CO-OPアプローチとは?Goal–Plan–Do–CheckをADL練習に活かす方法

CO-OPアプローチは、本人が選んだ意味のある活動について、Goal–Plan–Do–Check、動的遂行分析、Guided Discoveryを用い、本人自身が問題と解決方法を発見できるよう支援する、作業遂行中心のアプローチです。

単に療法士が正しい方法を教えるのではなく、本人が方法を考え、実際に試し、結果を確認し、必要に応じてPlanを修正する過程を重視します。

ただし、Goal–Plan–Do–Checkを使ったり、患者さんへ質問したりするだけで、正式なCO-OPアプローチになるわけではありません。

CO-OPには、本人が選ぶ作業目標、動的遂行分析、認知方略、Guided Discovery、Enabling Principles、家族・重要他者の関与、構造化された介入形式という複数の構成要素があります。

この記事では、CO-OPアプローチの基本構造と、Goal–Plan–Do–Check、動的遂行分析、Guided DiscoveryをADL練習へ活かすための考え方を、リハビリテーション専門職向けに解説します。

※本記事は、正式なCO-OP研修や実施マニュアルに代わるものではありません。CO-OPの構成要素を理解し、通常のADL練習を見直すための臨床解説です。正式なCO-OPとして実践するには、動的遂行分析、認知方略、Guided Discovery、Enabling Principlesなどを体系的に学ぶ必要があります。公式の無料入門コースも、実践能力を獲得する研修ではなく、基本概念を理解するためのものと位置づけられています。

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目次

CO-OPアプローチとは

CO-OPは、Cognitive Orientation to daily Occupational Performanceの略称です。

本人が必要としている、またはできるようになりたい日常活動を目標に設定し、実際の活動遂行を観察しながら、本人と療法士が一緒に解決方法を探します。

CO-OPは、発達性協調運動症のある子どもを対象として開発されました。その後、脳卒中、外傷性脳損傷、脳性麻痺、パーキンソン病、高齢者など、対象を広げて研究・応用されています。

CO-OPで重視されるのは、「筋力を上げる」「注意力を改善する」といった心身機能だけではありません。

本人にとって意味のある、具体的な作業遂行を目標にします。

心身機能を中心とした目標の例

  • 下肢筋力を改善する
  • バランス能力を改善する
  • 上肢機能を改善する
  • 注意力を改善する
  • 持久力を高める

作業遂行を中心とした目標の例

  • 病棟トイレで安全に下衣を上げ下げする
  • 左袖を自分で確認して上着を着る
  • 杖を使って病室から食堂まで歩く
  • 必要な物を選んで買い物をする
  • 電話を使って診察を予約する

心身機能への介入が不要という意味ではありません。

まず本人が実現したい活動を明確にし、その活動を成功させるために必要な方法や条件を検討するのがCO-OPの基本です。


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CO-OPアプローチの4つの目的

CO-OPには、主に次の4つの目的があります。

  1. 本人が選んだ活動技能を獲得する
  2. 問題解決に使える認知方略を身につける
  3. 習得した技能を別の環境や条件でも使えるようにする
  4. 学習した問題解決方法を、新しい活動へ転移する

公式資料では、3番をgeneralization、4番をtransferとして区別しています。

汎化(generalization)

練習した技能を、別の場所や条件でも使えることです。

たとえば、リハビリ室で練習した車椅子移乗を、病棟トイレや自宅でも行えるようになることです。

転移(transfer)

ある活動で学んだ問題解決方略を、練習していない新しい活動にも使うことです。

たとえば、トイレ移乗で身につけた「動き始める前に環境を確認する」という方略を、ベッド移乗や洗面、更衣にも使うことです。

一つの場所で動作が成功しただけでは、汎化や転移が生じたとは判断できません。

場所、物品、時間帯、支援者などの条件を変え、同じ技能や方略を再利用できるかを確認する必要があります。


CO-OPを構成する7つの要素

CO-OPは、Goal–Plan–Do–Checkだけで構成されるものではありません。

公式には、次の7つの主要な構成要素が示されています。

構成要素内容
本人が選ぶ作業目標本人にとって重要で、達成したい活動を目標にする
動的遂行分析実際の遂行を観察し、遂行上の破綻を特定して優先順位をつける
認知方略の使用Goal–Plan–Do–Checkと、個人・活動・状況に合った個別方略を使用する
Guided Discovery答えを一方的に与えず、質問やヒントで本人の発見を支援する
Enabling Principles学習、意欲、主体性、自立、汎化・転移を促す関わりを行う
家族・重要他者の関与生活場面での方略使用と汎化・転移を支援する
構造化された介入形式目標設定、ベースライン評価、介入、宿題、再評価を計画的に行う

