとする.

ふつう乳酸濃度はある強度の運動まではほぼ一定だが,ある値を超えると急に増加しはじめる.

この急に乳酸が増加しはじめる点が無酸素作業閾値である.

無酸素作業閾値以下の運動は有酸素運動であり,これを超えると運動は無酸素運動になる.

運動による脳の制御 P122

無酸素作業閾値に関わるのは筋肉の性質で、有酸素能に優れる赤筋線織と無酸素能力に勝る白筋線維があります。

赤筋線維の多い人は無酸素作業閾値が高く、白筋線維の多い人はそれが低くなります。

最大心拍出量が大きいことや無酸素作業闘値が高いと、高強度運動でも有酸素連動となります。

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運動強度の算出

運動指導の現場では、運動強度の算出に心拍数を用いています(個人的には心拍計を用いていますが)。

運動時の心拍数が最大心拍数の何%であるかを示す方法と、予備心拍数(安静時心拍数と最大心拍数の差(heart rate reserved))を示す方法があります。

最大心拍数は一般的に「220−年齢」とされていますが、高齢者では「207−(年齢×0.7)」とする場合もあります。

運動強度(%)=(運動時心拍数−安静時心拍数)/(最大心拍数−安静時心拍数)×100(%)となります(カルボーネンの式)。

高齢者の場合、目標心拍数を大まかな表を用いるほうが理解しやすい場合もあります。

運動強度(50%)年齢(歳)
657075808590
安静時心拍数

(拍/分)

60111109107106104102
70116114112111109107
80121119117116114112

 

運動強度(60%)年齢(歳)
657075808590
安静時心拍数

(拍/分)

60121119117115113110
70125123121119117114
80129127125123121118

 

運動強度(70%)年齢(歳)
657075808590
安静時心拍数

(拍/分)

60131129126124121119
70134132129127124122
80137135132130127125

有酸素運動による認知機能回復のメカニズム

動物実験によると、神経炎症の減少、血管の新生、神経内分泌反応などが示唆されています。

またアルツハイマー型認知症(AD)予防の観点からは、

発症の原因と考えられているアミロイドβの蓄積を抑制する効果があるとされているネプリライシン(Iwata et al., 2001)の脳内活性が,身体活動と密接な関係を有しており,ADの予防に身体活動の向上が寄与する可能性が示唆されている(Lazarov et al., 2005).

また近年では運動を行うことにより活性化される脳由来神経栄養因子(brain derived neurotrophic factor: BDNF)が着目されており,認知機能の向上に寄与すると報告されている.とくに BDNFの効果は記憶に重要な脳の海馬領域において観察され,可塑的変化をもたらすことが報告されている(Rasmassen et al., 2009: Pen ceo et al., 2001).

近年運動の実施と脳容量増加,およびBDNFとの関係が報告され,1年間の有酸素運動の実施による海馬容量の増加が報告された(Erickson et al., 2015).またBDNF以外にも運動による血管新生や連動に伴うコリン作動性活性化による海馬の神経幹細胞活性などが明らかとされており,連動による認知機能向上のメカニズムが明白になりつつある.

運動による脳の制御 P123

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有酸素運動の効果のエビデンス

Smithら (2010)が行った、有酸素運動が高齢者の認知機能に与える影響についてのメタアナリシス(29編の論文、総対象者数 2, 049名)の報告では、注意機能(g= 0.158, 95% CI 0.055 – 0.260, p=0.003)と遂行機能(g= 0.123, 95%CI0.021- 0.225, p= 0.018)と記憶(g= 0.128 95% CI 0.015 – 0.241, p = 0.026)に対して中等度の効果があることを示しています。

メタアナリシスの中では有酸素運動単独よりも有酸素運動と筋力トレーニングを合わせた方法が注意機能や処理速度、ワーキングメモリに対して効果があるとしています。

記憶に関してはMCIを有する者に対し有酸素運動を行った場合に効果があったとしています。

実践法:スロージョギング

スロージョギングは、その名の通りスローペースでジョギングを行う方法です。

スロージョギンングと認知機能改善の関係では、

スロージョギングには、脳の判断力を向上させて決断力をつけたり、もの忘れを防ぐ効果もあります。

アメリカのある実験では、軽いジョギングを続けた高齢者のグループには、判断や記憶にかかわる脳の前頭前野の体積が大きくなる傾向が見られました。

日本の研究でも、スロージョギング中に前頭前野の活動が活発になることがわかっています。

科学のワザで確実にやせる。 P53

とあります。
スロージョギングの方法としては、

①背筋を伸ばす
背筋を伸ばすことで足が上がりやすくなります。

②少し前傾姿勢
体を少し前に傾けると、足が前に出やすくなり疲れにくくなります。

③足は軽く地面全体を押す
足を蹴り上げると速筋を使うため疲れやすくなります。足の裏全体で地面を押すような感覚で。

④にこやかにおしゃべりしながらペース
息が上がらずニコニコとおしゃべりができるペースをキープします。

⑤息が上がれば途中歩いてもOK
息が上がれば途中に歩き、息が整えば前よりペースを落とし再び走ります。

このような点に注意して行います。
なお、スロージョギングはダイエットやメタボ対策にも有効とされています。

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実践法:スローステップ運動

スローステップ運動は、ステップ台(20cmが基本)の昇降運動をゆっくりと行う方法です。

前途したスロージョギングと同様、持久力を鍛える有酸素運動になります。

消費カロリーは1分間に80回のテンポでウォーキングの1.4倍、1分間に100回のテンポで1.6倍となります。

なおこの運動は筋トレ効果も高く、転倒予防や寝たきり防止に効果的です。

①ステップ台の正面に立ち、右足を台にのせます(左右どちらから行っても構いません)。
②左足を台にのせます。このとき、台の上で足が伸びきるようにすると、膝の屈伸の角度が大きくなり、しっかりと筋肉が働きます。
③右足を下ろします。
④左足を下ろします。最後に下ろした足で、次にまた踏み出していきます(この場合左足)。

注意点

膝が痛い場合、机や椅子の背につかまって行います。

関節疾患や糖尿病、高血圧をお持ちの方は、医師などの専門家に相談のうえ行ってください。

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ステップ台・ランニングシューズ

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