認知症予防を行うなら、科学的根拠のある、エビデンスの高いものを取り入れることが必要です。今回、エビデンスに基づいた認知症予防としての運動トレーニングと脳トレの方法についてまとめていきたいと思います。
目次
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軽度認知障害(MCI)では、認知症の診断基準は満たさないが、本人・家族から認知機能低下の訴えがあるが日常生活上は大きな問題はない状態です。
この状態に、検査での記憶障害の有無、他の認知機能(言語、視空間認知、注意、実行機能など)の障害の有無により4つのタイプに分類されます。
具体的には記憶に問題があるか、障害領域が単一か多重領域かによって4つに分かれます。
島田らの調査では、要介護認定を持たない65歳以上の高齢者の19%がMCIと判定されたとの報告があります。
MCIからの回復について、
健忘型MCIの単一領域の問題であれば、2年後に認知障害がない状態に回復する率は44%であるが、健忘型MCIの多重領域に問題を持っていると10.9%しか回復しないと報告した。
非健忘型MCIでも同様に単一領域の問題では31.0%が回復したのに対し、多重領域の問題では5.0%の対象者しか正常の認知機能に戻る者はいなかった。
運動による脳の制御 認知症予防のための運動 P13
とあります。
高齢者の認知機能低下のパターンは3つに分かれ、
ひとつにはMCIからの回復がなく認知症に移行する早期発症型、
2つにはMCIから正常に回復、もしくは長期間MCIを保持するが認知症に移行する遅延発症型、
3つにはMCIから正常に回復もしくは長期間MCIを保持して認知症を発症しない非発症型があります。
このことから、認知症予防では早期発症型から遅延・非発症型へ移行していくことが重要になります。
運動による認知症予防のメカニズムには、運動器系、神経系、循環器系の3つの要因があります。
運動器系では、身体機能の向上や転倒予防に伴う頭部外傷の予防がアルツハイマー型認知症に対して有効となる可能性が考えられています。
神経系では、脳由来神経栄養因子(BDNF)やインスリン様成長因子-1(IGF-1)の脳内発現が運動により向上し、海馬領域の可塑的変化につながることが報告されています。
BDNFは神経細胞の成長を調節する脳細胞の増加に不可欠なものと考えられており、これによる認知機能向上のメカニズムとしては、
神経伝達物質の放出調整を行うsynapsinⅠの活動が、BDNFによって惹起されることにより、神経処理速度が向上することが考えられている。
BDNFによる記憶機能向上の機序の1つとしては、神経細胞ニューロン間の恒久的持続を確立するタンパク質を、転写・翻訳するのに必要な因子であるcAMP応答配列結合タンパクがBDNFによって活性化され、その結果長期記憶機能が向上するとされている。
運動による脳の制御 認知症予防のための運動 P16
とあります。
海馬は高齢期の認知症発症との関連があります。
海馬には神経幹細胞があり、そこからアストロサイト細胞に分化しますが、アストロサイト細胞から作られるWnt3は神経幹細胞から神経細胞への分化を促し、神経幹細胞のβカテニンが安定化されます。
安定化されたβカテニンは核内に移行し、他の転写因子TCF、LEFと複合体を形成し、この複合体が神経幹細胞から神経細胞への分化を左右する制御配列を認識することが明らかにされている。
運動による脳の制御 認知症予防のための運動 P16
アストロサイト細胞は加齢や疾病、ストレスによりWnt3の産生量を減少させることがわかっています。
