病態失認とは?身体失認との違い・評価・ADL対応
病態失認は、片麻痺などの神経学的な障害があるにもかかわらず、その存在や程度への気づきが乏しい状態です。
ただし、単に「麻痺を認めない」と発言することだけを指すわけではありません。立てると思って立ち上がる、麻痺側上肢を使えると予測する、失敗後も自分の予測を修正しにくいなど、発言と行動の両方に現れます。
臨床では、本人へ障害を繰り返し説明して納得させることより、まず転倒や麻痺側上肢の損傷を防ぐことが重要です。そのうえで、課題前の予測、実際の遂行、課題後の自己評価を比較し、どの条件なら安全に気づきを促せるかを探ります。
この記事では、新人〜若手療法士向けに、病態失認と身体失認・病識欠如の違い、評価の進め方、ADLでの観察、支援と再評価、記録・共有の考え方を整理します。
続きを読む: 病態失認とは?身体失認との違い・評価・ADL対応病態失認は、本人の性格、頑固さ、協力拒否と同じではありません。急な意識変化、麻痺の悪化、構音障害、視野変化、歩行変化を伴う場合は、通常のリハビリ評価より医学的評価と院内手順を優先してください。
目次
病態失認と身体失認は同じではない
日本語では、病態失認、身体失認、病識欠如、心理的否認という言葉が混ざって使われることがあります。評価の前に、まず用語を分けて考えます。
病態失認は、自分の神経学的障害の存在や程度への気づきが乏しい状態です。たとえば、明らかな左片麻痺があるにもかかわらず「左手は動く」と答えたり、移乗時に麻痺側で支えられると予測したりします。
身体失認は、身体部位の認識、位置づけ、所有感などに関する障害を広く指すことがあります。たとえば、麻痺側の手を自分の手として扱いにくい、身体部位の位置が分かりにくい、身体部位を同定しにくいといった形で現れることがあります。
病識欠如は、疾患や問題全体への理解・認識が乏しい状態を広く指す言葉です。病気の影響、治療の必要性、生活上の制限を理解しにくい場合などを含みます。
心理的否認は、不安や苦痛から現実を受け入れにくい心理反応です。話題を避ける、認めたがらない、感情的に反発するなどの形をとることがありますが、脳損傷による病態失認とは区別して考える必要があります。
病態失認と身体失認は併存することがありますが、同義ではありません。また、病態失認は認知症、失語、半側空間無視、失行とも同じではありません。評価では、「何に気づいていないのか」を具体的に整理します。
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病態失認は「ある・ない」だけでは捉えにくい
病態失認は、すべての場面で同じように現れるとは限りません。
たとえば、次のような形があります。
- 質問では麻痺を認めるが、立ち上がり能力を過大評価する
- 上肢の麻痺は認めるが、歩行の危険性には気づきにくい
- 課題中に失敗へ気づくが、次の予測を修正できない
- 訓練室では安全だが、病室やトイレでは無理に動く
- 医療者には理解を示すが、実生活では安全行動へつながらない
- 疲労時、夜間、急いでいる場面で無断離床が増える
そのため、面接の一問だけで「病態失認あり」「病態失認なし」と判断するのは危険です。発言、課題前の予測、遂行中のエラー検出、課題後の自己評価、生活場面での行動を組み合わせて評価します。
病巣は右半球だけで説明できるか
病態失認は、右半球損傷、とくに右大脳半球の広いネットワーク損傷で多く報告されています。
ただし、「右頭頂葉病変があれば病態失認」と単純に考えるのは不正確です。病態失認は、単一の頭頂葉病変だけで説明できる現象ではありません。
運動意図、運動予測、感覚フィードバック、自己に関する情報、注意、身体表象などに関わる複数領域のネットワークが関連すると考えられています。
左半球損傷でも病態失認が起こり得ます。ただし、失語がある場合は質問への回答だけでは評価しにくく、実際の課題、選択式反応、ジェスチャー、観察を組み合わせる必要があります。
