圧迫骨折では椎体圧潰の進行を食い止めることが何より重要で、そのためには日常生活動作において腰に負担がかからないような動作をすることが大切になります。今回、圧迫骨折と日常生活動作(ADL)の注意点、指導について考えていきます。
目次
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圧迫骨折では、腰に負担をかける動作は避けなければなりません。
腰に負担がかかる動作とは、特に腰を曲げることです、これは禁忌動作です。
圧迫骨折では骨が潰れている状態なのですが、まだ骨がくっついていない状態で腰を曲げる動作を行うと、さらに骨の状態が悪化してしまうことにつながります。
そのため、骨がしっかりとくっつくまでは、腰を曲げない動きで日常生活を過ごすことが何よりも重要なのです。
日常生活では、今まで(病前)の生活の習慣から、何気なく動くとすぐに腰を曲げる動きになります。
もちろんコルセットをしているので、ある程度は背骨の動きは制限されているのですが、腰を曲げてしまうことで、状態が悪化してしまうことは避けなければなりません。
患者さんによっては、コルセットを装着次第離床(ベッドから離れてもよいこと)許可が出ることがあります。
その時に、何も生活における注意点や指導を受けていなと、患者さんの状態が悪くなることがあります。
状態が悪化して、神経を傷つけてしまえば、脊髄損傷になることも考えられます。
そのくらい日常生活の過ごし方が重要だということを、患者さんやスタッフが理解しておくことにより、早期回復を目指していくことが大切になります。
禁忌動作が何なのか、どうしてその動作が禁忌動作なのかを理解できるように関わっていくことが大変重要になります。
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圧迫骨折になると、ギプス、またはコルセットによる固定が行われます。
私は今までの経験の中で、ギプス固定を見たことがありません。
ギプス固定では入浴もどうやるの?というくらい大変なイメージです。
このような外からの固定により、背骨が潰れることを最小限に防ぎます。
ちなみに、骨が完全にくっつくまで、背骨は潰れると言われています。
コルセットやギプス固定により、体を曲げることや背中を過度に反らすことを制限してくれるのです。
そのため、コルセットはしっかりと巻き、体と密着しているかを動く前に確認する必要があります。
患者さんは、「少し苦しいから緩めてよ」と訴えますが、このときも、自分の体を守るためだからと、しっかりと巻く必要があることを指導する必要があります。
患者さんの訴えでは、「ご飯のときにつっかえて苦しい」という訴えもよく聞かれます。
ここは、鬼になりきって、しっかりと指導をしましょう。
認知症の方では、コルセットの役割の意味を理解できない、または理解できても忘れてしまうなどが考えられます。
その場合、注意をひく絵や写真を取り入れる、コルセットをしっかりとつけていれば褒めるなど、よい反応が継続できるように粘り強く関わっていく必要があります。
外固定期間は主治医の考えにより異なります。
初めにギプス固定が行われる場合、1ヶ月後のX線やCTの結果により骨癒合の促進、痛みの軽減がみられると硬性装具に変更していくことが多いようです。
治療後2ヶ月後に圧潰の進行が止まっていれば、硬性装具から軟性装具への変更が行われますが、不安定性があれば装着期間が延長されます。
硬性装具が初めに行われる場合、治療開始後1ヶ月、2ヶ月の画像診断の結果により圧潰の進行が止まっていれば軟性装具へ変更されます。
軟性装具が初めに行われる場合、骨癒合や圧潰の状況や疼痛の程度により装着期間が決まります。
基本は2ヶ月間装着が行われます。
癒合不全や疼痛が軽減しない場合、治療後2ヶ月以降も外固定を行うことになります。
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圧迫骨折では、背骨が潰れる期間が止まるまでどの程度かかるのでしょうか。
骨折してから2〜3週間で潰れる期間はピークを迎えるとされています。
骨折後2ヶ月は、いつもの習慣で前かがみにさけることは避ける必要があり、お医者さんに骨が完全にくっついていると言われるまでは安心してはいけません。
なんども言いますが、腰を曲げる動作は禁忌動作になります。
ギプス固定ではしっかりと固定されているようですが、それでも、安静により筋肉が萎縮すると、固定が緩むこともあるようです。
硬いコルセットでは、ギプス固定に比べて強固さでは及びません。