Wnt3は老化した脳内においても運動により産生を高め、結果的に海馬での神経新生を促進させます。
他の要因としては下記のものがあります。
運動により新生した神経細胞内のレトロトランスポゾンのクロマチン制御の状態が、アストロサイト細胞が産生するWnt3の量に依存し、運動がゲノム応答に影響を及ぼして海馬における高齢期の萎縮防止に有効となる可能性が示されている。
疎水性アミノ酸残基のアミノ末端側でペプチド配合を切断する膜貫通型のメタロエンドペプチダーゼであるネプリライシンの働きである。
ネプリライシンは、アミロイドβ分解酵素であり、この活性が下がると脳内アミロイドβのレベルが上昇することが知られている。
ネプリライシンの脳内活性が、身体活動度と密接な関係を有しており、ADの予防に日常身体活動の向上が寄与する可能性が示唆されている。
アセチルコリンは、学習時の重要な神経伝達物質であるが、加齢とともに海馬における放出が減少する。これは海馬におけるアセチルコリンレベルを上昇させ、これが神経新生を促す可能性が示されている。
運動による脳の制御 認知症予防のための運動 P16-17
循環器系では、運動による代謝の亢進、身体組成の適正化、高血圧予防、脂質代謝の改善、インスリン抵抗性の改善、炎症マーカーレベルの低下、抗酸化作用、毛細血管増加、脳血流量の増加、脳内酸化ヘモグロビンの向上、脳の虚血耐性上昇などの効果がみられます。
島田らによる研究では、従来の有酸素運動や筋力トレーニングのみでは認知機能向上は難しかったが、これらを組み合わせ、さらに記憶や計算などを行う二重課題(コグ二サイズ)を行うことで、全般的認知機能の保持や記憶の改善が確認できたとしています。
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有酸素運動とは呼吸によって常に酸素を取り込みながら行う持続的運動です。
歩行やジョギング、ステップ台を使った運動などが代表格とされます。
有酸素運動は最大酸素摂取最に注目した有酸素的代謝にその由来があります。
人が運動を実施する際のエネルギー源は体内に蓄えられたグリコーゲンや脂肪である.
運動時にはこれらが動員され分解されてエネルギーを放出する.
グリコーゲンは複雑なプロセスを経て乳酸になり,さらに分解されて二酸化炭素と水になる.
乳酸になるまでは酸素を必要としない無酸素過程であり,ここで生じるエネルギーが無酸素エネルギーである.
これに対して,TCAサイクルとよばれる乳酸が二酸化炭素と水になる過程は酸素の助けを必要とする有酸素過程である.
運動に際して酸素が十分に供給されていれば,グリコーゲンは完全に二酸化炭素と水まで分解される.
生じた二酸化炭素と水は体外に排出され体内に余分なものは蓄積されない.
つまり十分な酸素供給の下で行われる運動時には,老廃物が蓄積されることはないので運動は長時間持続できる .
運動による脳の制御 P121
同じ運動でも個人によって有酸素になるか無酸素になるかは異なります。
その要因として個人ごとに異なる最大酸素摂取量があります。
最大酸素摂取量に最も強く関与するのは心臓で、最大拍出量が大きいほど最大酸素摂取量は大きくなり、有酸素運動が最大酸素摂取量を高める効果を有しています。
最大酸素摂取量が同じ者同士でも、有酸素運動と無酸素運動の境界は同じというわけではなく、そこには無酸素作業聞値が関与しています。
様々な強度で運動した時の血中乳酸濃度を測定したとする.
ふつう乳酸濃度はある強度の運動まではほぼ一定だが,ある値を超えると急に増加しはじめる.
この急に乳酸が増加しはじめる点が無酸素作業閾値である.
無酸素作業閾値以下の運動は有酸素運動であり,これを超えると運動は無酸素運動になる.
