脳卒中リハビリは180日で終わり?-退院後のデイケア・訪問リハ・自費リハの選び方-
目次
はじめに
脳卒中、脳梗塞、脳出血のあとにリハビリを続けていると、ある時期に「そろそろ退院です」「医療保険でのリハビリには日数の区切りがあります」と説明されることがあります。
その時に、多くの患者さんやご家族が不安になります。
まだ麻痺が残っている。
歩くのが不安定。
トイレや入浴が一人では不安。
家に帰ってから生活できるか心配。
もっとリハビリを続けたい。
180日を過ぎたら、もうリハビリは受けられないのか。
こう感じるのは自然なことです。
ただ、まず知っておいてほしいのは、いわゆる「180日の壁」は、回復の限界を意味する言葉ではないということです。
脳卒中後のリハビリには、医療保険上の標準的な日数として180日という区切りがあります。しかし、それは「180日を過ぎたら身体が変わらない」「リハビリをしてはいけない」という意味ではありません。
大切なのは、病院でのリハビリが終わったあとに、生活の中でどのようにリハビリを続けていくかです。
退院後には、デイケア、デイサービス、訪問リハビリ、訪問看護からのリハビリ、外来リハビリ、自費リハビリ、自主練習、福祉用具、住宅改修、地域の運動教室など、いくつかの選択肢があります。
この記事では、患者さんや家族向けに、退院後のリハビリの選び方を分かりやすく整理します。
スポンサーリンク
この記事で分かること
この記事では、次の内容を整理します。
・180日の壁とは何か
・180日を過ぎてもリハビリが完全に終わるわけではない理由
・退院後に使えるリハビリの選択肢
・デイケアとデイサービスの違い
・デイサービスにも特色があること
・訪問リハビリと訪問看護からのリハビリの違い
・外来リハビリと介護保険リハビリの併用で注意すること
・自費リハビリを選ぶ時の注意点
・家族が確認しておきたいこと
・よくある質問
1. 「180日の壁」は回復の限界ではない
脳卒中後のリハビリでよく聞くのが、「180日」という言葉です。
これは、脳血管疾患等リハビリテーションにおける医療保険上の標準的な日数を指します。
簡単に言うと、病院や外来で医療保険としてリハビリを行う期間の目安です。
ここで誤解しやすいのが、
「180日を過ぎたら、もう良くならない」
という考え方です。
これは正確ではありません。
180日は、制度上の区切りです。
身体の回復がその日に急に止まるわけではありません。
たしかに、脳卒中後の回復は、発症して間もない時期ほど大きく変化しやすい傾向があります。急性期から回復期にかけては、身体機能や日常生活動作が大きく改善しやすい時期です。
一方で、退院後の生活期でも、歩く力、体力、生活動作、手の使い方、外出範囲、社会参加が変わる方はいます。
ただし、病院に入院していた時と同じように、毎日何時間もリハビリを受ける形とは変わっていきます。
180日を過ぎたあとに考えるべきなのは、
「もう終わりかどうか」
ではなく、
「これから、どこで、何を目標に、どう続けるか」
です。
スポンサーリンク
2. 退院後のリハビリは「生活の中で使う練習」になる
病院でのリハビリは、身体機能や日常生活動作を集中的に回復させる役割があります。
立つ。
歩く。
階段を上る。
トイレへ行く。
着替える。
入浴する。
手を使う。
飲み込む。
話す。
注意力や記憶を確認する。
こうしたことを、病院では専門職が集中的に支援します。
退院後は、少し視点が変わります。
自宅のトイレまで歩けるか。
夜間に安全に移動できるか。
浴室で転倒しないか。
玄関の段差を越えられるか。
買い物に行けるか。
通院できるか。
家事の一部を再開できるか。
家族の介助量を減らせるか。
趣味や役割を取り戻せるか。
つまり、退院後のリハビリでは、病院でできるようになった動作を、実際の生活で使えるようにしていくことが大切です。
リハビリ室で10m歩けることと、自宅の狭い廊下を夜間にトイレまで歩けることは同じではありません。
病院で階段練習ができることと、自宅玄関の段差を安全に越えられることも同じではありません。
退院後のリハビリは、生活に近い場所で、実際に困る場面につなげていく段階です。
3. 退院後の選択肢は一つではない
退院後のリハビリというと、デイケアや自費リハビリを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、実際にはもっと選択肢があります。
