腱板断裂術後のリハビリでは、「術後○週だから挙上を始める」「この角度までは安全」と、週数や角度だけで進めてしまうと判断を誤ることがあります。
同じ術後週数でも、断裂の大きさ、修復した腱、組織の状態、修復時の張力、併施術、年齢や合併症によって、守るべき条件が異なるためです。
本記事は、主に新人・若手療法士が腱板修復術後の患者さんを担当するときに、何を確認し、どの反応を見て、どのように段階を進めるかを整理するための教育情報です。
患者さん・ご家族が読む場合は、ここに書かれた週数、角度、運動名をもとに自己判断で運動を追加しないでください。個別の可動域制限、装具期間、荷重制限、入浴や運転などの生活動作は、手術所見、術者指示、施設プロトコル、担当療法士の指導を優先してください。
続きを読む: 腱板断裂術後のリハビリ|週数だけで進めない評価・禁忌・ADL・段階的介入目次
腱板修復術後のリハビリは、一般に「保護」「他動運動」「自動介助・自動運動」「筋力強化」「生活・仕事・スポーツへの復帰」という段階をたどります。
ただし、各段階へ移る時期は一律ではありません。
実際の判断では、次の3点を組み合わせます。
週数は現在地を把握するために使い、進行の可否は修復条件と患者さんの反応を含めて判断します。
「術後○週だから進める」のではなく、「術後○週で、術者指示上も許可され、症状・運動の質・翌日反応が安定しているから、条件を限定して進める」と考えることが重要です。
最初に、「腱板断裂術後」とだけ捉えず、何をどのように修復したのかを確認します。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 修復した腱 | 棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋などで注意する方向が変わる |
| 断裂の大きさ・腱数 | 大断裂、多腱修復では保護を長く設定することがある |
| 組織の状態・修復時の張力 | 修復部に余裕が少ない場合は進行を慎重にすることがある |
| 初回手術か再手術か | 再修復では治癒条件が異なる可能性がある |
| 併施術 | 上腕二頭筋腱固定術、関節唇処置などで追加制限が生じることがある |
| 装具・可動域・荷重の指示 | 外転装具、回旋、挙上、支持動作などの許可範囲を確認する |
| 創部・合併症・既往 | 感染、神経症状、糖尿病、喫煙歴などを含めて経過をみる |
情報が不足している場合は、推測で運動を追加せず、手術記録や術者指示を確認します。
早期リハビリと遅延リハビリを比較したシステマティックレビューやメタアナリシスでは、早期運動により術後早期の可動域が改善する可能性が示されています。
一方で、疼痛、機能、再断裂率、長期成績では大きな差が明確でない研究も多く、プロトコルの内容や断裂サイズによって解釈が変わります。
AAOSの2025年ガイドラインでも、小〜中断裂では早期mobilizationと遅延mobilizationで臨床成績は概ね類似し、早期は短期ROMに有利な一方、大きい断裂では遅延が治癒率に有利な傾向が示されています。
したがって、早期運動を「全例で早く動かすべき」という意味に解釈してはいけません。
特に大断裂、広範囲断裂、多腱修復、肩甲下筋修復、再修復、組織条件が不良な症例では、研究結果をそのまま一般化できません。
米国肩肘療法士協会のコンセンサスでも、組織保護から他動運動、自動運動、筋力強化へ段階的に移る考え方が示されています。重要なのは、特定の週数を全員へ当てはめることではなく、手術条件と回復反応を踏まえて段階づけることです。
施設プロトコルも一様ではありません。Massachusetts General Brighamでは、小〜中断裂と大〜広範囲断裂で別のプロトコルが公開されています。これは「この施設の週数が正解」という意味ではなく、断裂条件によって進め方が変わることを示す一例です。