運動による脳の制御 P122
無酸素作業閾値に関わるのは筋肉の性質で、有酸素能に優れる赤筋線織と無酸素能力に勝る白筋線維があります。
赤筋線維の多い人は無酸素作業閾値が高く、白筋線維の多い人はそれが低くなります。
最大心拍出量が大きいことや無酸素作業闘値が高いと、高強度運動でも有酸素連動となります。
運動指導の現場では、運動強度の算出に心拍数を用いています(個人的には心拍計を用いていますが)。
運動時の心拍数が最大心拍数の何%であるかを示す方法と、予備心拍数(安静時心拍数と最大心拍数の差(heart rate reserved))を示す方法があります。
最大心拍数は一般的に「220−年齢」とされていますが、高齢者では「207−(年齢×0.7)」とする場合もあります。
運動強度(%)=(運動時心拍数−安静時心拍数)/(最大心拍数−安静時心拍数)×100(%)となります(カルボーネンの式)。
高齢者の場合、目標心拍数を大まかな表を用いるほうが理解しやすい場合もあります。
運動強度(50%) | 年齢(歳) | ||||||
65 | 70 | 75 | 80 | 85 | 90 | ||
安静時心拍数
(拍/分) |
60 | 111 | 109 | 107 | 106 | 104 | 102 |
70 | 116 | 114 | 112 | 111 | 109 | 107 | |
80 | 121 | 119 | 117 | 116 | 114 | 112 |
運動強度(60%) | 年齢(歳) | ||||||
65 | 70 | 75 | 80 | 85 | 90 | ||
安静時心拍数
(拍/分) |
60 | 121 | 119 | 117 | 115 | 113 | 110 |
70 | 125 | 123 | 121 | 119 | 117 | 114 | |
80 | 129 | 127 | 125 | 123 | 121 | 118 |
運動強度(70%) | 年齢(歳) | ||||||
65 | 70 | 75 | 80 | 85 | 90 | ||
安静時心拍数
(拍/分) |
60 | 131 | 129 | 126 | 124 | 121 | 119 |
70 | 134 | 132 | 129 | 127 | 124 | 122 | |
80 | 137 | 135 | 132 | 130 | 127 | 125 |
動物実験によると、神経炎症の減少、血管の新生、神経内分泌反応などが示唆されています。
またアルツハイマー型認知症(AD)予防の観点からは、
発症の原因と考えられているアミロイドβの蓄積を抑制する効果があるとされているネプリライシン(Iwata et al., 2001)の脳内活性が,身体活動と密接な関係を有しており,ADの予防に身体活動の向上が寄与する可能性が示唆されている(Lazarov et al., 2005).
また近年では運動を行うことにより活性化される脳由来神経栄養因子(brain derived neurotrophic factor: BDNF)が着目されており,認知機能の向上に寄与すると報告されている.とくに BDNFの効果は記憶に重要な脳の海馬領域において観察され,可塑的変化をもたらすことが報告されている(Rasmassen et al., 2009: Pen ceo et al., 2001).
近年運動の実施と脳容量増加,およびBDNFとの関係が報告され,1年間の有酸素運動の実施による海馬容量の増加が報告された(Erickson et al., 2015).またBDNF以外にも運動による血管新生や連動に伴うコリン作動性活性化による海馬の神経幹細胞活性などが明らかとされており,連動による認知機能向上のメカニズムが明白になりつつある.
運動による脳の制御 P123
Smithら (2010)が行った、有酸素運動が高齢者の認知機能に与える影響についてのメタアナリシス(29編の論文、総対象者数 2, 049名)の報告では、注意機能(g= 0.158, 95% CI 0.055 – 0.260, p=0.003)と遂行機能(g= 0.123, 95%CI0.021- 0.225, p= 0.018)と記憶(g= 0.128 95% CI 0.015 – 0.241, p = 0.026)に対して中等度の効果があることを示しています。
メタアナリシスの中では有酸素運動単独よりも有酸素運動と筋力トレーニングを合わせた方法が注意機能や処理速度、ワーキングメモリに対して効果があるとしています。