退院後に使える可能性があるものには、次のようなものがあります。
・デイケア、通所リハビリテーション
・デイサービス、通所介護
・訪問リハビリテーション
・訪問看護からのリハビリ
・病院や診療所での外来リハビリ
・自費リハビリ
・自主練習
・福祉用具
・住宅改修
・地域の運動教室や介護予防事業
・家族による見守りや介助方法の工夫
どれが一番よいかは、人によって違います。
自宅でのトイレや入浴が不安な方には、訪問リハが合うことがあります。
日中の居場所、入浴、食事、交流が必要な方には、デイケアやデイサービスが合うことがあります。
歩行や麻痺手など、特定の目標に集中したい方には、自費リハビリを検討する場合もあります。
退院後のリハビリは、どれか一つだけを選ぶというより、本人の状態や目標に合わせて組み合わせるものです。
スポンサーリンク
4. デイケアとは何か
デイケアは、正式には通所リハビリテーションといいます。
介護保険を使って、日帰りで施設に通い、リハビリを受けるサービスです。
医師の関与のもとで、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職が関わることがあります。
デイケアでは、施設によって次のような内容があります。
送迎。
健康チェック。
個別リハビリ。
集団体操。
マシン運動。
入浴。
食事。
他の利用者との交流。
生活リズムづくり。
家族の介護負担軽減。
患者さんや家族から見ると、「リハビリをしながら日中を過ごす場所」と考えると分かりやすいです。
ただし、デイケアといっても、施設によって内容はかなり違います。
短時間型で運動中心の施設。
入浴や食事を含む長時間型の施設。
個別リハビリを重視する施設。
集団体操やマシン運動が中心の施設。
生活動作の練習まで丁寧に見てくれる施設。
このように違いがあります。
また、デイケアだからといって、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3職種がすべて十分にいるとは限りません。
そのため、見学の時には、
「どのようなリハビリが受けられるのか」
「誰が関わってくれるのか」
「自分の目標に合っているのか」
を確認することが大切です。
5. デイサービスとは何か
デイサービスは、正式には通所介護といいます。
日帰りで施設に通い、入浴、食事、交流、機能訓練、見守りなどを受けるサービスです。
デイケアと比べると、医療的なリハビリというより、日中の活動や生活支援の意味合いが強いサービスです。
ただし、ここで注意したいのは、
「デイサービスだからリハビリにならない」
と決めつけないことです。
最近は、デイサービスにも特色があります。
たとえば、マシン運動を中心にしたデイサービスがあります。
いわゆるパワーリハビリを取り入れて、立ち上がり、歩行、姿勢、体力づくりを重視している施設もあります。
一方で、入浴、食事、交流、認知症対応、日中の居場所づくりに力を入れているデイサービスもあります。
つまり、デイサービスにも施設ごとの個性があります。
ただし、デイサービスの機能訓練指導員は、必ずしも理学療法士、作業療法士、言語聴覚士とは限りません。
看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師などが担当している場合もあります。
そのため、デイサービスを選ぶ時は、
「機能訓練があるか」
だけでなく、
「誰が、どのような目的で、どのような訓練をしてくれるのか」
を確認することが大切です。
スポンサーリンク
6. デイケアとデイサービスの違い
デイケアとデイサービスは、名前が似ているため混乱しやすいです。
大まかには、次のように考えると分かりやすいです。
| 項目 | デイケア | デイサービス |
|---|---|---|
| 正式名称 | 通所リハビリテーション | 通所介護 |
| 主な目的 | リハビリ、心身機能、生活動作の維持・改善 | 日中活動、入浴、食事、交流、介護負担軽減 |
| 医師の関与 | あり | 基本的には医療リハビリではない |
| リハ職の関与 | PT・OT・STが関わることがある | 機能訓練指導員が関わることがある |
| 向いている人 | リハビリ目標が明確な人 | 生活リズム、入浴、交流、見守りも必要な人 |
ただし、これはあくまで大まかな違いです。
実際には、デイサービスでも運動や機能訓練に力を入れている施設があります。