伝統的な形式では、介入前に3つの目標を設定してベースラインを評価し、初回にGoal–Plan–Do–Checkを導入します。

その後のセッションでは、Goal–Plan–Do–Check、動的遂行分析、Guided Discovery、Enabling Principlesを組み合わせ、本人に合った個別方略を発見します。

公式資料では、伝統的な形式は約45~60分の個別介入を10回行う構成とされていますが、対象者や提供方法に応じて、回数、集団形式、遠隔介入などの変更も行われています。

したがって、

目標を決めて、計画して、実行して、振り返ったからCO-OPを実施した

とは単純には言えません。

Goal–Plan–Do–Checkを、動的遂行分析、Guided Discovery、個別方略、汎化・転移の支援と組み合わせる必要があります。


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Goal–Plan–Do–Checkとは

Goal–Plan–Do–Checkは、CO-OPで用いられる全般的認知方略です。

特定の動作手順ではなく、さまざまな活動上の問題へ応用できる問題解決の枠組みです。

Goal:何をしたいか
Plan:どのように行うか
Do:実際に行う
Check:結果を確認する


Goal:何をしたいか

最初に、本人が何をできるようになりたいのかを明確にします。

曖昧な目標

  • トイレを頑張る
  • 更衣を良くする
  • 歩けるようになる
  • 手を使えるようになる

具体的な目標

  • 病棟トイレで下衣を安全に上げ下げする
  • 左袖を自分で確認して上着を着る
  • 杖を使い、病室から食堂まで歩く
  • 麻痺側上肢で衣服を押さえながらボタンを留める

目標は、本人の希望と生活上の必要性を踏まえて決めます。

療法士だけが課題を決めると、本人が問題解決へ主体的に参加しにくくなります。

本人が目標を具体化しにくい場合には、写真、活動カード、実際の生活場面、家族からの情報などを使い、本人が選びやすい形へ調整します。


Plan:どのように行うか

次に、Goalを達成するための方法を考えます。

Planは、決められた手順を暗唱させることではありません。

  • どの順番で行うか
  • どこを確認するか
  • どの姿勢を取るか
  • 何を目印にするか
  • どの道具を使うか
  • 疲れた場合にどうするか
  • 失敗したときにどう修正するか

を具体化します。

たとえば、トイレでの下衣操作中にバランスを崩す場合、Planには次のような候補があります。

  • 立つ前に足の位置を確認する
  • 片手を手すりに残す
  • 下衣を左右交互に少しずつ動かす
  • 疲れた場合はいったん座る
  • 必要な物品を手の届く位置へ置く

重要なのは、療法士が最初から唯一の正解を与えることではありません。

本人と一緒に「何を変えると成功しやすくなるか」を考え、本人が実行できるPlanへ落とし込みます。


Do:Planを実際に試す

Doでは、考えたPlanを実際の活動で試します。

療法士は、成功・失敗だけではなく、次の点を観察します。

  • Planを覚えていたか
  • Planどおりに開始できたか
  • どの部分で遂行が崩れたか
  • 本人が問題に気づいたか
  • どの程度の手がかりで気づいたか
  • 途中でPlanを修正できたか
  • 疲労、痛み、環境条件によって遂行が変わったか

Planどおりにできなかった場合も、すぐに「理解できていない」と判断してはいけません。

  • Planが複雑すぎる
  • 言葉では説明できても実行できない
  • 身体能力とPlanが合っていない
  • 環境条件が変わった
  • 疲労や疼痛が強い
  • 注意や記憶への負荷が高い

などの可能性を検討します。


Check:結果を確認する

Checkでは、単に「できましたか」と尋ねるだけでは不十分です。

次の点を本人と確認します。

  • Goalは達成できたか
  • Planは実行できたか
  • どの部分がうまくいったか
  • どこで困ったか
  • 困った原因は何だったか
  • 同じPlanを次回も使うか
  • Planのどこを変えるか
  • 別の活動や場所でも使えそうか