そのため、体を前にかがませる姿勢は絶対に避ける必要があります、禁忌動作です。
気をつけなければならない点は他にもあります。
ベッドや布団から起き上がるときに、腹筋の力を使ってまっすぐ起きてくる人がいますが、これもやってはいけません。
間違いなく腰が曲がる動作なので禁忌になります。
他には、高齢者では姿勢が丸まっている(円背)ことが多いですが、首の骨の7番目(第7頸椎)から、床に垂直に線を引いたときに、線が股関節の骨(大転子)よりも前に出ているときは、背骨がつぶれるのが進行しやすいとされています(線のことを「C7PL」と呼びます)。
C7PLを意識した圧迫骨折のリハビリテーションについては以下の記事を参照してください。
圧迫骨折のリハビリテーション!筋力トレーニングはどのように行うか?
圧迫骨折のリハビリと歩行練習!歩行(有酸素運動)が骨密度を高める!
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離床時期は主治医の考えにより異なります。
早期離床が行われる場合、3週間程度ベッド上安静が行われる場合などがあります。
早期離床が行われるのであれば、外固定を確実に行い、日常生活動作における指導を確実に行っていくことが大切です。
体幹前傾姿勢を回避した姿勢が可能になれば、起立動作や立位が許可され、洋式便所のみ、入浴は硬性装具を外して、立位でのシャワーが行われます(施設によって異なります)。
ベッド上安静をとることは、骨癒合が促進されます。
胸腰椎以降部の椎体後壁損傷では、食事と排泄以外2〜3週間のベッド上安静が必要とも言われています。
ベッド上安静は、平らな状態での背臥位をさしているわけではありません。
ベッド上で適度な圧縮力を加えると骨癒合を促進することが可能になります。
そのためには、ギャッジアップ20〜30°の姿勢をとります。
この姿勢では、椎体が水平化する方向にに傾き、骨癒合が促されるほか、偽関節の発生を予防することができます。
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ベッド上の姿勢はどのようにすると良いのでしょうか。
傾斜がなくフラットなベッド上の仰向けでは、背骨に負担がかかることがあるため、ベッド角度を20〜30度にすることが必要です。
骨がくっつくことを促したいのであれば、ベッド角度にも注意する必要があります。
また、横向きと仰向けでは横向きの方がよいとされています。
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姿勢では、前かがみ姿勢
長座位
あぐら
があり、この姿勢では背骨に負担がかかってしまうため、禁忌姿勢になります。
圧迫骨折では、起き上がり動作やベッドに寝に行く動作は痛みが生じやすい動作といえます。
通常の動作では、図のような方法で行うことで、背骨への負担を極力軽くすることができます。
先輩の療法士は、お腹に力を入れて動くことがポイントだと患者さんに言っていました。
動作時に痛みが強い場合は以下のような方法があります。
この動作で痛みが軽減できる方は多いですが、動作能力が高い患者さんに適応だとも思われます。
①まず、お腹を下にする姿勢にします。
②両足をベッドから下ろします。
③腕の力で上半身を起こします。
このような順序で行うと、痛みの軽減が期待できます。
なお、寝に行くときも同じような感じで行うことができます。
物を拾う動作は、前かがみになりやすい動作ですが、圧迫骨折では絶対に避けなければなりません。
上図のような動作は禁忌動作です。
物を拾う場合、図のように膝立ち姿勢で行うか、リーチャーやマジックハンド、長いトングで行います。
床近くにある引き出しを開ける場合、膝立ちになり行う工夫が必要です。
よく扱う物に関しては、膝立ちにならなくてもよいように、手の届く範囲においておくようにします。
靴の着脱では、図のように、膝立ち姿勢になって行うか
長い靴べらを使用します。
靴下を脱ぐときには、リーチャーやマジックハンドを用います。
靴下を履くときには、ソックスエイドを使用します。
ズボンを履く際には、紐付き洗濯バサミを用いると行いやすくなります。
洗濯バサミは強力な物でないと、ズボンを引っ張るときに外れてしまいます。
ズボンを脱ぐときは、リーチャーやマジックハンドを用います。
トイレでは洋式便所で行う必要がありますが、
いきむ姿勢で前かがみになってはいけません。禁忌姿勢になります。
習慣で、図のような姿勢をとることが多くありませんか?