反対に、デイケアでも施設によって個別リハビリの時間や内容は異なります。
名前だけで判断せず、実際に見学して、内容を確認することが大切です。
7. デイサービスを見学する時に確認したいこと
デイサービスを選ぶ時は、次の点を確認するとよいです。
・機能訓練を誰が担当しているか
・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が在籍しているか
・マシン運動だけでなく、生活動作につながる内容があるか
・歩行、トイレ、入浴、外出など本人の目標と合っているか
・入浴や食事の支援があるか
・利用者の雰囲気が本人に合っているか
・送迎時間や滞在時間が負担にならないか
・家族へ報告や相談があるか
・転倒や体調不良時の対応が決まっているか
パワーリハビリやマシン運動がある施設は魅力的に見えることがあります。
ただし、マシンを使っているから良い、使っていないから悪い、という単純な話ではありません。
大切なのは、その運動が本人の生活目標につながっているかです。
たとえば、
トイレまで歩きたい。
玄関の段差を越えたい。
買い物に行きたい。
家の中で転ばず動きたい。
体力をつけて外出したい。
このような目標に対して、どんな機能訓練をしてくれるのかを確認しましょう。
スポンサーリンク
8. 訪問リハビリとは何か
訪問リハビリは、療法士が自宅に来てリハビリを行うサービスです。
退院後の生活に直結しやすい点が大きな特徴です。
たとえば、次のような場面を実際の自宅で確認できます。
ベッドから起きる。
トイレまで歩く。
浴室へ入る。
玄関の段差を越える。
台所で立つ。
洗濯物を干す。
家の中で方向転換する。
家族がどこで介助するか確認する。
病院ではできていた動作が、自宅では難しいことがあります。
廊下が狭い。
手すりがない。
段差がある。
トイレが遠い。
浴室が滑りやすい。
ベッドの高さが合わない。
夜間は暗い。
家族の介助方法が分からない。
訪問リハは、こうした実際の生活環境を見ながら支援できるのが強みです。
退院直後、自宅内の生活に不安が強い方、外出が難しい方、家族が介助方法に不安を感じている方には、訪問リハが合う場合があります。
9. 訪問リハビリと訪問看護からのリハビリは何が違うのか
退院後に自宅でリハビリを受ける方法として、「訪問リハビリ」と「訪問看護からのリハビリ」があります。
どちらも、自宅に理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが来てくれることがあります。
患者さんや家族から見ると、どちらも「家に来てくれるリハビリ」に見えるため、違いが分かりにくいと思います。
大まかに言うと、訪問リハビリは、病院、診療所、介護老人保健施設などからリハビリ専門職が訪問するサービスです。
一方、訪問看護からのリハビリは、訪問看護ステーションのサービスの中で、看護の一環として理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訪問する形です。
患者さんや家族が細かい制度をすべて覚える必要はありません。
大切なのは、次の点です。
・どちらも医師の指示が必要になる
・どちらも介護保険や医療保険の条件を確認する必要がある
・利用できる回数や時間には制限がある
・訪問看護からのリハビリでは、看護師による状態確認も関わる
・どちらが使えるかは、本人の状態、主治医の判断、事業所の空き、ケアプランによって変わる
訪問看護ステーションから理学療法士などが訪問する場合、介護保険では「1回20分以上、週6回まで」という制限があります。一般的には、最大で週2時間程度と考えると分かりやすいです。
ただし、制度は細かく、医療保険か介護保険か、病状、利用しているサービス、事業所の体制によって扱いが変わることがあります。
そのため、訪問リハビリと訪問看護からのリハビリで迷った時は、主治医、ケアマネジャー、病院の相談員、利用予定の事業所に確認してください。
患者さんや家族にとっては、制度名よりも、
「自宅のどの困りごとを見てもらいたいのか」
を整理しておくことが大切です。
たとえば、
トイレまで安全に歩きたい。
浴室の出入りを確認してほしい。
家族の介助方法を見てほしい。
玄関の段差を練習したい。
自主練習を作ってほしい。
体調管理も含めて見てほしい。
このように目的を伝えると、どのサービスが合うか相談しやすくなります。
スポンサーリンク
