鎖骨骨折の症状、治療期間、保存・手術療法、リハビリテーションについてまとめています。
鎖骨骨折の症状、治療期間、保存・手術療法、リハビリテーション
上肢骨折等の整形外科リハビリについてのお勧め記事
鎖骨骨折の概要
- 全ての骨折のうち約1割りを占める(意外に多い)
- スポーツ、交通事故などで転倒し受傷する
- 多くは鎖骨の中央1/3の部位で生じる
- 成人以上では肩側寄りの部位でも生じやすい
- 骨折により近位骨片(身体の中央側)は上方、遠位骨片(片側)は下方にずれる
- 鎖骨の変形や骨片が短縮する(重なる)
⇒肩幅が狭くなる、皮下出血や腫脹・疼痛、運動時痛の増強 - X線やCT画像で確認する
鎖骨骨折の分類
- Robinsonらによる分類
- 予後の指標となる
- 治療方針の決定の際によく用いられる
鎖骨骨折の保存療法
- 基本は保存療法
⇒血流が豊富で多少の転位でも骨癒合しやすい
・転位が小さい
・小児(骨癒合が得られやすい)
・手術できない状態にある - 短縮した骨片を整復後、鎖骨バンド(クラピクルバンド)等で固定する
*鎖骨遠位端骨折では三角巾や装具を使用
⇒腕の重みで骨折部の転位につながる事がある
クラビクルバンド
- 鎖骨骨折などの処置において、患部の外転位を的確に保持する鎖骨固定帯
- 固定を目的とするが、必ずしも完全に固定できるものではないことに注が必要
- クラビクルバンド装着の際には、「胸を張る」ようにして装着することで、その効果を最大限にすることができる
- 鎖骨骨折では、クラビクルバンドを通常6週間程度装着する
- クラビクルバンドは、骨を長軸方向に牽引することにより、骨折部の短縮を防ぐことが可能
- 鎖骨骨折では腕の重みにより骨折部の転移が生じることもあり、三角巾による固定も行うことが多い
骨癒合の目安
- 一般的には4週(Gurlt;グールトによる)
*最良の条件での骨癒合期間
- 乳幼児で2-3週、小中学生で4~6週間程度
⇒低年齢児ほど短い - 成人では骨折部の短縮や粉砕が強いと骨がつかない(偽関節)で痛みや不安定感を生じる
- 骨癒合しても短縮による変形で痛みや運動制限などが残る場合あり
鎖骨骨折と偽関節
- 偽関節の発生率は0.4%〜15%
- 受傷時に骨折部の転位がどの程度か
- 骨折部の短縮の長さがどの程度か
- 整復時の転位がどの程度か
- 年齢条件(高齢ほど発生しやすい)
鎖骨骨折のリハビリ(保存療法)
- 拘縮を予防しながら、 骨癒合を得る事がポイント
- 保存療法では、鎖骨の運動により骨折部を転位させる力が生じるため注意が必要
- 肩甲骨を固定する
⇒鎖骨の運動を制御できる
- 肩甲骨を固定のもとStoopingエクササイズを行なう
- 前方支持組織(烏口上腕靱帯含む)は、下垂位外旋運動による骨片の転位リスクはない
stooping ex
- 自分の腕の重みにより軟部組織を伸張させるトレーニング
- 立位で行われることもあるが、手術直後ということを考え、リラックスできる肢位として腹臥位が選択されることがある
①ベッド上で腹臥位になり、上肢を床に下垂させる
*防御性収縮が生じないように慎重に誘導する - 目的は、棘上筋と肩峰下滑液包との癒着予防や、上腕骨の大結節が肩峰下に通過できる環境を確保しておくこと
鎖骨骨折におけるstooping ex
- 肩甲骨固定により鎖骨も固定できる
⇒肩甲骨の上方回旋が生じないようにする(下方回旋方向に誘導し固定)
- 心配な場合は2人で行なう(1人が両手で肩甲骨を固定できる)
- 肩甲骨が固定できいれば、 stooping exの体勢(体幹屈曲位)で積極的に上肢に操作を加える
⇒屈曲方向、内旋内転方向(後下方支持組織に対するストレッチ)
鎖骨骨折における肩甲上腕関節外旋運動
- 背臥位
⇒ベッドに肩甲骨を押しつける事が可能
肩甲骨が固定できる - 肩甲上腕関節外旋運動を行なう
⇒前方支持組織のストレッチ
鎖骨骨折におけるリスク管理
- 神経障害
・腕神経叢における神経根は、脊柱管を出た後、鎖骨と第一肋骨の間を通る
・鎖骨骨折に伴ない腕神経叢を損傷してしまう可能性がある
・運動のしにくさやしびれなどの神経障害が生じていないかを確認することが重要
鎖骨骨折におけるリスク管理
- 血行障害
・鎖骨下動脈は、前斜角筋と中斜角筋の間、鎖骨と第1肋骨の間の肋鎖間隙、小胸筋の肩甲骨烏 口突起停止部の後方を走行する
・鎖骨下動脈圧迫で、上肢の血行が悪くなる
⇒腕は白っぽくなり、痛みが生じる
・鎖骨下静脈圧迫で、手・腕は静脈血のもどりが悪くなる
⇒青紫色になる
・疼痛や上肢の浮腫、皮膚色調の確認が重要
鎖骨骨折の手術療法
- 観血的治療法
・骨片が大きく転位している症例に適応
・プレート固定
・キルシュナー (Kirschner) 鋼線などを用いる髄内釘固定 - プレート固定のメリット
⇒強固な固定が得られ、早期より関節可動域訓練が行なえる - 髄内釘固定は保存療法とプレート固定の中間的なイメージ
⇒固定性により早期の運動には注意が必要
鎖骨遠位端骨折の手術療法
- 鎖骨のうち、肩に近い部位の骨折
- 靭帯損傷の有無がポイント
⇒烏口鎖骨靱帯(烏口突起と鎖骨を繋ぐ)
損傷により転位が大きくなる - 鎖骨遠位端は骨幹部より骨癒合しにくい
⇒偽関節(骨癒合できなかった骨同士の間が関節のように動く)に注意
痛みや不安定さが残る - ワイヤーやプレートが選択される
鎖骨骨幹部骨折の手術療法
- 鎖骨遠位端骨折と比較し骨癒合が得られやすい
- 転位の大きさにより変形や短縮が見られる
⇒コスメティックの問題
肩甲骨位置の問題
運動障害(影響は小さい)
- キルシュナー (Kirschner) 鋼線やプレート固定を選択
- キルシュナー (Kirschner) 鋼線は創部は小さいが多少の転位や短縮の可能性あり
- プレート固定は創部大きいが転位や短縮は最小限
鎖骨近位端骨折
鎖骨骨幹部骨折のリハビリ(手術療法)
- 大まかな流れ(病院や主治医の方針により異なる事に注意)
・術後は三角巾で固定する
・術翌日より肩甲上腕関節の運動
*肩関節90°以上の屈曲・外転は避ける
・術後1ヶ月程度で骨癒合順調な場合
⇒肩関節90°以上の屈曲・外転が可能
・骨癒合得られれば荷重可能
鎖骨遠位端骨折のリハビリ(手術療法)
- 大まかな流れ(病院や主治医の方針により異なる事に注意)
・術後は三角巾で固定する
・術翌日より肩甲骨固定のもと肩甲上腕関節の他動運動
*肩関節90°以上の屈曲・外転は避ける
・術後3週程度で骨癒合順調な場合
⇒自動運動を開始する
・骨癒合得られれば荷重可能