週数の目安は、必ず施設・術者プロトコルに従います。
一般的には、術後早期は修復部の保護とPROM中心、その後AAROM・AROM、さらに抵抗運動へ段階づけます。ただし、大断裂、広範囲断裂、多腱修復、肩甲下筋修復、再修復では進行を遅らせることがあります。
そのため、週数は「進めてよい根拠」ではなく、「現在どの段階にいる可能性があるかを確認する目安」として扱います。
腱板修復術後では、運動名だけで負荷を判断しないことが重要です。
| 用語 | 意味 | 臨床での注意 |
|---|---|---|
| PROM:他動運動 | 患者さんが肩を能動的に動かさず、外力で関節を動かす | 防御性収縮や体幹代償が入れば、純粋な他動にならない |
| AAROM:自動介助運動 | 患者さんの力に介助を加えて動かす | 介助量が減るほど、修復腱への要求が増える可能性がある |
| AROM:自動運動 | 患者さん自身の筋活動で動かす | 挙上角度だけでなく、肩甲帯代償や疼痛反応を見る |
| 抵抗運動 | 重力や外部抵抗に逆らって筋力を発揮する | 「腕が上がる」ことと、強化を開始できることは別である |
杖運動、滑車、反対側上肢による介助、振り子運動も、やり方によって筋活動が変わります。
たとえば、同じ「振り子運動」でも、体幹の揺れを利用して肩を脱力して行う場合と、肩を意図的に振ろうとする場合では負荷が変わります。名称だけで安全と判断せず、患者さんがどれだけ力を入れているか、痛みや代償が出ていないかを観察します。
この時期は、肩を積極的に動かすことより、禁止されている支持、伸展、急な筋収縮を生活場面で避けられるかが重要です。
特に、ベッドから起きるとき、椅子から立つとき、ズボンを上げるとき、寝返りをするときは、本人が無意識に術側上肢を使いやすい場面です。
PROMでは、許可範囲内であっても、痛みを押して可動域を広げることを目的にしません。
特に術後早期や大断裂・広範囲断裂では、防御性収縮、鋭い痛み、翌日まで残る痛みが出る条件は避けます。終末感を確認する場合も、修復部へストレスをかけるために押し込むのではなく、どの条件で抵抗や痛みが出るかを安全に把握する目的で行います。
数値としての可動域だけを追うと、体幹回旋や肩甲骨の過剰な動きを見落とします。可動域を記録するときは、測定肢位、肩甲帯の固定条件、疼痛や代償も併記します。
自動運動への移行では、「動いたか」よりも、「どの条件なら修復部へ過度な要求をかけずに動けるか」を見ます。
支持を加えると代償が減り、滑らかに動けるのであれば、「筋力がない」と即断せず、重力条件、疼痛、防御、運動制御を分けて考えます。
AAROMからAROMへ移行するときは、いきなり日常生活で自由に使わせるのではなく、条件を限定した練習場面で反応を確認してから、ADLへ広げていきます。
筋力強化は、単に術後週数を迎えたから始めるのではありません。修復部の治癒を保護しつつ、可動域、疼痛、運動制御、ADLでの反応が安定しているかを確認します。
等尺性収縮であっても、最大努力や長時間保持は避けます。開始する場合は、術者から抵抗運動が許可されていることを前提に、低強度、短時間、痛みのない範囲、代償の少ない条件から行います。
特に外旋抵抗、内旋抵抗、外転保持、長レバー挙上は、修復腱や併施術によって負荷の意味が変わります。開始時期と方向を確認してから実施します。
EMG研究は、運動中にどの筋がどの程度活動したかを考える補助になります。しかし、健常者の筋活動量が低い運動だからといって、術後の腱負荷や再断裂リスクが低いと直接証明されるわけではありません。運動選択は、術者指示と患者反応を合わせて決めます。
負荷を上げるときは、抵抗、回数、可動範囲、速度、姿勢を一度に変えません。どの条件に反応したのか分かるように、1つずつ調整します。
肩甲下筋を修復している場合は、外旋や背中へ手を回す動作について、個別の制限が設定されることがあります。