10. 外来リハビリという選択肢
退院後も、病院や診療所の外来でリハビリを受ける場合があります。
ただし、外来リハビリは誰でも無制限に受けられるわけではありません。
医療保険でのリハビリには、病気ごとの日数や条件があります。介護保険の認定を受けている方では、医療保険の外来リハビリと介護保険のリハビリの関係を確認する必要があります。
ここは、患者さんや家族だけで判断しにくい部分です。
外来リハを続けたい場合は、主治医、病院のリハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーに確認してください。
11. 医療保険の外来リハと介護保険リハは自由に併用できるわけではない
退院後によくある疑問が、
「病院の外来リハビリも続けたい」
「介護保険でデイケアにも行きたい」
「訪問リハも使いたい」
「デイサービスの機能訓練も受けたい」
というものです。
気持ちはよく分かります。
ただし、医療保険の外来リハビリと、介護保険のリハビリは、自由にずっと併用できるわけではありません。
介護保険のリハビリが始まると、同じ病気に対する医療保険のリハビリは、原則として制限されることがあります。
ただし、急に切り替えるとリハビリが途切れてしまうため、一定の移行期間が認められる場合もあります。
このあたりは制度が複雑です。
患者さんや家族にとって大事なのは、次の点です。
自己判断で「病院もデイケアも両方行ける」と決めない。
退院前に病院へ確認する。
ケアマネジャーに相談する。
利用予定のデイケア、訪問リハ、デイサービスへ確認する。
どのサービスを、何の目的で使うのか整理する。
外来リハと介護保険リハをどう使うかは、退院後の大事な調整ポイントです。
迷った時は、早めに相談してください。
スポンサーリンク
12. 自費リハビリとは何か
自費リハビリは、医療保険や介護保険を使わず、全額自己負担で利用するリハビリサービスです。
多くの場合、60分から90分程度のマンツーマンリハビリを行う施設が多いです。
自費リハビリが合う場合もあります。
歩行をもっと改善したい。
麻痺した手を使いたい。
復職に向けて練習したい。
趣味を再開したい。
家事や外出を練習したい。
短期間で特定の課題に集中したい。
このような明確な目標がある方には、選択肢になります。
一方で、注意点もあります。
費用が高い。
保険が効かない。
施設によって内容に差がある。
医療機関ではない場合がある。
効果を保証するものではない。
病気や体調への対応を確認する必要がある。
広告表現に注意が必要。
自費リハビリは、悪い選択肢ではありません。
ただし、「高いお金を払えば必ず良くなる」と考えるのは危険です。
利用する場合は、担当者の資格、脳卒中リハビリの経験、評価内容、目標設定、費用、医療機関との連携を確認しましょう。
13. 「デイケアは維持、自費リハは改善」と単純に分けない
よくある説明として、
デイケアは維持。
自費リハは改善。
という分け方があります。
これは分かりやすいですが、正確とは言い切れません。
デイケアでも、目標が明確で、個別リハビリや自主練習、生活動作練習がうまく組まれていれば、歩行や日常生活動作が改善する方はいます。
デイサービスでも、運動や機能訓練に力を入れている施設があります。
一方で、自費リハでも、評価が不十分で、本人の生活目標と関係の薄い練習ばかりになると、満足できないことがあります。
大切なのは、保険の種類やサービス名ではありません。
本人の生活目標に合っているかです。
トイレを一人で行きたい。
玄関の段差を越えたい。
買い物に行きたい。
麻痺手を食事で使いたい。
家事を再開したい。
仕事に戻りたい。
転倒を減らしたい。
家族の介助量を減らしたい。
この目標に対して、どのサービスが一番近い支援をしてくれるかで選ぶことが大切です。
スポンサーリンク
14. どのサービスが向いているか
退院後のサービスは、本人の状態と目標で考えます。
| 状況 | 合いやすい選択肢 |
|---|---|
| 自宅のトイレ・入浴・移動が不安 | 訪問リハ、訪問看護からのリハビリ、福祉用具、住宅改修 |
| 日中の居場所や入浴、交流も必要 | デイサービス、デイケア |
| リハビリ専門職の関わりを重視したい | デイケア、訪問リハ、外来リハ |
| 体調管理も一緒に見てほしい | 訪問看護、訪問看護からのリハビリ |
| 外出が難しい | 訪問リハ、訪問看護からのリハビリ |