Checkの目的は、失敗を反省させることではありません。

Planのどの部分を変えれば、次は成功しやすくなるか

を考えるための情報を得ることです。

「できなかった」という評価で終わらせず、次のPlanへつなげます。


動的遂行分析とは

動的遂行分析(Dynamic Performance Analysis:DPA)は、実際の活動を観察し、どの部分でどのような遂行上の破綻が生じているかを特定する観察方法です。

遂行上の破綻を明確にしたうえで、どの問題を優先して扱うかを検討し、技能獲得や目標達成に必要な方略を考えます。

ADLで観察される遂行上の破綻の例

  • 車椅子を止めてもブレーキを確認せずに立ち上がる
  • 下衣を上げる際に手すりから両手を離す
  • 左袖を通した後、右袖を探せずに動作が止まる
  • 洗面用品を取るたびに手順が中断する
  • 予定外の出来事が起こると、元の工程へ戻れない
  • 疲労すると、確認せずに次の動作へ進む

DPAでは、「注意障害がある」「筋力が弱い」と最初から原因を決めつけず、まず実際の遂行がどのように崩れているかを具体化します。

ただし、DPAは心身機能評価を否定するものではありません。

臨床では、遂行上の問題を具体化した後、その問題に関係する可能性がある以下の要因を追加評価します。

  • 筋力
  • 関節可動域
  • 疼痛
  • 感覚障害
  • バランス
  • 視空間認知
  • 失行
  • 注意・記憶
  • 言語理解
  • 環境条件
  • 補助具や物品の配置

DPAは、心身機能評価と対立するものではなく、何を追加評価すべきかを作業遂行から絞り込むための視点として使います。


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DPAでは「最初の失敗」だけを探すのではない

遂行の前半に起きた小さな破綻が、その後の大きな失敗につながることがあります。

そのため、時系列上どこから遂行が崩れ始めたかを確認することは重要です。

しかし、DPAは必ず「最初に起きた破綻だけ」を介入対象にする方法ではありません。

次の要素を踏まえ、優先する問題を決めます。

  • 本人のGoalとの関係
  • 安全性
  • その破綻が後の工程へ及ぼす影響
  • 本人が気づけるか
  • 方略によって修正できるか
  • 介入による変化を評価しやすいか
  • 家庭や病棟での重要性

たとえば、最初に軽い手順停滞があっても、後半の支持手の離脱が転倒につながるなら、安全上は支持手の問題を優先する場合があります。

一方、後半の下衣操作が失敗していても、原因が前半の車椅子位置や足部位置にあるなら、その環境設定を先に扱う必要があります。

DPAで整理する視点

  1. 本人のGoalは何か
  2. どの部分は成功しているか
  3. どこで遂行上の破綻が起きているか
  4. 破綻の直前と直後に何が起きているか
  5. 本人は問題に気づいているか
  6. どの程度の手がかりで修正できるか
  7. どの問題を優先して扱うか
  8. 条件を変えると遂行はどう変わるか

Guided Discoveryとは

Guided Discoveryは、療法士が答えを一方的に教えるのではなく、質問、ヒント、手がかり、環境設定、フィードバックを使い、本人が遂行上の問題と解決方法を発見できるように導く関わりです。

日本語では、「発見を導く関わり」「導かれた発見」などと表現できます。

Guided Discoveryの目的は、患者さんを困らせることでも、正解が出るまで質問し続けることでもありません。

本人が、

  • 何が問題だったか
  • 何を変えればよいか
  • どの方法が自分に合っていたか
  • 別の場面でも使えそうか

を考えられるように支援します。

公式資料では、Guided Discoveryの原則として次の4点が示されています。

  1. 一度に一つの問題を扱う
  2. すぐに答えを伝える前に尋ねる
  3. 療法士が身体を動かして修正するだけでなく、本人の試行を支える
  4. 本人が問題を理解しやすい形にする

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Guided Discoveryは「絶対に教えない方法」ではない