たとえば、過度な外旋、伸展、結帯動作、背部清拭、更衣時の袖抜きなどは、時期によって注意が必要です。数値を推測せず、術者指示を確認します。
肩甲下筋修復では、肩を外へ開く動きだけでなく、日常生活の中で起こる「後ろへ手を回す」「袖を抜く」「背中を洗う」「ズボンや下着を整える」などの動作にも注意します。
小断裂より慎重な保護期間や進行が選択されることがあります。
断裂サイズ、脂肪浸潤、腱の退縮は再断裂リスクと関連するため、一般的な早期運動の結果をそのまま当てはめません。
「小〜中断裂のプロトコルで許可されているから、この患者さんにも同じように行う」と考えるのは危険です。
上腕二頭筋腱固定術などを併施している場合は、肘屈曲や前腕回外に関する制限が加わることがあります。
肩だけのプロトコルで判断せず、併施術の指示を確認します。
年齢、糖尿病、喫煙、組織の状態、再手術などは、治癒条件や合併症リスクに影響する可能性があります。
これらがあるから必ず進行できない、という意味ではありません。しかし、症状が少ないから安全と判断せず、術者指示、創部状態、疼痛、運動の質、翌日反応をより慎重に確認します。
「更衣はしてよい」「入浴はまだ」と動作名だけで分けると、同じ更衣でも負荷が大きく異なります。
ただし、以下の表は、患者さんに一律の許可を出すための表ではありません。術者から許可された範囲内で、療法士が生活動作の負荷を分解して確認するための視点です。実際の可否は、術式、断裂サイズ、併施術、装具、創部状態、疼痛、転倒リスクを含めて判断します。
ADLは次の要素に分解すると考えやすくなります。
これは検証済みの標準分類ではなく、生活動作を観察するための実践的な臨床フレームです。最終判断は術者指示と患者反応に合わせます。
| ADL | 負荷を下げる工夫 | 確認する反応 |
|---|---|---|
| 更衣 | 前開き衣類、ゆとりのある袖、着るときは術側から、脱ぐときは非術側から | 伸展・回旋、急な袖抜き、術側の能動保持 |
| 整容 | 道具を手元に置く、前腕を台に置く、非術側を使う | 挙上保持、反復、肩甲帯挙上 |
| 入浴 | 創部を濡らしてよい時期、防水方法、浴槽可否は術者指示を確認する。滑り止め、洗体道具の位置調整、家族介助を検討する | 転倒、術側支持、背中へ手を回す動作、創部発赤・排液・発熱、入浴後の疼痛増悪 |
| 睡眠 | 術者指示に沿った装具、枕で前腕を支持、術側を下にしない環境を整える | 夜間痛、寝返り、装具のずれ、術側を下にする姿勢 |
| 起立・移乗 | 術側でベッドや手すりを押さない環境設定、非術側支持、座面高調整 | 反射的な荷重、ふらつき時の支持、転倒リスク |
| 家事 | 片手で扱える軽い物から始める。高所作業、重い鍋、洗濯物干し、掃除機操作は時期と指示を確認する | 挙上、重量、反復、急な引っ張り、翌日痛 |
| 仕事 | 職種名ではなく、挙上、重量、反復、振動、長時間保持、急な対応へ分解する | 疲労後の代償、疼痛増悪、作業後から翌日の反応 |
「痛みがあるか」だけでなく、いつ、どの条件で、どれくらい続くかを記録します。
たとえば、「運動中は痛くないが、その夜から夜間痛が増えた」「更衣後から肩前方の痛みが残った」「翌日に自動挙上が前回より低下した」という情報は、進行判断に重要です。
次のような場合は、その場の運動を中止し、緊急度に応じて術者や医療チームへ報告します。
これらは再断裂だけを意味するものではありません。感染、神経血管障害、創部トラブル、全身状態の変化なども含まれるため、原因を自己判断せず、必要な診察につなげます。
このチェックリストは、運動を進めるための許可基準ではなく、術者指示と患者反応を確認し、迷ったときに進めず相談するための確認表です。
術後経過日数と術式を手術記録で確認。術者指示は装具継続、肩関節は許可範囲内の他動運動。安静時痛は軽度、夜間痛は前週比で変化なし。創部の発赤・排液なし。手指の冷感・色調変化・しびれの増悪なし。
