「自分でできるボディワーク」公式LINEアカウントで募集した臨床疑問から、今回は歩行と体幹機能の関係性についてまとめていきたいと思います。
目次
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先ずは、姿勢保持に必要な体幹筋と姿勢の安定性について確認していきます。
体幹筋には、ローカル筋とグローバル筋に分かれます。
体幹の深部に位置するローカル筋群(腹横筋,腰部多裂筋,内腹斜筋など)は、脊柱の分節の剛性や椎間の運動の制御に関与します。
体幹の表層に位置するグローバル筋群(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、脊柱起立筋)は、脊柱全体の運動を調節しています。
この2つのシステムが相互に作用することで、脊柱の分節的運動を生み出しています。
体幹機能については以下の記事を参照してください。
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骨盤が直立した位置にある、すなわち機能的な直立姿勢は、立位や座位において、内腹斜筋や多裂筋といった深層筋の筋活動が増加します。
一方で、脊柱起立筋や腹直筋といった表層筋の筋活動減弱を示します。
姿勢の違いによる筋活動の変化では、骨盤が直立した姿勢と比較し、スウェイバック姿勢(上体の後方変位と骨盤の前方変位がある後方傾斜姿勢。体の重心線が腰の後方を通過する。)では、深層筋である多裂筋や内腹斜筋の活動が減弱し、表層筋である腹直筋の活動が亢進します。
なお、胸椎伸展姿勢は表層筋の活動が亢進し、深層筋の活動は減弱します。
スランプ姿勢(脊柱後弯姿勢)では深層筋の活動が減弱します。
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インナーマッスルの弱さは、歩行時の推進力が低下につながり、歩行スピード低下に関係します。
高齢者では、老化による生理現象や体幹筋機能低下により、脊椎の垂直化と骨盤後傾が特徴的に見られます。
歩行では、大腿骨頭を股関節がある程度被覆することで、下肢降り出しが容易になります。
そのため、歩行時には、股関節の被覆大きくするためには骨盤は前傾しやすくなります。
これは、円背姿勢(胸腰椎屈曲)がある場合、顕著に現れやすくなります。
立位を取るために骨盤が後傾すると、股関節は伸展するので、歩行には不利になります。
そうすると、残る膝関節や足関節で機能代償することになり、同部位への負担が大きくなります。
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ここで、骨盤姿勢と運動連鎖について復習します。
骨盤後傾姿勢では、
・腰椎屈曲
・膝関節強度屈曲
・胸椎屈曲
・頚椎過伸展
・胸郭狭小
が見られます。
一方、骨盤前傾姿勢では、
骨盤前傾姿勢
・腰椎伸展
・股関節屈曲
・膝関節軽度屈曲
・足関節底背屈中間位
が見られます。
通常、歩行ではエネルギーを効率よく使用するためには直立立位が必要となるので、骨盤後傾or前傾の異常姿勢が見られる場合、直立立位姿勢に近づけるようにトレーニングを行う必要があります。
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矢状面での骨盤と胸郭の制御および安定性は、内腹斜筋の働きにより、腹直筋鞘を側方に引っ張ることで腹直筋を安定させることが重要になります。
通常、歩行における内腹斜筋の活動は、立脚期に筋活動が増加し、遊脚期で筋活動が減少します。
立脚相においては、両側の腹斜筋群や対側の脊柱起立筋の活動の働きにより、前方へ傾倒を抑制し、体幹の姿勢安定化が図られます。
この姿勢安定化により、遊脚側下肢の前方振り出しが行いやすくなります。
歩行では、腹筋群に加えて脊柱起立筋も活動しています。
脊柱起立筋の活動により、前方および側方の安定性が確保されることになります。
歩行における脊柱起立筋との関係には諸説ありますが、以下のようなものがあります。
・立脚初期にみられ、続いて立脚後期から遊脚初期に活動が見られる
・歩行周期全般にわたり活動がみられ、慣性と重力によって体幹が前方に屈曲するのを防ぎ,同時に左右
への動揺も抑える
・立脚期の初めと終わりの二重支持期に強い活動が見られ、体幹が前方へ崩れるのと体幹の回旋・側屈を
防ぐために活動する
・立脚期の初期と後期とでピークが生じ、二重支持期が達成されると活動が停止する
・立脚初期の脊柱起立筋群の筋活動は、骨盤の側方移動と骨盤が反対側の下方へ傾斜する傾向を防ぐ
・立脚初期の脊柱起立筋群の筋活動は、体幹の屈曲を制限する直立姿勢保持とに関係している
・立脚後期以降に生じる筋活動の二番目のピークは、続けて下肢を振る準備のために骨盤を上げることに関
係している
歩行については以下の記事も参照してください。
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骨盤が直立した姿勢、つまり機能的直立立位姿勢では、内腹斜筋が優位に筋活動が大きくなります。
これは、歩行周期の立脚初期強く働き、骨盤への剪断力に対して仙腸関節を安定させるために働くことが考えられています。
ロードシス姿勢(骨盤前傾、過度に前彎している腰椎、膝の過度な伸展が特徴)では、骨盤前傾に伴い股関節屈曲(体幹前傾)するため、姿勢保持のために立脚初期に体幹および股関節伸展の筋活動が大きくなります。
また、ロードシス姿勢では、立脚初期に体幹および股関節伸展が大きくなることから、骨盤回旋が大きくなることが特徴的です。
この骨盤回旋は、立脚側股関節の内旋運動を伴い、大殿筋や大腿二頭筋長頭は遠心性収縮となり、股関節伸展筋の負荷が大きくなります。
スウェイバック姿勢(上体の後方変位(胸椎後弯)と骨盤の前方変位がある後方傾斜姿勢。体の重心線が腰の後方を通過する。)では、立脚期の股関節、膝関節の屈曲や足関節背屈が大きくなります。
スウェイバック姿勢では胸椎は後弯しますが、これに伴い体幹は後方傾斜します。
これに対し、股関節屈曲と下腿前傾を大きくし、膝関節屈曲することで姿勢保持を行い、身体の前方移動を行いやすくします。
体幹後傾させた歩行では常に体幹や股関節屈曲の筋活動が大きくなり、また膝屈曲に対して膝関節伸展筋(特に大腿直筋)の活動が大きくなります。
スウェイバック姿勢では、トレンデンブルグ歩行(通常は中臀筋の筋力低下で生じる)が見られやすいのですが、これは体幹筋活動の低下や体幹後傾に伴う立脚初期での膝関節伸展筋活動の増大、さらに立脚側の股関節屈筋活動の増大に伴う、大腿筋膜張筋の収縮力増加が影響していることが考えられます。
トレンデンブルグ歩行については以下の記事を参照してください。
トレンデンブルグ・デュシャンヌ歩行の原因となる外転筋力と股関節内転可動域の関係性