| 体力づくりや生活リズムを整えたい | デイケア、デイサービス、地域活動 |
| マシン運動や体力づくりをしたい | パワーリハ型デイサービス、デイケア |
| 明確な高い目標がある | 自費リハ、外来リハ、専門施設 |
| 費用を抑えて長く続けたい | 介護保険サービス、自主練習、地域資源 |
| 退院直後で生活が不安定 | 訪問リハ、訪問看護、ケアマネ相談、退院前調整 |
一つだけ選ぶ必要はありません。
訪問リハで自宅環境を整えながら、デイケアで体力と生活リズムを作る。
デイサービスで入浴や日中活動を確保しながら、自主練習を続ける。
デイケアで継続しながら、必要に応じて自費リハで特定課題に集中する。
このように組み合わせることもあります。
ただし、制度上の条件、費用、疲労、スケジュールの問題があるため、ケアマネジャーと相談しながら決めましょう。
15. 退院前に確認しておきたいこと
退院後のリハビリは、退院してから探すより、退院前から準備した方がスムーズです。
確認したいのは次の項目です。
介護保険の申請は済んでいるか。
要介護認定の結果はいつ出るか。
ケアマネジャーは決まっているか。
退院後すぐに使えるサービスはあるか。
デイケアやデイサービスの見学はできるか。
訪問リハが必要か。
訪問看護が必要か。
外来リハは続けられるのか。
自宅の手すりや福祉用具は準備できているか。
退院後の自主練習メニューはあるか。
家族が介助方法を確認したか。
転倒時の連絡方法は決まっているか。
薬や再診予定は整理されているか。
退院後にリハビリや活動が途切れると、せっかく病院で上がった能力を生活に移しにくくなることがあります。
退院日が見えてきたら、主治医、リハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーに早めに相談してください。
スポンサーリンク
16. 見学や体験で確認したいこと
デイケア、デイサービス、自費リハビリを選ぶ時は、できれば見学や体験をしましょう。
確認したいのは次の点です。
本人の目標を聞いてくれるか。
歩行、トイレ、入浴、家事、外出など生活に関係した話をしてくれるか。
リハビリや機能訓練の担当者は誰か。
国家資格を持つリハビリ専門職がいるか。
マシン運動だけでなく生活動作につなげてくれるか。
本人に合った計画を説明してくれるか。
転倒や体調不良時の対応があるか。
費用が分かりやすいか。
利用者の雰囲気が本人に合っているか。
送迎時間や利用時間が負担にならないか。
家族への説明や報告があるか。
「必ず治る」「短期間で劇的に改善」と断言していないか。
特に自費リハビリでは、広告表現に注意が必要です。
「必ず歩けるようになる」
「麻痺が治る」
「何回で改善」
「最新機器だから大丈夫」
このような断定的な表現には慎重になった方がよいです。
誠実な施設ほど、できることだけでなく、難しい点やリスクも説明してくれます。
17. 自主練習も大切
退院後のリハビリでは、サービスを受ける時間だけでなく、自宅でどう過ごすかも大切です。
デイケアやデイサービスに週2回通っていても、それ以外の日にほとんど動かないと、体力や生活動作が落ちやすくなります。
自主練習は、難しいものでなくて大丈夫です。
立ち上がり練習。
安全な範囲での歩行。
麻痺手をテーブルに置く。
肩や手指のストレッチ。
トイレ動作の手順確認。
家事の一部参加。
散歩。
座ってできる運動。
大切なのは、安全に続けられることです。
自主練習は、病院、訪問リハ、デイケアなどの療法士に相談して、自分に合った内容を作ってもらうと安心です。
スポンサーリンク
18. 家族が確認しておきたいこと
退院後は、家族も不安が大きいと思います。
家族が確認しておきたいのは、次のようなことです。
どこまで一人で動いてよいか。
トイレは見守りが必要か。
夜間はどうするか。
入浴は誰が手伝うか。
転倒しやすい場所はどこか。
杖や歩行器の使い方は合っているか。
外出は一人でよいか。
薬の管理はできるか。
疲れた時のサインは何か。
どのサービスに相談すればよいか。
家族がすべてを抱え込む必要はありません。
デイサービス、デイケア、訪問リハ、訪問看護、訪問介護、福祉用具、住宅改修などを組み合わせて、家族の負担を減らすことも大切です。
本人の自立を残しながら、危ないところだけ支える。
このバランスが大切です。
19. よくある質問
Q1. 180日を過ぎたら、もうリハビリは受けられませんか?