仰臥位で前腕を支持すると防御性収縮が減少し、許可範囲内でPROMを実施できた。座位では肩甲帯挙上が増えるため、本日は臥位中心とした。介入後の疼痛増悪なし。更衣では袖を抜く際に術側肩伸展が入りやすいため、前開き衣類と非術側介助を再指導した。翌日の夜間痛、ADL後の疼痛、創部反応を次回確認する。
記録では、「屈曲○度」だけでなく、術者指示、実施条件、症状、代償、介助量、直後・翌日反応を残すと、次の担当者が判断しやすくなります。
手術からの週数は目安になりますが、同じ週数でも、治した腱や断裂の大きさ、手術の内容で進め方が違います。
今日は許可された範囲で、肩を守りながら動かします。運動中だけでなく、今夜や明日の痛みが増えないかも教えてください。
急に強く痛んだ、動かせなくなった、転んで手をついた、創部が赤く腫れた、熱が出た、手が冷たい・しびれるといった変化がある場合は、自己判断で運動を続けず連絡してください。
装具を外す時期、入浴、運転、家事、仕事復帰についても、自己判断ではなく、主治医や担当療法士の指示に合わせて進めましょう。
一律には決められません。
修復した腱、断裂の大きさ、組織の状態、併施術によって異なります。術者指示と施設プロトコルを確認し、症状と運動の質を見ながら進めます。
痛みが少ないことだけでは判断できません。
修復組織の治癒は自覚症状だけでは分からないため、許可範囲を守ります。また、運動中に痛くなくても、夜間や翌日に増悪することがあります。
特に術後早期は、痛みが少なくても修復部が十分に治癒しているとは限らないため、許可されていない挙上、支持、荷重、抵抗運動は避けます。
方法によって肩周囲筋の活動や修復部への要求が変わります。
体幹の揺れを利用し、肩を意図的に動かしすぎないよう指導する必要があります。名称だけで安全と判断しません。術者や担当療法士から許可された方法で行ってください。
拘縮への配慮は必要ですが、保護を省いてよいわけではありません。
早期運動で短期可動域が改善する可能性はある一方、最適な開始時期は修復条件によって異なります。術者と相談しながら、許可範囲で実施します。
自己判断で外さないでください。
装具期間は、断裂サイズ、修復腱、修復時の張力、併施術、術者方針で異なります。外す時期だけでなく、日中、睡眠時、入浴時、運動時の扱いも確認が必要です。
肩の動きだけでなく、創部を濡らしてよい時期、浴槽に入ってよいか、転倒リスク、術側上肢で身体を支えない環境が整っているかを確認します。
創部の発赤、排液、発熱がある場合は、自己判断で入浴を続けず、医療者へ相談してください。
装具が外れているか、痛みや可動域、反応速度、ハンドル操作、急ブレーキ時の安全性、服薬状況などを含めて判断します。
開始時期は術者の許可を優先してください。
仕事名や家事名だけで決めず、挙上、回旋、支持、重量、反復、急な負荷へ分解します。
必要な負荷を練習場面で再現し、症状、運動の質、翌日反応を確認して段階づけます。
腱板断裂術後のリハビリでは、週数は経過を共有する目安であって、進行の許可証ではありません。
手術・修復条件と術者指示を確認し、PROM、AAROM、AROM、抵抗運動を区別します。そのうえで、痛み、創部、運動の質、代償、ADL、翌日反応を見ながら段階を調整します。
ADLも「更衣」「入浴」という名前だけで判断せず、支持、挙上、回旋、伸展、荷重、重量、反復、予測しにくい負荷へ分けて考えると、安全な環境調整や指導につながります。
急な強い痛み、機能低下、転倒、創部異常、神経血管症状がある場合は運動を中止し、必要な診察につなげてください。
本記事は医療従事者向けの教育情報です。個別の可動域制限、装具期間、運動開始時期、ADL許可、運転、仕事復帰、スポーツ復帰の基準は、手術所見、術者指示、施設方針を優先してください。
理学療法ジャーナル Vol.43 No.1