記憶に関してはMCIを有する者に対し有酸素運動を行った場合に効果があったとしています。
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スロージョギングは、その名の通りスローペースでジョギングを行う方法です。
スロージョギンングと認知機能改善の関係では、
スロージョギングには、脳の判断力を向上させて決断力をつけたり、もの忘れを防ぐ効果もあります。
アメリカのある実験では、軽いジョギングを続けた高齢者のグループには、判断や記憶にかかわる脳の前頭前野の体積が大きくなる傾向が見られました。
日本の研究でも、スロージョギング中に前頭前野の活動が活発になることがわかっています。
科学のワザで確実にやせる。 P53
とあります。
スロージョギングの方法としては、
①背筋を伸ばす
背筋を伸ばすことで足が上がりやすくなります。
②少し前傾姿勢
体を少し前に傾けると、足が前に出やすくなり疲れにくくなります。
③足は軽く地面全体を押す
足を蹴り上げると速筋を使うため疲れやすくなります。足の裏全体で地面を押すような感覚で。
④にこやかにおしゃべりしながらペース
息が上がらずニコニコとおしゃべりができるペースをキープします。
⑤息が上がれば途中歩いてもOK
息が上がれば途中に歩き、息が整えば前よりペースを落とし再び走ります。
このような点に注意して行います。
なお、スロージョギングはダイエットやメタボ対策にも有効とされています。
スローステップ運動は、ステップ台(20cmが基本)の昇降運動をゆっくりと行う方法です。
前途したスロージョギングと同様、持久力を鍛える有酸素運動になります。
消費カロリーは1分間に80回のテンポでウォーキングの1.4倍、1分間に100回のテンポで1.6倍となります。
なおこの運動は筋トレ効果も高く、転倒予防や寝たきり防止に効果的です。
①ステップ台の正面に立ち、右足を台にのせます(左右どちらから行っても構いません)。
②左足を台にのせます。このとき、台の上で足が伸びきるようにすると、膝の屈伸の角度が大きくなり、しっかりと筋肉が働きます。
③右足を下ろします。
④左足を下ろします。最後に下ろした足で、次にまた踏み出していきます(この場合左足)。
膝が痛い場合、机や椅子の背につかまって行います。
関節疾患や糖尿病、高血圧をお持ちの方は、医師などの専門家に相談のうえ行ってください。
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筋力が認知機能低下やアルツハイマー型認知症(AD)の発症リスクに関係があるとされています。
地域在住高齢者2,160名を7年間前向きに追跡し,ベースライン時の握力が低い集団では,Mini-Mental State Examination (MMSE)の点数の低下が著しかったと報告している(Alfaro-Acha et al., 2006).
また,Boyleらの報告によると,970名の高齢者を一定期間追跡したところ. 筋力が上位10%に属する集団は. 下位10%の集団よ りも,AD発症のリスクが61%少なかったとしている.
MCI の発症に関しても,筋力が強い集団では,弱い集団に比べ発症のリスクが48%減少している(Boyle et aL, 2009).
運動による脳の制御 P142
筋力と認知機能の関係の根拠については明らかではありませんが、筋力低下は何らかの疾患進行している示しており、その結果認知機能低下に至った可能性があります。
ADによる認知機能低下の前段階で筋力に何らかの影響を及ぼしている可能性もありますが、 詳細は不明とされています。
筋力トレーニングが体内に及ぼす影響には、血清ホモシステイン減少やインスリン様成長因子-1(IGF-1)濃度の増大があります。
ホモシステインの増大は認知パフォーマンスの障害(Schafer et al., 2005)やアルツハイマー病(Alzheimer’s disease : AD) (Seshadri et al., 2002)に関係していることが確認されており,ラッ トを用いた研究では,ホモシステインには神経を破壊する作用があることが確認されている(krurman et al., 2000).
一方,IGF-1は神経の成長や生存,分化を促進し, 認知機能を改善するとされている(Cotman et aL, 2002).
これら血清ホモシステインとIGF-1の作用により, レジスタンストレーニングが認知機能低下予防に効果がある可能性があると考えられている(Liu-Ambrose et al., 2009).