受けられる方法はあります。
ただし、病院で受けていた医療保険のリハビリと同じ形で続くとは限りません。
退院後は、デイケア、訪問リハ、訪問看護からのリハビリ、デイサービス、自費リハ、自主練習、地域活動などへ移ることがあります。
Q2. 180日を過ぎたら、もう良くなりませんか?
そんなことはありません。
ただし、発症直後と同じペースで改善するとは限りません。
生活期では、機能改善だけでなく、できる動作を生活で使うこと、体力を落とさないこと、転倒を防ぐこと、外出や趣味を増やすことも大切です。
Q3. デイケアとデイサービスはどちらが良いですか?
どちらが上という話ではありません。
リハビリ専門職の関わりを重視するなら、デイケアが合うことがあります。
入浴、食事、交流、日中の居場所、家族の介護負担軽減を重視するなら、デイサービスが合うことがあります。
ただし、施設ごとの特色が大きいので、見学して内容を確認しましょう。
Q4. デイサービスでもリハビリはできますか?
機能訓練を行っているデイサービスはあります。
マシン運動やパワーリハビリに力を入れている施設もあります。
ただし、デイサービスの機能訓練指導員は、必ずしも理学療法士、作業療法士、言語聴覚士とは限りません。
誰が、どのような訓練をしてくれるのか確認しましょう。
Q5. デイケアなら必ずリハビリ専門職がいますか?
デイケアはリハビリ専門職が関わりやすい仕組みですが、施設によって職種や人数は違います。
理学療法士はいるが作業療法士はいない、言語聴覚士はいない、という場合もあります。
歩行を見てほしいのか、生活動作を見てほしいのか、飲み込みや言葉を見てほしいのかによって、確認するポイントが変わります。
Q6. 訪問リハとデイケアはどう違いますか?
訪問リハは自宅に来てもらうサービスです。自宅のトイレ、浴室、玄関、廊下など、実際の生活環境で練習できます。
デイケアは施設に通うサービスです。リハビリに加えて、体力づくり、入浴、食事、交流、生活リズムづくりに役立つことがあります。
Q7. 訪問リハビリと訪問看護からのリハビリは何が違いますか?
どちらも自宅でリハビリを受けられることがありますが、サービスの仕組みが違います。
訪問リハビリは、病院、診療所、介護老人保健施設などからリハビリ専門職が訪問するサービスです。
訪問看護からのリハビリは、訪問看護ステーションのサービスの中で、看護の一環として理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訪問する形です。
患者さんや家族が細かい制度をすべて覚える必要はありません。
大切なのは、どちらも医師の指示や制度上の条件があり、利用できる回数や時間に制限があるということです。
訪問看護からのリハビリでは、介護保険の場合、一般的に1回20分以上、週6回までとされており、最大で週2時間程度と考えると分かりやすいです。
どちらが合うかは、本人の状態、自宅で困っていること、主治医の判断、ケアプラン、事業所の空き状況によって変わります。迷う場合は、ケアマネジャーや主治医に確認しましょう。
Q8. 外来リハと介護保険のリハビリは併用できますか?
自由にずっと併用できるわけではありません。
医療保険の外来リハビリと、介護保険のリハビリには調整が必要です。移行期間が認められる場合もありますが、条件があります。
主治医、病院、ケアマネジャーに確認してください。
Q9. 自費リハビリは効果がありますか?
効果を感じる方もいます。
ただし、必ず改善するとは言えません。
大切なのは、担当者がきちんと評価を行い、本人の生活目標に合った計画を立てているかです。
費用も高くなりやすいため、体験や説明を受けてから判断しましょう。
Q10. デイケアは維持だけですか?