「Ask, don’t tell」という原則だけを見ると、療法士は答えを教えてはいけないように感じるかもしれません。

しかし、CO-OPのEnabling Principlesには、必要に応じて以下の教育手段を使うことが含まれています。

  • 直接教授
  • モデリング
  • 強化
  • プロンプト
  • シェイピング
  • フェイディング
  • チェイニング

つまり、Guided Discoveryと直接教授は完全な二者択一ではありません。

臨床では、本人の能力、課題難易度、安全性、学習段階に応じて使い分けます。

関わり方の段階

  1. 本人が自分で発見できるよう待つ
  2. 問いかける
  3. 問題となる範囲を限定する
  4. 選択肢を提示する
  5. 視覚的な手がかりや実演を用いる
  6. 必要な方法を直接教える
  7. 危険がある場合は即時に制止・介助する

重要なのは、「療法士が答えを言わないこと」ではありません。

本人が参加できる範囲では問題解決へ参加してもらい、必要以上に療法士依存にしないこと

です。


直接指示とGuided Discoveryの違い

安全上の注意
以下は、転倒、誤嚥、転落、脱臼などの重大な危険が切迫しておらず、療法士が安全を確保できる条件での声かけ例です。実際に膝折れが起きている、姿勢が崩れている、支持物から手が離れて転倒が予想される場合には、質問より先に身体支持、直接指示、動作中止を行います。

場面直接指示Guided Discovery
ブレーキを確認していない「ブレーキをかけてください」「立つ前に確認することはありますか?」
足位置が不適切「右足を後ろへ引いてください」「今の足の位置で立ちやすそうですか?」
左袖を見落とした「左袖を見てください」「まだ確認していない場所はありますか?」
手順が止まった「次はズボンを上げます」「Goalに近づくための次の工程は何ですか?」
方法がうまくいかなかった「次はこの方法で行いましょう」「Planのどこを変えると、やりやすくなりそうですか?」
安全に支持できる模擬場面で下衣操作を検討する「片手で手すりを持ってください」「安定して行うには、どこを支えにするとよさそうですか?」

直接指示は、その場で正しい動作を起こしやすいという利点があります。

一方で、療法士の指示がなくなると、同じ方法を再現できない場合があります。

Guided Discoveryでは、本人が問題解決へ参加します。ただし、質問を理解できない、問題に気づけない、作業記憶への負荷が高すぎる場合は、質問だけでは遂行が成立しません。

その場合は、問いかけを続けるのではなく、選択肢、視覚情報、実演、直接教授などへ切り替えます。


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Guided Discoveryで使える具体的な問いかけ

質問は、抽象的であればよいわけではありません。

「どうすればうまくいきますか?」だけでは、考える範囲が広すぎて答えられない場合があります。

本人の理解力と遂行状況に応じて、質問の範囲を調整します。

Goalを明確にする問い

  • 「今日は何ができるようになりたいですか?」
  • 「この動作のどこを一人で行いたいですか?」
  • 「退院後、どの場面で困りそうですか?」
  • 「今日は安全と速さのどちらを優先しますか?」

Planを考える問い

  • 「始める前に確認することは何ですか?」
  • 「前回うまくいった方法は何でしたか?」
  • 「どの順番なら行いやすそうですか?」
  • 「道具の位置をどうすると使いやすそうですか?」
  • 「二つの方法なら、どちらを試しますか?」

Doの途中で使う問い

安全が確保されている場面で、必要に応じて使用します。

  • 「今の方法はPlanどおりですか?」
  • 「どこまでできていますか?」
  • 「困っているのはどの部分ですか?」
  • 「いったん止まって確認する必要はありますか?」
  • 「次に確認する場所はどこですか?」

Checkで使う問い

  • 「Planはうまく働きましたか?」
  • 「一番うまくいった部分はどこですか?」
  • 「予定と違った部分はどこですか?」
  • 「次に変えるなら何を変えますか?」
  • 「この方法は別の場所でも使えそうですか?」

問いかけの難易度を調整する

自由回答が難しい場合は、質問を段階づけます。

自由回答

「どうすれば安定して下衣を上げられそうですか?」

範囲を限定する

「手の使い方と足の位置では、どちらを変えるとよさそうですか?」

選択肢を提示する

「片手を手すりに残す方法と、いったん座る方法では、どちらを試しますか?」

視覚情報を使う

写真や動画を見せて、

「二つの方法で違うところはどこですか?」

と確認します。

質問に答えられないことを、すぐに意欲や病識の問題と判断してはいけません。

  • 質問が抽象的すぎないか
  • 言語理解が難しくないか
  • 記憶への負荷が高くないか
  • 疲労や疼痛がないか
  • 選択肢が多すぎないか
  • 活動自体が難しすぎないか

