認知症者では、特徴的な睡眠障害が見られると言われており、その存在は、BPSDを予防する上でも重要であることが示唆されています。今回、認知症者における睡眠障害の特徴と改善方法についてまとめていきたいと思います。
目次
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認知症者における睡眠障害の特徴ですが、今回は遭遇する頻度の高いアルツハイマー型認知症における睡眠障害を中心にしていきます。
アルツハイマー型認知症における睡眠障害の特徴としては、
睡眠時間の減少,睡眠効率の低下,浅睡眠の増加,夜間覚醒の増加のほか,睡眠紡錘波やK複合の減少がみとめられる.
レム睡眠の減少もみられる.
これらは高齢者の睡眠の特徴と一致する部分も多いが,AD患者の睡眠の分断化は,不眠のみならず夜間の徘徊につながるほか,日中の眠気や居眠りの原因ともなる.
いわゆる体内時計に狂いが生じている状態です。
認知症では,日中の活動性が低下することにより社会参加機能が低下し,外出が減少することにより日光暴露量が不足することに加え,視覚障害や光に対する網膜の感受性が低下し視交叉上核の体内時計への刺激の入力が低下すること,視交叉上核の変性による機能障害も加わり,睡眠覚醒リズムの障害をきたしやすい.
このようなメカニズムから、認知症者では夜間の覚醒や日中の傾眠、昼夜逆転などが見られることがよくあります。
夕方から夜間にかけて興奮,失見当識,徘徊などを生じるものをいう.
睡眠環境の変化や不適切な就床時刻,鎮静系薬物なども背景因子となる.
ADでは意識障害もおこしやすく,入院などの睡眠環境の変化や薬物治療によりせん妄をひきおこしやすい.
夕暮れ症候群とその対応方法については以下の記事も参照してください。
認知症の評価スケールとアプローチ!対象者に合ったバッテリーを用いた効果測定に向けて!
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高照度光療法は、一般的には自宅の照明より高い照度である1000~10000ルクスに30分以上、暴露することが望ましいとされています。
一般的に、光を浴びることの効果として、
光はその浴びる時間帯によってリズムに与える影響が異なることが知られています。
早朝に光を浴びると体内時計の位相が前進し、24 時間にリセットされます。
つまり、早朝の光を浴びると覚醒する方向に体内時計がリセットされます。
また、光を浴びた 15~ 16 時間後に自然に眠気が強くなることが知られています。
一方、夜間に光を浴びると体内時計の位相は後退します。
つまり、夜に光を浴びると夜なかなか眠くならないということです。http://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/162019.pdf
高照度光療法は,夜間のメラトニン分泌を増加させ,昼夜のリズムに同調させる効果があり,睡眠と行動の問題の改善にも寄与する.
とされています。
リハビリテーションとしての関わりとしては、リハビリ提供時に日光浴を行ったり、日光浴を行いながら運動や作業活動をすることなどが関わりとして行えることだと思います。
まさしくリハビリテーションとの関わりが深いのが運動です。
定期的な運動習慣があることは不眠を改善できることに加え、身体機能や活動能力の維持にも繋がります。
1日30分程度のウォーキング習慣を持つことが推奨されていますが、対象者の身体状況により動作能力も異なるため、状態に合わせて運動を行うようにする必要があります。
薬物療法は、リハビリテーションと直接関わりのあるものではありませんが、処方薬の特徴を知っておくことは対象者の状態把握やリスク管理にも繋がるため重要になります。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、転倒や骨折リスクが高く、せん妄を発現するリスクが非常に高いとされており、あまり推奨されていない睡眠薬です。
薬の持ち越し効果により薬の効果が翌日まで続いてしまうことで、日中の眠気やふらつき、頭痛などが現れることがあります。
また、筋弛緩作用によりふらついたり転倒したりすることがあります。
非べンゾジアゼピン系睡眠薬も作用機序としてはべンゾジアゼピン受容体に作用して効果が発現するものなので、非ベンゾジアゼピン系の薬物も上記のようなリスクはあると言われています。
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リハビリテーションや介護、看護の関わりが、対象者の睡眠状況をどの程度改善したかについては、それを評価できる指標を作っておくことが重要になります。
睡眠状況の評価バッテリーとしては、
などを確認してください。
その他アウトカムとしては、以下のようなものがあります(日本における認知レベルの低下した高齢者への「睡眠を促すケア」の構造―睡眠を促すケアの概念枠組みの作成―より)。
満足できる睡眠:眠れたと言う
夜間睡眠の改善:中途覚醒の減少、ねつきが良い、早朝覚醒の改善、昼夜逆転にならない
日中覚醒の改善:日中の覚醒レベルが保たれる
本来の睡眠覚醒リズムを保つ;普段や過去と同じパターンになる、その人のペースを保つ、周期性ができる
さらに、睡眠状況の改善による二次的な効果の評価指標としては、以下のようなものがあります(日本における認知レベルの低下した高齢者への「睡眠を促すケア」の構造―睡眠を促すケアの概念枠組みの作成―より)。
睡眠薬使用の減少:睡眠薬を使用せずに眠れる
精神状態の安定・改善:落ち着く(興奮しない)、せん妄にならない、日中や朝の気分が良い、笑顔が出る、会話ができる
生活のリズムがつく:生活のめりはりがつく
規則正しい生活:迷惑行為の減少、おむつをはずさない、他入所者への迷惑が減る、ナースコールの回数が減る、
転倒の減少:転倒が減る
日中の食事・水分摂取の保持:食欲が出る、食事や水分がスムーズに取れる
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