認知症者における非薬物療法では、様々な作業課題を用いると思います。作業課題が1回で完成されないものの場合、認知症対象者は次の日に、前日の課題内容を覚えていないこともあります。今回、認知症者と作業活動提供において、前日の取り組みを思い出してらうための工夫についてまとめていきたいと思います。
目次
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認知症の方は、記憶障害や思考・判断力低下、失語などの中核症状により、意味ある作業に基づく生活ができていなかったり、他者に作業ニーズを伝えることができないことがあります。
作業ニーズが満たされないことで、不安や焦燥が生じ、BPSDが生じてしまうことにつながります。
これは、マズローの欲求段階からも、捉えることが可能と思われます。
認知症高齢者のBPSDはクライアントの作業適応障害の状態であるととらえることができる。
そのため、OTRが認知症高齢者のBPSDを理解して作業適応を促進するためには、クライアントの作業と作業的生活を理解することが必要である。事例でわかる人間作業モデル P206
認知症者における作業提供では、対象者の興味・関心、活動に取り組むこと自体の好き嫌い、自己評価の捉え方などの視点から作業適応を考える必要がります。
これらについては、詳しくは以下の記事を参照してください。
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認知症者に提供する作業活動の選び方や用い方の基準には、以下のようなものがあります。
①リスク管理できる材料
②やり直しができる
③使えるもの(完成後使用できるもの)
④できる限り見栄えのよいものにする
⑤家族が作品を見れるようにする
詳しくは、以下の記事を参照してください。
認知症の評価スケールとアプローチ!対象者に合ったバッテリーを用いた効果測定に向けて!
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作業活動には様々なものがあります。
その中で、折り紙は1回で終了することが多いでしょう。
しかし、手芸などの作業活動ではどうでしょうか。
作品が大作になればなるほど時間がかかるため、翌日も取り組むことになるでしょう。
このとき認知機能が低下している方では、前日に取り組んでいた内容を忘れてしまうことがあります。
作業活動をすることのメリットとして、興味のある作業活動への取り組み、それが達成すること自体が報酬となります。
また、達成したものはスタッフなどの他者からも賞賛されることで、それも報酬となりえます。
これらの内的・外的報酬は快刺激となり、ポジティブな感情に繋がり、手続き記憶などの強化を促せる可能性が高まります。
これらのことを期待したいのに、前日に取り組んでいることを忘れてしまっている場合、果たして翌日も主体的に取り組めると言えるでしょうか。
もしかすると、誰か他の人が作った作品の続きをしているだけかもしれないというように、受動的な作業活動への取り組みになってしまっている可能性もあるかもしれません。
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認知症の方に、前日の取り組みを思い出してもらう、もしくは、思い出せないとしても、不安なく作業遂行をしてもらうための工夫点を紹介していきます。
・名前を書いてもらう
の1点です。
とても簡単ですが、案外できていないこともあるのではないかと思います。だって、スタッフはおおよそ誰がどの作品を作っているか把握しているものなので。
「名前を書いてもらう」という工夫点ですが、これには以下のような効果が期待できます。
・名前を見ることで、その作業活動が初めて取り組むものではないことがわかる
・名前を見ることで、安心感を得られる(不安がなくなる)
認知症で認知機能の低下があっても、自分の名前は忘れにくいものです。
認知症の方は、中核症状のために自分のおかれている環境や周囲との関係性が把握できていないことがあり、これは大きな不安を生み出します。
砂漠に一人取り残された感覚かもしれません。
そのときに、自分が覚えている、もしくは自分の存在を認識できる名前があれば、そこには安心感が生まれるのではないでしょうか。
簡単な工夫ですが、案外これが作業遂行をスムーズにさせるための方法でもあったりするのです。
自筆が重要ですので、書字能力に問題がない場合は、自分で書くようにしてもらってください。
また、これまでの取り組みの経過がわかるように、日付を一緒に確認しながら書いてもらう試みも良いかもしれません。
日付に加えて取組んだ時間も書いていると良いでしょう。
作品のある部分にたどり着くまでに、どの程度時間がかかったかを知るということは、普段私たちの生活では当たり前のように行なっていることで、計画性などの遂行機能にも繋がります。
日付や取り組み時間を確認する際に、リアリティオリエンテーションの視点を用いることができれば、見当識の賦活にもつながるでしょう。