を確認します。


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CO-OPの構成要素を参考にADL練習を整理する6ステップ

以下は、正式なCO-OPプロトコルの要約ではありません。Goal–Plan–Do–Check、動的遂行分析、Guided Discoveryの考え方を、通常のADL練習へ取り入れやすいように整理した臨床フローです。

ステップ1:本人が重要と感じるADL目標を決める

療法士側の課題だけでなく、本人が「できるようになりたい」と感じる活動を具体化します。

目標を選べない場合は、写真、生活歴、家族からの情報、実際の生活場面を用いて選択を支援します。

ステップ2:実際のADL遂行を観察する

可能な範囲で、実際の物品、環境、動作順序、時間帯を用いて観察します。

模擬課題で成功しても、実際の生活環境では遂行が変わる可能性があります。

ステップ3:遂行上の破綻を具体化し、優先順位を決める

どこで何が起きているかを、観察できる行動として記述します。

そのうえで、安全性、本人のGoal、後続工程への影響、修正可能性を踏まえ、優先して扱う問題を決めます。

ステップ4:Goal–Plan–Do–Checkを用いる

Goalを確認し、Planを一緒に考え、実際に試し、結果を振り返ります。

Planがうまくいかなかった場合は、本人の能力だけでなく、Planそのものや環境条件も見直します。

ステップ5:個別方略を明確にする

有効だった方法を、本人が再利用しやすい短い言葉にします。

  • 「立つ前に左右を確認する」
  • 「一つ終わったら次を見る」
  • 「片手は支えに残す」
  • 「疲れる前に座る」
  • 「左から順番に探す」

方略は、本人、Goal、課題、環境に合わせて決めます。

ステップ6:条件を変えて再評価する

同じ療法士、同じ場所、同じ物品でできただけでは、生活への汎化・転移が生じたとは判断できません。

  • 別のトイレ
  • 別の時間帯
  • 異なる衣服
  • 病棟スタッフとの実施
  • 家族がいる場面
  • 疲労がある時間帯
  • 自宅に近い環境

へ少しずつ条件を広げ、同じ技能や方略を使えるか確認します。


実践例:トイレでの下衣操作

Goal

「病棟トイレで、転ばずに自分でズボンを上げたい」

動的遂行分析

実際の動作を観察すると、立ち上がりは可能でした。

しかし、下衣を両手で一度に上げようとして手すりから両手を離し、後方へバランスを崩しました。

この場面で確認された遂行上の破綻は、

下衣を上げる際に、支持物から両手を離して姿勢が不安定になる

ことです。

実際に転倒が予想される場合は、療法士が身体を支持し、動作を中止します。

安全を確保した後、より安全な模擬場面や十分な介助下でPlanを検討します。

Planを考える

療法士が、

「安定してズボンを上げるには、手をどう使うとよさそうですか?」

と尋ねます。

本人が答えられない場合は、

「片手を手すりに残す方法と、途中で座る方法では、どちらを試しますか?」

と選択肢を提示します。

本人は、

「片手を手すりに残し、反対の手で少しずつ上げる」

というPlanを選びました。

Do

療法士が転倒を防げる位置で身体を支持できるようにし、Planを試します。

途中で危険が生じた場合は、発見を待たずに動作を中止します。

Check

終了後に、

  • 「Planどおりにできましたか?」
  • 「どの部分が安定していましたか?」
  • 「反対側はどのように上げますか?」
  • 「自宅のトイレでもこの方法は使えそうですか?」

と確認します。

次回は、衣服や環境、支援者を変え、同じ方略を使えるか再評価します。


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CO-OPを取り入れやすい患者

CO-OPは、診断名だけで適応を決めるものではありません。

公式資料では、本人が次の能力を持つことが前提として挙げられています。

  • 学びたい活動や改善したい活動を選べる
  • 自分の遂行について療法士と話し合える程度の言語能力がある
  • セッション間で学習し、経験を保持できる認知能力がある