臨床では、「右半球だから病態失認」「左半球だから病態失認ではない」と短絡せず、病変、神経心理所見、ADL行動を統合して判断します。
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評価前に確認すること
本人が麻痺や危険を認めないように見えても、別の要因で回答できないことがあります。
全身・急性状態
まず、全身状態や急性変化を確認します。
- 意識レベル
- 覚醒の変動
- せん妄
- 感染
- 脱水
- 低酸素
- 疼痛
- 疲労
- 睡眠不足
- 薬剤変更
- 新たな神経症状
急に反応が変わった、急に危険行動が増えた、急に麻痺や歩行が悪化した場合は、病態失認の評価として扱う前に医学的評価を優先します。
コミュニケーション
次に、質問を理解し、答えられる状態かを確認します。
- 質問を理解できるか
- 失語があるか
- 構音障害があるか
- 聴覚障害があるか
- Yes/No反応の信頼性はあるか
- 指差しや選択式など、代替反応が使えるか
言語反応だけで評価すると、失語や理解低下を病態失認と誤って判断する危険があります。
関連する高次脳機能
病態失認に見える行動の背景には、他の高次脳機能障害が関わることがあります。
- 半側空間無視
- 注意障害
- 記憶障害
- 遂行機能障害
- 失行
- 身体失認
- 視野障害
- 感覚障害
これらは病態失認を否定する項目ではありません。併存することもあります。大切なのは、「どの要因が安全行動を妨げているのか」を分けて考えることです。
心理・対人面
心理的な反応も確認します。
- 不安
- 抑うつ
- 羞恥
- 障害を認めることへの抵抗
- 医療者との関係
- 説明方法や質問の圧迫感
- 家族の前で指摘されることへの負担
病態失認がある人に、強い口調で「できません」「麻痺しています」と繰り返すと、理解が進むどころか、対立や焦燥が強まることがあります。
評価は「質問→予測→遂行→事後評価」で行う
病態失認の評価では、本人の発言だけでなく、実際の行動とのずれを見ることが重要です。
1.障害について尋ねる
まず、障害について尋ねます。
ただし、「麻痺がありますか」と抽象的に聞くだけでは不十分です。本人がイメージしやすい活動に落とし込んで確認します。
たとえば、次のように聞きます。
- ベッドから一人で立てそうですか
- 左手でコップを持てそうですか
- トイレまで一人で行けそうですか
- 着替えはどの程度手伝いが必要だと思いますか
- 車椅子からベッドへ移るとき、手すりや人の支えは必要だと思いますか
抽象的な障害名ではなく、生活場面で確認する方が、本人の予測と実際のずれを捉えやすくなります。
2.実施前に成功予測を聞く
次に、安全に試せる課題を選び、実施前に成功予測を聞きます。
例:
この椅子から立つとき、一人でできますか。手すりや人の支えは必要だと思いますか。
このとき大切なのは、本人を試すことではありません。本人の予測、実際の介助量、事後評価の差を見ることです。
3.実際の遂行を観察する
課題を行うときは、安全を確保したうえで、次の点を観察します。
- 麻痺側上肢を保護できるか
- 麻痺側下肢の位置を整えられるか
- 支持物を適切に使えるか
- ふらつきや失敗へ気づくか
- 途中で方法を修正できるか
- 援助を求められるか
- 声かけや環境調整で行動が変わるか
ここでは、できたかどうかだけでなく、「危険を予測できたか」「失敗に気づいたか」「次の行動を変えられたか」を見ます。
4.事後評価を聞く
課題後には、実際の遂行を本人がどう捉えているかを確認します。
- 予想どおりでしたか
- どこが難しかったですか
- 次は何を使うと安全ですか
- どの程度の手伝いが必要でしたか
- 一人で行う場合、どこが危ないと思いますか
課題前の予測、実際の介助量、課題後の自己評価の差を記録します。
