今回、脊椎圧迫骨折と神経解剖、疼痛のメカニズムについて、文献を参考にまとめていきたいと思います。
目次
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脊髄神経前枝
体幹(腹側、外側)、下肢を支配します。
脊髄神経前枝は前方コンパートメント(椎体滑膜、椎間板の線維輪表層、前縦靱帯、後縦靱帯、終板辺縁など)に分布し、侵害刺激に対する受容器としての働きがあります。
脊髄洞神経
椎間板線維輪後方や硬膜を支配しています。
脊髄洞神経に支配された組織は腰や背中の痛みを指1本で示すことができず、広範囲の痛みを示す特徴があります。
圧痛は認めませんが、圧迫骨折の初期では棘突起の圧迫により疼痛を認めることがあります。
脊髄神経後枝内側枝
棘突起に近い軟部組織(多裂筋、回旋筋、半棘筋、棘筋、棘間靱帯、棘上靱帯)の全てが支配されます。
これらは椎体に軸圧と後弯化を伴うと、圧迫骨折が発生し、周辺の組織に損傷が生じます。
圧迫骨折後の脊椎後弯変形は、椎体自体の問題だけではなく、軟部組織の損傷にも影響されます。
圧迫骨折では骨折レベルの椎間関節に圧痛を認めることが多いですが、これは椎間関節に付着する多裂筋深層線維や回旋筋によるもの(筋性疼痛)と考えます。
これらの筋の筋スパズムにより圧に対する閾値は低下している状態です。
滑膜炎などでは炎症により椎間関節は腫張し圧痛が強くなります。
このような場合は安静により消炎をまちます。
後内側枝による疼痛は指1本で示すことができます。
圧迫骨折ではその後の椎間関節障害(両側性、多椎間にわたる)により疼痛範囲は広範囲になります。
脊髄神経後枝外側枝
固有背筋外側群(腸肋筋、最長筋)、腰背部や臀部の皮膚知覚を支配します。
L1〜L3からの後枝外側枝は腸肋筋を貫通して皮神経となり、腸骨稜を下行し上臀皮神経となります。
皮神経の障害では、腰背部や臀部の広範囲への疼痛が認められます。
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脊椎圧迫骨折後に脊柱が後弯化すると、脊柱起立筋の過伸張や筋内圧が上昇し、皮神経が絞扼され腰背部や臀部に痛みが生じます。
脊髄神経の後枝外側枝は棘筋、最長筋、腸肋筋、僧帽筋下部線維、下後鋸筋、胸腰筋膜を貫通し皮神経になります。
・7〜12胸神経後枝の外側枝は後皮枝となり腰背部を知覚
・1〜3腰神経後枝の外側枝は上臀皮神経となり臀部上外側部を知覚
・1〜3仙骨神経後枝の外側枝は中臀皮神経となり臀部内側部を知覚
後弯姿勢が慢性化すると、脊柱起立筋を覆う胸腰筋膜の反応性が高くなり、皮神経障害が慢性化する要因となってしまいます。
絞扼性神経障害では、圧痛を強く認め、放散痛もあります。
脊柱起立筋が緩む姿勢や皮神経が通る皮膚を緩めることで神経絞扼が一時的になくなるため、圧痛や放散痛が軽くなったりなくなることがあります。