認知障害があること自体が一律の除外条件ではありませんが、問題解決から学び、次の機会に活かせる能力が必要です。

臨床で確認する項目

  • 本人にとって意味のあるGoalを選べるか
  • 短い説明や問いかけを理解できるか
  • Planと結果を比較できるか
  • 前回の経験を次回まで保持できるか
  • ヒントがあれば方法を修正できるか
  • 問題解決を繰り返すことが強い苦痛にならないか
  • 家族やスタッフと方略を共有できるか

調整または別の方法を検討する患者

以下の調整例は、CO-OPの正式手順だけに基づくものではありません。

一般的な認知リハビリテーション、コミュニケーション支援、学習支援を組み合わせた臨床的な調整例です。

失語や言語理解障害がある

  • 質問を短くする
  • 一度に一つだけ伝える
  • 写真、実演、ジェスチャーを使う
  • 自由回答ではなく二択にする

ただし、本人の遂行について話し合うこと自体が難しい場合、正式なCO-OPとしての適応は慎重に判断します。

記憶障害が強い

  • Goal–Plan–Do–Checkを紙に示す
  • Planを写真やチェック表にする
  • 毎回同じ短い言葉を使う
  • 前回の記録を開始前に確認する

セッション間で学習内容を保持できない場合は、エラーレス学習、外的補助具、環境固定、直接教授などを優先することもあります。

注意が持続しにくい

  • 一度に扱う問題を一つに絞る
  • 工程数を減らす
  • 質問数を減らす
  • 周囲の刺激を整理する
  • 短時間の練習にする

アウェアネスが低い

  • 本人の自己評価だけで進めない
  • 実際の結果と予測を比較する
  • 写真や動画を慎重に使う
  • 本人が受け入れられる範囲でフィードバックする

疲労や不安が強い

  • 時間帯を変える
  • 課題量を減らす
  • 成功しやすい条件から始める
  • Planを単純化する
  • 休憩方法をPlanに含める

重度の遂行機能障害がある

自由回答を求め続けず、選択肢、モデリング、段階的な手がかり、直接教授を使います。

CO-OP形式に固執せず、環境調整、外的補助具、介助方法の統一などを組み合わせます。


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Guided Discoveryを優先してはいけない場面

CO-OPに固有の禁忌というより、試行錯誤を許容できない状況では、Guided Discoveryより安全確保を優先します。

  • 膝折れや転倒が起きている
  • 誤嚥や窒息の危険がある
  • 脱臼や再骨折の危険がある
  • ベッドや階段から転落する危険がある
  • 点滴、ドレーン、酸素チューブなどが抜去される危険がある
  • 医師からの荷重・動作制限に抵触する
  • 意識状態や循環・呼吸状態が不安定
  • 強い疼痛、めまい、失神前症状がある

優先順位

  1. 身体・生命の安全を確保する
  2. 動作を中止または直接介助する
  3. 医学的状態を確認する
  4. 必要に応じて医師・看護師へ相談する
  5. 安全な条件に戻して振り返る
  6. 次のPlanを検討する

本人主体の問題解決と、安全確保を対立させてはいけません。


CO-OPの視点を取り入れた記録

「見守りで可能」「声かけで実施」だけでは、本人が何を学び、どの程度自分で問題を解決できたかが分かりません。

次の点を記録します。

  • 本人が設定したGoal
  • 観察された遂行上の破綻
  • 優先して扱った問題
  • 本人の気づきの有無
  • 必要だった手がかり
  • 本人が選択したPlan
  • Planの実行状況
  • 自己修正の有無
  • Checkでの本人の認識
  • 別場面での再現状況
  • 次回変更する条件

記録例

Goalは「病棟トイレで下衣を自力で上げる」。立位で両手を手すりから離し、後方動揺を認めたため身体支持を行った。安全確保後、支持手の使い方を優先課題として検討した。「安定して行うには手をどう使いますか」との問いには回答困難。片手支持と座位実施の二択を提示すると、片手支持を選択した。片手を手すりに残し、反対の手で下衣を左右交互に上げるPlanで再実施し、軽度動揺で完遂した。Checkでは「両手を離すと危ないため、片手ずつ行う」と説明できた。次回は異なる下衣と病棟スタッフ介入時に、同方略を再現できるか確認する。


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CO-OPアプローチのエビデンス

CO-OPを、すべての患者やADLに確実な効果がある方法として説明するのは不正確です。

CO-OPの研究領域は広がっていますが、対象、病期、研究デザイン、アウトカムにはばらつきがあります。2016年のスコーピングレビューは、CO-OPに関する研究の範囲と特徴を整理したものであり、それ自体が有効性を確定するレビューではありません。