トイレでは体を曲げない姿勢で行い
後始末は手を後ろにやって行うか、ウォシュレットを使用します。
便座から立つときも、前かがみになることは避けます。
手すりを利用して行いましょう。
顔を洗うときに、前かがみ姿勢になるため、骨がくっつくまではタオルを濡らして顔を拭くようにします。
歯磨きのあと口をすすぎ、吐き出すときにも前かがみ姿勢をとりやすいため、頭を下に向けて吐き出すようにします。
それが難しい場合、コップを2つ用意するなどして、コップに吐き出すようにします。
食事姿勢では、お皿を手に持ち、体に近づけることで体が前かがみになるのを防ぐことができます。
畳など、床に座る場合、支える物が低すぎると、前かがみになってしまいます。
そのため、ある程度高さのある支えを利用して座っていきます。
図の福祉用具は、重さもあるので動きにくく、支持物として利用できます。
まず、圧迫骨折になると、入浴はいつから行えるのでしょうか。
基本的には医者の指示に従うことが大前提です。
入院中であれば、はじめはベッド上での清拭から始まります。
自分専用のコルセットが完成し、座位保持もしっかりとできるよになれば、浴用コルセットをつけることでシャワー浴が行えるようになります。
おおまかな目安ですが、骨折後4週後よりコルセットなしでのシャワー浴、骨折後12週後より浴槽内入浴になるイメージだと思います。
早期に退院できた場合でも、しばらくはシャワー浴になりますが、我慢してください。
医者の指示があるまでは絶対に浴槽に入らないでください、自分の身を守るためです。
入浴では、浴槽の縁を持って入ると前かがみ姿勢になってしまいます。
図のように縦手すりを利用することで、姿勢を保ちながら浴槽をまたぎます。
浴槽内にしゃがみ込む際も、手すりを利用することで姿勢を保ちながら動作が行えます。
浴槽内椅子を使用すると、座り込みでの前かがみ姿勢を防ぐことができます。
立ち上がりも同様ですが、立ち上がりの方が姿勢が崩れやすいために注意してください。
動きで見て確認できます。⇨
体を洗う動作では、足を洗う時に前かがみになりやすいので、長柄のブラシを用います。
100均(ダイソー)で売られている物です。
体を拭く動作では、背もたれ椅子があれば、座面から背もたれ部分にかけてタオルを敷きます。
また、足は長めのタオルを利用して姿勢を保ちながら拭きます。
頭上に手を伸ばす時には、腰や背中は反ることになります。
圧迫骨折では、反る動作も背骨に負担がかかる動作です。
そのため、頭上に手を伸ばす時には、段を利用する
よく利用する物は手の届く範囲に置いておく
洗濯物を干す時は、長いフックなどを用いて、低めの位置で良い姿勢を保ちながらできるようにするなどの環境設定を行います。
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日常生活上の他の動作に関しても、以上で挙げたポイント利用して行います。
膝立ちなどは、足の筋力が落ちている高齢者では難しい場合もあります。
そのときは、自助具の利用や環境設定を行うこと、床に座る生活よりも椅子やベッドを利用する生活に変更するなど、患者さんに合った方法を検討する必要があります。
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