運動による脳の制御 P139
以下に、アメリカスポーツ学会のガイドラインで推奨されている高齢者向けのトレーニングについて述べていきます。
筋力トレーニングの方法:参加前の注意事項と運動の監視
高齢者では整形外科的疾患や心臓疾患などを有することもあり、運動実施については注意することが必要です。
トレーニング中の安全性や方法に問題がないか専門家が監視できる状況にて行うことが望ましい環境といえます。
筋力トレーニングの方法:運動頻度
運動頻度は少なくとも週2回以上、4回までの実施が推奨されています。
また筋力トレーニングのインターバルは48時間以上空けることが推奨されています。
筋力トレーニングの方法:運動時間
高齢者では長時間の運動を行うと怪我の恐れや疲労が強く出る可能性もあります。そのため、運動時間はトータルで20〜45分程度の運動になるように調整し、平均30分程度が推奨されています。
筋力トレーニングの方法:運動内容と順序
多関節運動(ショルダープレス、レッグプレス、チェストプレスなど)をトレーニングの中心にすえて行っていきます。
これらに単関節運動(上腕カール、肘伸展、レッグエクステンションなど)を組み合わせていきます。
順序は多関節運動のあとに単関節運動を行います。
筋肉は胸筋、肩周囲筋、上肢筋、背筋、腹筋、下肢筋におおまかに分けられ、これらを包括的にトレーニングできるメニューが推奨されます。
この場合、運動順序は大きな筋群(下肢筋、背筋、胸筋)から行い、小さな筋群(上肢筋、肩周囲筋)を後に行います。
筋力トレーニングの方法:運動の種類
マシントレーニングは習熟度や安全性の観点において優れており、フリーウェイトトレーニングより推奨されていますが、個人のレベルに合わせて実施していきます。
筋力トレーニングの方法:セット回数
初めはそれぞれの運動を1セットから開始し、必要に応じて3セットまでを目標に実施します。
平均2セットが望ましいとされており、過度の疲労を避けるためにセット間の休息は2〜3分程度が推奨されています。
筋力トレーニングの方法:負荷の強度
1RM(「1回」につき最大で運動することができる重量)の85%の強度が効果を高める可能性がありますが、筋や関節への負担を考慮すると65〜75%の負荷が推奨されています。
筋力トレーニングの方法:運動回数
1RMの65〜75%では10〜15回、60%であれば16〜20回、65%であれば14〜15回、70%では12〜13回、75%では10〜11回、80%では8〜9回、85%では6〜7回が最適だとされています。
マシントレーニングができない場合
マシンによるトレーニングができない場合、自重でのスクワット(バランス不良があれば椅子に手をつきながら)や腕立て(膝をつきながら、壁を利用しながら)、仰向けでのお尻上げ(臀部挙上:ブリッジ)も効果的です。
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コグニサイズとは、「認知」という意味を表す「コグニション」と、「運動」という意味を表す「エクササイズ」から作られた言葉です。
運動と認知機能の関係について、
有酸素運動については、認知機能向上に有効であるという研究がありますが、その効果は限定されています。
コグニサイズは、有酸素運動を中心とした運動に加えて脳にも負荷をかける、例えば歩きながら引き算をする、踏み台昇降をしながらしりとりをするなど、頭を使う作業を加えることによって脳の活性化をめざすプログラムです。
このように同時に2つの作業を行うことを、私たちは「デュアル(二重)タスク(課題)」と呼んでおり、有酸素運動と認知課題の組み合わせが、より効果的だと考えています。
認知症予防のための脳活性化運動 コグニサイズ入門 新開発!国立長寿研の4色あしぶみラダー P2
とあり、認知症予防にはコグニサイズが有効だということがわかってきているのです。
国立長寿医療研究センターの研究によると、軽度認知障害の方を対象にコグニサイズを実施したところ、記憶力の向上、海馬周辺の萎縮の抑制がみられました。
ちなみに海馬は記憶に関与している脳の部位であり、アルツハイマー型認知症は海馬が萎縮することがわかっています。
コグニサイズの考え方は、運動+認知課題なので、普段の生活のなかでも考え方を取り入れることができます。
例えば、ウォーキングは誰でも取り組みやすい運動課題であり、ウォーキングしながら「200から7を引いていく」ような認知課題を取り入れるとコグニサイズになります。