脳卒中に対する研究

亜急性期脳卒中者を対象とした探索的ランダム化比較試験では、CO-OP群で本人が選んだ活動の遂行改善や、未訓練活動への転移が示唆されました。

ただし、探索的研究であり、結果を確定するには、より大規模な研究が必要とされています。

2024年の脳卒中成人を対象としたシステマティックレビューでは、CO-OPが作業遂行へ良い影響を与える可能性が示された一方、研究数と方法論上の限界から、確定的な結論には至れないとされています。

慢性期後天性脳損傷に対する研究

2025年に公表されたランダム化比較試験では、慢性期の後天性脳損傷者87人が、CO-OP群45人と通常作業療法群42人に割り付けられました。

介入直後には、訓練した目標と未訓練目標のCOPM遂行度・満足度で、CO-OP群の得点が通常作業療法群より有意に高くなりました。

一方、3か月後も群間差が維持されたのは訓練目標の遂行度と満足度であり、未訓練目標の群間差は有意ではありませんでした。また、遂行機能や地域統合に関する尺度では、明確な群間差はほとんど認められませんでした。

この結果から、CO-OPは本人が選んだ活動の遂行と満足度を支援する可能性がありますが、

  • すべての効果が長期維持される
  • 遂行機能全般が改善する
  • 地域生活への参加が一律に改善する
  • 未訓練活動への転移が長期的に維持される

とまでは言えません。

現時点で妥当なまとめ

CO-OPでは、本人が選んだ意味のある活動の遂行改善や、未訓練活動への転移を示した研究があります。一方、対象、病期、研究数、介入方法には限界があり、すべての患者や活動に一律の効果があるとは言えません。Goal、認知・言語能力、安全性、介入忠実度、評価時期を踏まえて適用と効果を判断する必要があります。


CO-OPアプローチとMCアプローチの違い

CO-OPアプローチとマルチコンテキストアプローチは、どちらも認知方略や問題解決、汎化・転移を重視しますが、同じアプローチではありません。

CO-OPアプローチ

  • 本人が選んだ作業目標を中心にする
  • Goal–Plan–Do–Checkを全般的認知方略として用いる
  • 動的遂行分析で遂行上の破綻を特定する
  • Guided Discoveryで個別方略の発見を支援する
  • 技能獲得と問題解決方略の使用を扱う

マルチコンテキストアプローチ

  • 自己モニタリングやメタ認知方略を重視する
  • 複数の課題や環境で方略を使う
  • 活動前の予測、活動中の気づき、自己修正を扱う
  • 方略を異なる文脈へ汎化することを重視する

両者には重なる部分がありますが、CO-OPにはGoal–Plan–Do–Check、動的遂行分析、本人が選ぶ作業目標、Guided Discoveryなどの固有の構造があります。


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よくある質問

CO-OPは作業療法士だけが使うものですか?

CO-OPは作業療法を背景に開発され、体系的な教育や研究も主に作業療法領域で行われています。

一方、Goal–Plan–Do–Checkや、本人主体の問題解決、方略の汎化・転移という考え方は、PT、ST、看護師などとのチーム支援にも参考になります。

ただし、CO-OPという正式なアプローチとして実施する場合は、7つの構成要素、動的遂行分析、Guided Discovery、Enabling Principles、介入形式を体系的に学ぶ必要があります。


質問をすればGuided Discoveryになりますか?

なりません。

Guided Discoveryでは、療法士が実際の遂行を分析したうえで、本人が問題と解決方法を発見できるよう、質問、ヒント、環境、フィードバックを調整します。

目的のない質問を繰り返すと、患者さんの認知負荷を高めるだけです。


答えを教えてはいけませんか?

教えてよい場面もあります。

  • 本人が質問を理解できない
  • 基本的な方法を知らない
  • 課題が難しすぎる
  • 安全性が低い
  • 不安や混乱が強い

場合には、直接教授、モデリング、選択肢、身体介助が必要です。

療法士が常に答えを出し続けるのではなく、本人が問題解決へ参加できる部分を見極めることが重要です。


認知機能が低い患者には使えませんか?

