股関節疾患の歩行においてよく確認されるのが、トレンデンブルグ歩行やデュシャンヌ歩行です。基本的には、どちらも股関節外転筋の機能低下が影響しますが、股関節内転筋も影響するとされています。今回、トレンデンブルグ・デュシャンヌ歩行の原因となる外転筋力と股関節内転可動域の関係性についてまとめていきたいと思います。
目次
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股関節外転筋(中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋)の機能低下がある場合(または大腿筋膜張筋を介して腸脛靭帯の聴張力が低下する場合)、歩行時に骨盤の前額面上でのコントロールが不十分になり、いわゆるトレンデンブルグ歩行が出現します。
トレンデンブルグ歩行は、
・股関節外転筋の機能低下によるもの
・歩行時の立脚中期において、遊脚側に骨盤が下制する
ことを言います。
患側、健側の視点から説明すると、患側立脚期で健側(遊脚側)の骨盤が患側より下制する現象です。
一方、デュシェンヌ歩行は立脚期において骨盤(体幹)を立脚側に大きく傾けることが特徴です。
患側、健側の視点から説明すると、患側立脚期で健側(遊脚側)の骨盤が患側より下制するのを防ぐために体幹を患側に傾ける(代償的に)現象です。
これは、歩行時における疼痛を軽減させるために行う代償動作と考えられています。
骨盤(体幹)を立脚側に大きく傾けることで、股関節は相対的に外転位をとりますが、これにより股関節の安定性を向上させる働きがあるとされています。
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トレンデンブルグ歩行やデュシャンヌ歩行は、その原因が股関節外転筋の筋力低下にあると決めつけがちですが、特にデュシャンヌ歩行は股関節内転制限がその要因になる可能性があります。
では、股関節内転制限があるとなぜデュシャンヌ歩行に繋がってしまうのかを考えていきます。
デュシャンヌ歩行において、股関節外転筋力が主な原因となる場合、体幹を患側に傾けることで骨頭から重心線までの距離が短苦なり、弱い外転筋力でも歩行が可能となります。
股関節内転制限がある場合、骨盤が外側に移動できない状態となります。
骨盤が外側に移動できないことに対して、体幹の側屈を用いることでバランスをとるような反応になっていると考えられます。
なお、歩行に必要な股関節内転可動域は約4°とされていますが、背臥位における股関節内転可動域はそれ以上必要だとされています。
その理由として、
立位では外転筋の遠心性収縮の強要とともに筋内圧が高まり、背臥位で測定した内転角度以下になる可能性が考えられる。
とあります。
変形性股関節症に対するTHAの場合は,骨頭を引き下げることによる外側軟部組織の緊張増大,手術侵襲による筋スパズムおよび術創部の伸張刺激,皮下の滑走性低下などが考えられる。
一方,大腿骨近位部骨折の場合は,変股症とは異なり筋の変性はないため,基本的には術後の筋攣縮が考えられる。