このように、体を動かす場面があれば認知課題を取り入れることで生活の中でもコグニサイズを行うことができます。
ラダーは英語で「はしご」という意味であり、写真のようにはしご状のマス目があるものを指します。
4色あしぶみラダーの特徴は、赤・青・黄・緑の4色からなっていることです。
このラダーを使用し、数字を記憶しながら足踏みををしてマス目を進み、該当の数字の所で特別な動作をする、二重課題になっています。
4色あしぶみラダーの基本ルールは開発された島田裕之先生の解説動画がありますのでこちらをご参照ください。
書籍には6つのパターンが紹介されています。今回はその中のひとつを行ってみました。
ルールは「赤と緑で足を外に出す」です。
実際に患者様に行ってもらったことがあるのですが、行きはスムーズにできたのですが、帰りは足を出す順番が違うために間違えてしまうこともありました。
これはかなり認知機能に負荷をかけることができるのではないかという印象を持ちました。
個人的にはラダーが一組では短いように感じたため、何個かをつなげて行うと実施しやすいように感じました。
また行う方のバランス能力が低い場合、後ろにつき見守りながら行うなどの工夫も必要です。
難易度設定の考え方については、「少し難しく感じる」レベルが基本的な考え方になります。
「少し難しく感じる」レベルであれば脳に適度な負担をかけることができ、認知機能の向上が期待できます。逆に簡単なレベルの課題を繰り返し行っていてっも、脳に負荷はかからないため認知機能の向上は期待できません。
書籍にはバリエーション設定の考え方も書かれているので、参考にできると思います。
軽度認知障害の改善のためには、このラダー運動だけではなく、その他の運動も組み合わせることでより効果が高まると記載されており、そちらに関しては成書をご参照ください。
軽度認知障害の状態であれば改善可能なことがわかっています。
コグニサイズは運動と認知課題を掛け合わせたトレーニング方法、認知機能の向上が期待できます。
4色あしぶみラダーはコグニサイズであり、認知機能の向上に役立ちます。
バリエーションは独自ルールを作れば豊富であり、最適なレベル設定が可能になっています。
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認知機能は私たちが生活を送る上では欠かすことのできない脳の機能です。
例えば、今日は何年何月何日というように日付の感覚がわかったり、カレーを作るのに必要な材料を考え計画を立て、スーパーで購入するといったことも認知機能が正常に働いてくれているからこそ可能になります。
特に認知症では記憶力、判断力、理解力、思考力などの認知機能が低下すると言われています。
①計画力
ものごとを論理的に考える力です。
計画力が低下すると行動に効率性が欠け、時間がかかったりときちんと行動できなくなり、まとまりのない行動をとることもあります。
②注意の配分
同時に2つの課題をこなす時に、どちらにも注意を振り分ける機能です。
注意の配分ができなくなると、料理の最中に鍋を焦がしてしまうなど、うっかりミスや手際が悪くなってしまいます。
③記憶力
自分の体験したこと(エピソード)に関する記憶が低下しやすくなります。
特に2〜3日前にどんな出来事があったかなどが思い出せなくなります。
①鍋を焦がした
②よく忘れ物をする
③人との約束を間違えた
④ゴミ出しを忘れた
⑤トイレの電気を消し忘れた
⑥冷蔵庫に同じ食品がいくつも入っている
⑦部屋が散らかっている
⑧メガネを無くした
出典:NHKきょうの健康 2014年12月号
認知症になるリスクを高める因子としては糖尿病、高血圧、肥満などがあるのですが、運動不足が最も高い危険因子として注目されています。
近年、さまざまな研究で、運動に記憶力などの認知機能を向上させる効果可能性があることが報告されているので、認知症予防に取り組むなら、まずは運動習慣をつけることから始めるのがよいでしょう。
〜中略〜
また、最新の研究で、運動を単独で行うより、運動しながら頭も一緒に使うデュアルタスクトレーニングを行うほうが、記憶力など認知機能の維持、向上に効果があることがわかってきました。
認知症の予防につなげるためには、ふだんの生活にデュアルタスクトレーニングを積極的に取り入れることが大切です。
