大腿骨頸部骨折において、作業療法の専門性を活かすにはどのようにアプローチしていけばよいのでしょうか、今回、大腿骨頸部骨折の作業療法について、アプローチの視点と方法をまとめていきたいと思います。

大腿骨頸部骨折の作業療法!アプローチの視点と方法!

大腿骨頸部骨折とADL向上

大腿骨頸部骨折の作業療法では、ADLの向上を目的に医師から処方が出されることも多いと思います。

大腿骨頸部骨折術後では、痛みや筋力低下などが要因となり、ADLが独力で行えないことがほとんどです。

そのため、作業療法としては、自助具を使用しながらADLの自立度を高めていき、今後必要になるであろう機能を高めていくようなアプローチが重要になります。

大腿骨頸部骨折術後と禁忌肢位

大腿骨頸部骨折の手術のなかでも、人工骨頭置換術(THA)では、股関節の脱臼を防ぐための、禁忌肢位を把握しておくことが重要になります。

THAでは、アプローチ方法により禁忌肢位が異なります。

前側方アプローチでは、股関節の深屈曲、股関節伸展・内転・外旋に注意します。

後方アプローチでは、股関節の深屈曲、股関節屈曲・内転・内旋に注意します。

前側方アプローチにおける注意点は下線で示しています(深屈曲は共通の禁忌肢位となります)。

ベッド上動作

寝返り動作では、股関節が内側にねじれないように枕を足の間に挟むことで予防します。

患側下肢が置いていかれてしまうと、股関節がねじれる動きとなってしまいます。

起き上がり動作では、腹筋の力が強ければ真っ直ぐ上体を起こすように起き上がります。

この時も、股関節がねじれてしまうと脱臼の危険性が高くなってしまいます。
前側方アプローチでは、腹臥位にて体をひねらないようにすることが大切です。

ベッドに寝に行く際に、台の上に膝をつけて行おうとしてはいけません。

座位

座位では、膝の位置が股関節よりも下にあるようにします。
低い椅子では、股関節深屈曲となり脱臼肢位となります。

座位では患側股関節が内側にねじれてはいけません。

「膝を離す」「踵をつけて足首を広げる(外に向ける)」と声かけをすると意識しやすくなります。

患側下肢を上にして足を組んではいけません。

足を組みたい場合、健側下肢上にして組むようにします。このとき、患側股関節は真っ直ぐ保ちます。

これらの禁忌肢位は、一度の説明だけでは対象者の方が全て理解できるものではありません。

上の写真のようなパンフレットなどを作成して、禁忌肢位の理解が十分にできるようにしてください。

大腿骨頸部骨折術後とADL向上のための動作指導

大腿骨頸部骨折術後の作業療法では、ADLの自立度を高めるために動作指導を行います。

股関節の関節可動域制限に対しては、

・リーチャー
・火箸
・ソックスコーン
・紐付き洗濯バサミ

を使用し、物を拾う動作や靴下、下着やズボンの着脱の自立度を高めます。

これら自助具は、股関節の可動域制限の改善や、股関節周囲の軟部組織がしっかりとしてくることで使用しなくてもよくなることがあります。

担当医師との相談し、どの程度の肢位をとってよいかを確認することも大切になります。

 

床上動作の困難さについては、

・生活環境の調整
・床への立ち座り動作の指導

が挙げられます。

生活環境の調整では、ベッドやテーブル、椅子、ソファーの使用に関してになります。

股関節過屈曲とならないような椅子の高さを調節することが必要になります。

高齢者では、元々の下肢の筋力低下もあることから、立ち上がりの行いやすい高さを調整することで、生活のしやすさにつなげることが可能です。

床への立ち座り動作の指導では、どうしても脱臼肢位とのかねあいがあります。

脱臼肢位を守れないのであれば(身体機能的に)、床への立ち座りは行わないように徹底する方がよいかもしれません。

その辺りは、対象者の方との話合いを通して、生活スタイルから必要性を確認する方がよいでしょう。

 

入浴動作では、浴槽内に普通に座るとどうしても過屈曲の肢位となるため、対象者の退院が早くなるようであれば、浴槽内椅子やシャワー椅子を用いるように指導します。

また、入浴動作では転倒のリスクが高くなることから、またぎ動作の指導や手すりの設置による動作を指導するようにします。

ADL指導に関しては、以下の記事を参照してください。
全人工股関節置換術(THA)のアプローチ別!日常生活動作(ADL)指導、注意点

大腿骨頸部骨折と作業療法(機能訓練を中心に)

大腿骨頸部骨折の作業療法では、以下のようなアプローチが行われます。

その場合、

・関節可動域拡大
・下肢筋力向上
・体幹筋力向上
・筋緊張調整
・下肢協調運動
・基本動作訓練
・立位訓練(バランス、患側への荷重の促し)
・ADL訓練
・自助具検討
・住宅改修
・家族指導

などが行われます。

家族指導では、入院中は病棟スタッフが常に動作に関して注意をしてくれますが、退院後にはそれがなくなります。

対象者が認知機能的に問題なければ脱臼肢位は守られるでしょうが、介助が必要になる場合には、家族が介助方法や注意点を知っている必要があります。