認知障害があるだけで一律に除外されるわけではありません。

ただし、本人がGoalを選べるか、Planと結果を比較できるか、経験を次回まで保持できるかを確認する必要があります。

これらが難しい場合は、CO-OP形式に固執せず、エラーレス学習、外的補助具、直接教授、環境調整などを優先します。


Goal–Plan–Do–Checkは毎回すべて言語化する必要がありますか?

必ずしも、すべてを長い文章で説明させる必要はありません。

最初は療法士が枠組みを示し、紙、写真、チェック表などで支援します。

重要なのは、言葉を暗唱することではなく、

  • 何をするか
  • どのようにするか
  • 実際にどうだったか
  • 次に何を変えるか

という問題解決の流れを活動に使えることです。


CO-OPは何回行えばよいですか?

伝統的な形式では、約45~60分の個別介入を10回行う構成が示されています。

ただし、対象者、病期、提供場所、集団形式、遠隔介入などに応じた変更も行われています。

「10回行えば効果が出る」という意味ではありません。

Goalの達成状況、方略使用、汎化・転移、本人の負担、安全性を継続的に評価します。


まとめ

CO-OPアプローチは、療法士が正しい動作を一方的に教えるだけでなく、本人が活動上の問題を見つけ、方法を考え、試し、結果を振り返ることを支援する作業遂行中心のアプローチです。

中心となる全般的認知方略は、

Goal → Plan → Do → Check

です。

ただし、Goal–Plan–Do–Checkを形式的に使うだけでは、正式なCO-OPにはなりません。

CO-OPでは、

  • 本人にとって重要な活動をGoalにする
  • 実際の遂行を動的に分析する
  • 遂行上の破綻を具体化して優先順位を決める
  • Guided Discoveryで本人の発見を支援する
  • 個人・活動・環境に合った方略を見つける
  • 家族やスタッフと支援方法を共有する
  • 別の環境や活動で汎化・転移を確認する

ことが重要です。

また、Guided Discoveryは「答えを絶対に教えない方法」ではありません。

質問、ヒント、選択肢、実演、直接教授、環境調整を、本人の能力と安全性に合わせて使い分けます。

転倒、誤嚥、脱臼、転落などの危険がある場面では、本人の発見を待たず、安全確保を優先します。

CO-OPをADL練習へ取り入れる際には、療法士が話す量を減らすこと自体を目標にするのではなく、

本人が問題解決に参加できる範囲を、適切な支援のもとで少しずつ広げる

ことが重要です。


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参考文献

  1. Polatajko HJ, Mandich A. Enabling Occupation in Children: The Cognitive Orientation to Daily Occupational Performance(CO-OP)Approach. Ottawa: CAOT Publications ACE; 2004.
  2. Dawson DR, McEwen SE, Polatajko HJ, editors. Cognitive Orientation to Daily Occupational Performance in Occupational Therapy: Using the CO-OP Approach to Enable Participation Across the Lifespan. Bethesda, MD: AOTA Press; 2017. ISBN: 9781569004784.
  3. International Cognitive Approaches Network. CO-OP Introduction Online Course. CO-OPの目的、7つの構成要素、適応条件、介入形式を参照。閲覧日:2026年7月21日。
  4. Scammell EM, Bates SV, Houldin A, Polatajko HJ. The Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(CO-OP): A scoping review. Canadian Journal of Occupational Therapy. 2016;83(4):216-225. doi:10.1177/0008417416651277. PMID:27301479.
  5. McEwen SE, Polatajko HJ, Baum CM, et al. Combined cognitive-strategy and task-specific training improve transfer to untrained activities in subacute stroke: An exploratory randomized controlled trial. Neurorehabilitation and Neural Repair. 2015;29(6):526-536. doi:10.1177/1545968314558602. PMID:25416738.
  6. Kiriakou A, Psychouli P. Effects of the CO-OP Approach in addressing the occupational performance of adults with stroke: A systematic review. American Journal of Occupational Therapy. 2024;78(2):7802180010. doi:10.5014/ajot.2024.050131. PMID:38416734.
  7. Dawson DR, et al. Comparing the CO-OP Approach to usual occupational therapy for adults with executive dysfunction following acquired brain injury: A randomized controlled trial. Brain Sciences. 2025;15(11):1195. doi:10.3390/brainsci15111195.

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