腱板とは、回旋筋腱板(ローテーターカフ)と呼ばれる棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋と4つからなる筋肉群の総称です。
回旋筋腱板は肩関節を動かす際、肩甲上腕関節の関節運動を誘導したり、肩甲上腕関節の安定化に寄与したり、上腕骨頭の前後への偏位を防いだりと、肩関節の安定化に関与しています。
腱板断裂とは、上記で説明した回旋筋腱板のうち、特に棘上筋に多く見られ、40代男性に多いと言われています。
発症の原因は様々で転倒などの外傷、上肢の使用頻度が高い職業、また特別な原因がなく骨から腱板停止部が剥離してしまうこともあるようです。
腱板断裂の病態には完全断裂と不完全断裂に分かれます。
断裂の多い棘上筋は、棘下筋との連結があり、ひとつのユニットとして機能していることがわかってきています。
棘上筋の後部は薄い膜状で、その上に棘下筋の斜走繊維が覆うように走行しています。
斜走繊維の上方部分は腱性部で、棘上筋と密接しています。またその部分は烏口上腕靱帯が挟み込こんでおり、ひとつのユニットとして機能していると考えられています。
棘上筋の筋内腱は大結節前方に停止しているため、棘上筋後部の断裂が起こっても、前方部分が残存していると棘上筋はその働きを保てます。
腱板の停止部分は、上腕骨頭と腱板中枢部からの血行供給における血管の吻合部があり、critical zoneと呼ばれる変性を受けやすい部分となっています。
腱板断裂を誘発するストレスとして、腱板への突き上げ、捻れ、伸張の3つのストレスが関与しています。
突き上げストレスは上腕骨頭が上方に偏位することで腱が肩峰と衝突し損傷するものです。
捻れストレスは上腕骨頭内外旋等の回旋運動により肩峰下で腱が挟み込まれることを言います。
伸張ストレスは上腕骨内外転時に短縮伸張を繰り返すことにより腱が損傷をうけるものを言います。
加齢による腱板停止部の変性に加え、上記のストレスが繰り返し起こることで腱板は損傷されやすくなります。
腱板断裂は約7割が保存療法(非手術)にて症状の軽快が期待できると言われています。
大結節の棘下筋、棘上筋腱付着部は血行に乏しく断裂部の自然回復は困難です。
手術療法には関節鏡視下手術、直視下手術の2つがあります。
関節鏡を用いる場合は手術での傷口が小さく、術後の痛みや負担が小さく、関節可動域の獲得も早期に期待できます。
その一方で筋力や機能回復は直視下手術に比べ劣る傾向にあります。
直視下手術では断裂した腱板の強固な固定が可能で、術後の筋力、機能の回復が良好です。
その一方傷口は関節鏡手術に比べ大きく、術後の合併症を伴う確率が高くなります。
術後は約4週間外転装具にて肩関節外転位に保つことが必要です。
術後約3週間は腱板腱部の再断裂が起きないように、装具にて外転肢位を保つ必要があります。この時期は腱板に負担がかかる肩の自動運動は禁忌になります。
疼痛に関してはVASにて安静時・運動時を確認します。また、術創部の疼痛、術部以外の肩甲帯などの疼痛についても確認します。
この時期は術部周辺組織の癒着予防と浮腫の改善が目的となるため、リハビリの際には自動運動ではなく、他動運動にて実施する必要があります。
注意点としては棘上筋、棘下筋は大結節前方に停止するため、同部位の損傷では軽度内旋位で肩甲骨面上での操作が必要になります(外旋位では腱部が伸張位となる)。
その際防御性収縮にも注意する必要があります。
装具装着肢位が不良肢位になっていないかも確認し、肩甲骨周囲筋、上腕二頭筋などの過剰収縮の有無も確認します。
この時期では術部の炎症も落ち着き、疼痛の軽減も見られてきます。
リハビリでは軽度の自動運動を進めていく事になります。
その際、肩関節下垂位になると、縫合腱部分に伸張ストレスが過度にかかるため、自動運動では肩甲骨面30°位から上腕骨内旋位での軽度肩外転自他動運動、外旋位での90°位からの外転運動など、疼痛に気を配りながら運動を実施していきます。