NHKきょうの健康 2014年12月号 P101
このように運動しながら頭を使ってトレーニングをすることを、最近では「コグニサイズ」(コグニッション:認知、エクササイズ:運動を掛け合わせたもの)とも呼んでいます。
ウォーキングは誰でも取り組みやすい運動になります。
このウォーキングに頭の運動を取り入れるとコグニサイズになります。
認知症予防に大切なのは、ウォーキングをしながらでも少し考える必要があるくらいの頭を使う課題を取り入れることです。脳への負荷をかけることが大切なのですが、負荷をかけすぎるとウォーキングのスピードが遅くなってしまったりするため、一定のスピードを保ちながら行えるくらいの課題を選択する必要があります。
①ウォーキングしながら引き算
例えば300から7ずつ引いていきます。7で難しいと感じる場合には3や4から始めると良いでしょう。
7でも簡単だと感じる場合には、7と5を交互に引いていくなど、自分なりにバリエーションを増やして行うと良いと思います
②ウォーキング+太ももタッチ
1歩1歩に合わせて1から順番に数字を数えてゆき、3の倍数になったら手で太ももをタッチします。
簡単だと感じるのであれば、3の倍数の時に太ももにタッチする手を左右交互にします。
さらに難しくする場合、3で太もも、6で胸、9で頬などタッチする場所を変えます。
家の中で行いたい場合、その場で足踏みしながら上記の事を行う事も可能です。
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日常生活の動作の中でも、普段の方法に少し工夫を加えるだけで、コグニサイズが可能になります。
コグニサイズの難易度設定は、「少し難しく感じる」レベルで行う事が大切です。
簡単すぎる課題をいくら続けても認知機能は向上しません。
「少し難しく感じる」課題が脳機能アップの秘訣です。
行っている課題が簡単に感じたら、新たに課題を設定するなどしてレベルアップを図っていきましょう。
新しい課題を創造するだけでも相当な脳機能が使用されているはずです。
①スーパーの買い物で!合計金額暗算
スーパーなどで買い物をする際に、カゴに入れた商品の合計金額を暗算していきます。
もしくは、あらかじめ決められた金額に収まるように計算しながら商品を購入していきます。
②スーパーの買い物で!一方通行で買い物を済ませる
スーパーの買い物などで、後もどりえをせずに一方通行で計画的に買い物を済ませるようにします。
この課題はかなりの計画力が必要になり良いトレーニングになります。
③調理の時間を短くする
調理時間を短くするには、計画的な調理、効率、手際の良さなど、様々な所に注意を向けながら実行する事が求められます。
同じ時間内でもう1品調理するなども同様の脳機能が必要です。
④制限時間のある掃除
洗濯物干し、掃除機がけ、風呂掃除など、制限時間を決めて時間内に終わらせるように実行します。
計画力や注意機能など総合的な能力が鍛える事ができます。
⑤読書は立ちながら音読で
立ちながら、足踏みしながら、片足立ちになりながらなど、バランスをとりながら音読をすると、運動と認知課題が同時に行えます。
⑥カラオケは振り付けつきで
カラオケで歌を歌う時は振り付けしながら歌いましょう。
振り付けを覚えて、音楽にずれないように歌いながら踊ることはコグニサイズになります。
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趣味などの余暇活動の中で、特に運動要素を含む趣味は認知症の中でもアルツハイマー型認知症の発症リスクが下がることがわかっています。
社交ダンスはステップを覚え、音楽を聴きながら、相手に合わせながら踊るというコグニサイズになるので、余暇活動の充実と認知症予防にはオススメの活動になります。
私たちの生活は認知機能の働きで計画的に、効率よく、適切に行う事ができます。
認知症になる前から低下しやすい認知機能には計画力、注意の配分、記憶力があります。
認知症予防には、運動しながら頭を使ってトレーニングをする、「コグニサイズ」を行う事で、認知機能の向上が期待できます。
ウォーキング、家事に認知課題を取り入れる事によりコグニサイズとなります。
コグニサイズは「少し難しく感じる」課題設定が脳への適度な刺激となります。
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