レーヴン色彩マトリックス検査(Raven’s Colored Progressive Matrices Test:RCPM検査)は、知的機能検査の一つで、重度失語症にも適応可能な非言語性テストです。今回、レーヴン色彩マトリックス検査の概要と使用方法、結果の解釈について、文献を参考にまとめていきたいと思います。
目次
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レーヴン色彩マトリックス検査は、失語症や認知症の方にも適応可能な、知的機能検査です。
知的機能の中でも、特に推理能力が関与する検査になります。
スピアマンの一般知能g因子(知能がは働く時すべてに共通する因子(一般因子))の測定のために開発された経緯があります。
45歳以上の適応となり、所要時間は10〜15分、0〜36点の範囲で得点が算出されます。
非言語性の検査であり、文化的背景の影響を受けず、また精神的・心理的負担も少なく実施できることが特徴です。
実施の簡便さと短時間で実施可能なこと、採点も時間がかからず分析も行いやすいことから、知的機能のスクリーニング検査として有用となります。
同じ非言語性の知的機能検査としてコース立方体組み合わせテストがあります。
コース立方体テスト(目的、方法、IQ算出、結果の解釈)と、頭頂葉・後頭葉、前頭葉領域障害による取り組み方の違い
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問題は全部で36問あり、標準構成図案に合うものを6つの図形の中から1つだけ選択してもらいます。
3つのセットがあり、セットAでは連続した模様の同一性と変化についての理解を推論が求められます。
セットBでは各図形の空間的に関連した全体としての理解を推論が求められます。
セットCでは空間もしくは論理的に関連した図形の相似的な変化について推論が求められます。
高次脳機能障害の検査をする上での全体的な注意点については以下の記事を参照してください。
高次脳機能検査を行う際に注意しておきたいこと!
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レーヴン色彩マトリックス検査は、脳卒中などの脳損傷者の知的機能評価として用いられることが多くあります。
脳損傷者に用いるメリットとしては、以下のようなことがあります。
①被検者が課題を理解しやすい
②短時間で施行できる
③言語反応を必要としない
④複雑な運動反応を必要としない
脳損傷者にレーヴン色彩マトリックス検査を施行すると、以下のような特徴があります。
①女性、高齢者、認知症、構成障害で得点が有意に低下
②24点以下の者の出現頻度が高いの者は女性,高齢者,認知症,構成障害,半側空間無視を有している
③脳損傷側・失語症・半側空間無視の影響は相対的に弱い
④空間形態をより“能動的”で“心的(イメージ的)”に構成する過程が必要
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失語症とレーヴン色彩マトリックス検査の関係性についてです。
通過率が低いのは推理、思考力を要する項目となっています。
エラーとしては、縦と横の関係から問われている図の推理が困難(刺激図案にある図と同じものを応答す
ることが多い)な傾向にあります。
推理や思考力を要する項目は言語機能の影響を受けやすくなっています(検査成績に影響する可能性)。
レーヴン色彩マトリックス検査はWAIS-R動作下位項目「絵画配列」「符号」と相関が高くなっており、
「絵画配列」は談話水準の言語表出能力、「符号」は文字言語の音韻処理障害が関与しています。
レーヴン色彩マトリックス検査は大まかな認知機能の評価として簡便で実施しやすいことが特徴です。
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レーヴン色彩マトリックス検査における誤反応には、主に直接誤反応と間接誤反応に分けられます。
直接誤反応は、刺激図版のいずれか(左下・右上・左上)と同じ図形を反応図版の中から選択してしまう誤りです。①下と同じ図形を選ぶ誤り(横反応)
②右上と同じ図形を選ぶ誤り(縦反応)
③左上と同じ図形を選ぶ誤り(対角反応)
間接誤反応は、被験者の選択した図形が刺激図版内には存在しないような誤りで、回転反応と不合理反応に分けられます。
①回転反応とは被験者が正答を回転した図形を選んだ場合
②不合理反応とは誤りが間接誤反応にも回転反応にも属さない場合で誤りの解釈・説明が困難な反応
局在性脳損傷患老84例の誤反応を分析した結果では、
・前方病変群の誤りはほとんどが直接誤反応で,特に横反応は全般性注意低下と関連した最も単純な誤り
・間接誤反応は前方病変群に比して後方病変群で多い
・転反応は視空間操作要因やメソタルローテーションが関与、不合理反応はより純粋な視覚的抽象推論能力を反映
という特徴があります。
メンタルローテーションやイメージについては以下の記事を参照してください。
運動イメージの質問紙法による評価!KVIQの概要と評価方法、結果の解釈!
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年齢別の平均点と標準偏差は以下のようになります。
年齢 | 平均値(標準偏差) |
45〜49 | 34±2.03 |
50〜59 | 34.2±2.13 |
60〜69 | 29.2±5.40 |
70〜79 | 26.9±5.40 |
80〜89 | 24.9±5.27 |
レーヴン色彩マトリックス検査の成績は、認知症以外では失語症や半側空間無視よりも、構成障害の影響を受けやすいと言われています。
回答は口頭反応や指差し反応で可能であり、直接的な構成動作は必要としないことから、RCPM検査の解決には、外界刺激(刺激材料の)”受動的”な視空間的処理(例えば半側空間無視による見落としなど)や構成動作の遂行手順のプログラム自体よりも、空間形態をより”能動的”で”心的(イメージ的)”に構成する能力が必要であるとされている。
よくわかる失語症と高次脳機能障害 P312
構成能力は知的能力(特に非言語性で流動性の知的能力)と関連があり、認知症や加齢による構成能力の低下と、構成能力が特異的に困難になっている構成障害とを鑑別することが結果の解釈には必要になります。
構成障害については以下の記事も参照してください。
構成課題における誤りの分類と構成障害のメカニズム(病巣との関係)
レーヴン色彩マトリックス検査全体の得点が24点以下である場合を知的機能の低下の判定基準(カットオフ)としています(杉下守弘,山崎久美子:日本版レーヴン色彩マトリックス検査(手引き).日本文化科学社,東京,1993)
健常児のデータも文献にありましたので参考にしてください。
学年 | 平均点(標準偏差) |
2年 | 29.5±5.6 |
3年 | 30.4±4.8 |
4年 | 32.3±4.4 |
5年 | 32.9±3.7 |
6年 | 33.0±3.8 |
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