背臥位にて両手を組み、肩甲骨面での自動介助挙上運動も行います。
その際、大胸筋、三角筋、上腕二頭筋などの過剰収縮により、肩甲帯挙上・前方突出、後退・内転が過剰に見られる場合、疼痛が生じやすくなります。
また座位にてテーブルサンディングを行うことも有効です。その際疼痛に注意しながら、動かす範囲を決定していきます。
背臥位にて90°以上自動挙上可能になれば、椅子座位での挙上練習を開始します。
疼痛の有無、部位、肩甲骨の動きなどを確認しながら、背臥位と椅子座位での自動関節可動域を確認し、他動関節可動域と比較します。
7週以降は積極的に自動挙上運動を開始していきますが、腱板筋への過負荷となる動作は避けるようにします。
長時間のデスクワーク、上肢挙上位での作業が長時間に及ぶと疼痛が長引くことも考えられます。
肩甲上腕リズムも確認しながら、リハビリを進めていくことが重要になります。
各時期におけるプログラムはあくまで参考であるため、医師との連携をとり、状態に応じてリハビリを進めていくことが重要になります。
新鮮死体を使用した生体力学的研究によると、棘下筋の3/5以上の断裂により外転トルクは有意に減少すると言われています。
また棘上筋のみの断裂では肩挙上は可能ですが、肩甲下筋、棘下筋、小円筋から成るtransverse force coupleの破綻があると、三角筋の筋力を3倍にしても肩挙上が行えなかったとの報告もあります。
腱板損傷例の肩甲骨・肩甲上腕関節の動作解析によると、肩甲骨後傾方向への変化量が少なく、肩峰下腔の狭小化があり、特に外転90〜120°で最も狭小化したとの報告があります。
これは、腱板機能不全や筋のインバランスによるものと考えられています。
一方、肩甲骨の後傾は術後の疼痛には関与せず、肩挙上時の肩甲骨外旋の変化量が疼痛に関与していたとの報告もあります。
また、疼痛のある例では下方関節包が有意に小さかったとの報告もあります。
そのため、手術後の挙上位の保持、他動外転運動が重要になってきます。
腱板断裂例をDe Orio & Cofield分類にしたがって4群(massive tear:5㎝以上、large tear:3㎝から5㎝未満、moderate-sized tear:1㎝から3㎝未満、small tear:1㎝以下)に分類し、各群の肩甲胸郭関節の動きを健常人と比較検討した結果、挙上30〜60°間ではmassive tear群のみ健常人より有意に動きが大きかった。
しかし、挙上90〜120°間では有意差を認めなかった。
理学療法ジャーナル Vol.42 No.10 P849
とあります。
また、腱板断裂術後の肩甲上腕リズムについて
腱板断裂術後1年の患者における肩甲胸郭関節の動きは、small tearでは健常者と有意差がなかったが、moderate-sized tear以上の断裂では健常者より有意に大きかった。
すなわち、moderate-sized tear以上の断裂では、手術をしても、術後1年では肩甲胸郭関節の動きは正常には回復していないことを示していた。
理学療法ジャーナル Vol.42 No.10 P849
とあり、このことからも、肩甲上腕リズムの再教育がリハビリでの重要事項になることが考えられます。
腱板が修復されても、腱板機能がすぐに回復することはありません。
そのため、早期から正常な肩甲上腕リズムを獲得することは困難です。
大まかな治療方針としては、腱板機能が回復するまでは外在筋の過剰収縮を防ぎながら、腱板筋への運動負荷の調節を行いながら動作のフィードバックを行う事が大切になります。
View Comments
こんにちは。
拝読させていただきました。
「肩甲骨の後傾は術後の疼痛には関与せず、肩挙上時の肩甲骨外旋の変化量が疼痛に関与していたとの報告もあります。」
の原著を教えていただけないでしょうか?
宜しくお願い致します。