維持だけとは限りません。
施設によっては、歩行、日常生活動作、家事、外出、体力づくりなど、具体的な目標に合わせて支援してくれます。
見学時に、個別リハビリの内容や目標設定を確認しましょう。
Q11. パワーリハビリがあるデイサービスは良いですか?
合う方もいます。
マシン運動で立ち上がり、歩行、姿勢、体力づくりを行う施設もあります。
ただし、マシンがあるから必ず良いわけではありません。本人の目標に合っているか、無理な負荷になっていないか、生活動作につながっているかを確認しましょう。
Q12. 介護保険の申請はいつすればよいですか?
退院が見えてきたら、早めに相談した方がよいです。
認定結果やサービス調整には時間がかかることがあります。
病院の医療ソーシャルワーカー、地域連携室、ケアマネジャーに相談しましょう。
Q13. 退院後すぐにリハビリを始めた方がよいですか?
できれば、リハビリや活動が途切れないように準備する方がよいです。
退院後に何週間も動かない期間ができると、体力や生活動作が落ちることがあります。
退院前からサービス開始時期を確認しておくと安心です。
Q14. 自主練習だけでも大丈夫ですか?
状態によります。
自主練習は大切ですが、転倒リスクが高い方、麻痺が強い方、痛みがある方、注意力に不安がある方は、専門職に確認してもらう方が安全です。
Q15. 家族は何を手伝えばよいですか?
全部を手伝う必要はありません。
転倒しやすい場面、入浴、夜間トイレ、外出、薬管理など、危ない部分を確認し、本人ができる動作は残すことが大切です。
家族が抱え込みすぎないよう、サービスも利用しましょう。
Q16. どの施設を選べばよいか分かりません
まずは目標を整理しましょう。
家の中を安全にしたいのか。
歩行を改善したいのか。
手を使いたいのか。
入浴や日中活動が必要なのか。
外出や復職を目指すのか。
目標が決まると、デイケア、デイサービス、訪問リハ、訪問看護、外来リハ、自費リハのどれが合うか見えやすくなります。
スポンサーリンク
まとめ
脳卒中後のリハビリは、180日で終わりではありません。
180日は医療保険上の標準的な区切りであり、回復の限界ではありません。
退院後は、病院での集中的なリハビリから、生活の中で使える力を育てるリハビリへ移っていきます。
デイケア。
デイサービス。
訪問リハ。
訪問看護からのリハビリ。
外来リハ。
自費リハ。
自主練習。
福祉用具。
住宅改修。
地域活動。
選択肢は一つではありません。
大切なのは、サービスの名前だけで判断しないことです。
「デイケアだから良い」
「デイサービスだからリハビリにならない」
「自費リハだから必ず改善する」
このように単純に考えすぎない方がよいです。
見るべきなのは、誰が、どの目標に対して、どのような支援をしてくれるかです。
歩けるようになりたい。
トイレを一人で行きたい。
家族の介助を減らしたい。
外に出たい。
手を使いたい。
趣味や仕事に戻りたい。
その目標に対して、どのサービスが一番合うのかを、主治医、リハビリスタッフ、ケアマネジャー、家族と一緒に考えていきましょう。
「180日を過ぎたから終わり」ではありません。
ここからは、生活の中でどう続けるかが大切です。
参考文献
- 厚生労働省. リハビリテーションの標準的算定日数に関する関係団体への聞き取り調査報告書.
- 厚生労働省. 通所リハビリテーション. 社会保障審議会介護給付費分科会資料.
- 厚生労働省. 通所介護及び療養通所介護 参考資料.
- 厚生労働省. 通所介護等における機能訓練指導員の確保の促進について.
- 厚生労働省. 訪問看護の報酬・基準について.
- 厚生労働省. 医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項.
- NICE. Stroke rehabilitation in adults. NICE guideline NG236. 2023.
- National Clinical Guideline for Stroke. 2023 edition. Intercollegiate Stroke Working Party.
- Legg LA, Lewis SR, Schofield-Robinson OJ, Drummond A, Langhorne P. Occupational therapy for adults with problems in activities of daily living after stroke. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2017;7:CD003585.
- 日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン2021 改訂2025.