5.場面を変えて再評価する
静かな訓練室で気づけても、病室、トイレ、夜間、疲労時には安全行動へつながらないことがあります。
そのため、人、環境、時間帯、課題難度を変えて再評価します。
- 訓練室ではどうか
- 病室ではどうか
- トイレではどうか
- 疲労時はどうか
- 別スタッフでも同じ安全行動が出るか
- 家族の前でも同じ判断ができるか
病態失認の評価では、一回の反応よりも、複数場面での再現性を見ることが重要です。
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所見別に何を追加確認するか
麻痺を言葉では否定する場合
考えられる背景は、病態失認、失語、質問理解の問題、心理的否認などです。
この場合、発言だけで断定せず、選択式、実物課題、ジェスチャー、実際のADL場面を使って確認します。
修正の方向は、「麻痺を認めさせる」ことではなく、どの活動で危険が生じるかを具体化することです。
一人で立てると予測する場合
考えられる背景は、運動能力の過大評価、注意障害、記憶障害、前回成功体験への固執などです。
この場合、介助下で安全に実施し、本人の予測と実際の介助量を比較します。
支援では、まず環境と見守りを整えます。本人が納得するまで説明してから動作を許可するのではなく、危険が起きにくい条件を先に作ります。
失敗後も評価が変わらない場合
考えられる背景は、エラー検出の困難、予測更新の困難、記憶障害、注意障害などです。
この場合、長い課題ではなく、短い課題で直後に振り返ります。一度に多くの失敗を指摘せず、一つの観察事実に絞って返します。
例:
今回は、立った直後に左足へ体重が乗りにくく、体が左へ傾きました。次は立つ前に左足の位置を一緒に確認しましょう。
麻痺側上肢を放置する場合
考えられる背景は、身体失認、半側空間無視、感覚障害、注意障害などです。
この場合、視覚、触覚、位置、所有感、痛み、浮腫、皮膚トラブルを確認します。支援では、麻痺側上肢の保護を優先します。
車椅子の車輪、ベッド柵、移乗時の挟み込み、肩関節への牽引には特に注意します。
説明で怒りや焦燥が強まる場合
考えられる背景は、心理的負担、羞恥、疲労、理解困難、医療者との関係性などです。
この場合、説明量、タイミング、話者、提示方法を変えます。本人を論破するような説明は避けます。
支援では、対立を避け、安全行動につながる具体的な手順に絞ります。
病室だけ無断で立つ場合
考えられる背景は、環境手掛かりの不足、習慣、記憶障害、尿意、焦り、夜間せん妄などです。
この場合、ナースコールの位置、ベッド周囲の配置、トイレ誘導のタイミング、夜間の見守り、スタッフ間の対応差を確認します。
支援では、本人への説明だけでなく、病棟全体の環境調整と対応統一が必要です。
ADLでは「能力」だけでなく安全行動を見る
病態失認の評価では、身体機能だけでなく、安全行動を見ます。
移乗・立ち上がり
移乗や立ち上がりでは、次の点を確認します。
- 自分に必要な介助量を予測できるか
- 車椅子ブレーキを確認するか
- フットレストを避けられるか
- 麻痺側下肢の位置を整えるか
- 手すりやベッド柵を適切に使うか
- ふらついた後に援助を求めるか
- 失敗後に次の方法を変えられるか
歩行・移動
歩行や移動では、次の点を確認します。
- 補助具を使う必要性を理解しているか
- 疲労や環境の変化で無理をしないか
- 方向転換で速度を調整できるか
- 段差や狭い場所で慎重になれるか
- 一人で移動しようとする時間帯があるか
- 転倒しかけた後に危険性を振り返れるか
更衣
更衣では、次の点を確認します。
- 麻痺側上肢を巻き込まないか
- 袖へ通せない理由をどう捉えるか
- 失敗を認識し、方法を変更できるか
- 必要な介助を受け入れられるか
- 麻痺側から通すなど、手順を使えるか
- 焦って立位更衣をしようとしないか
トイレ動作
トイレ動作では、転倒リスクと本人の予測のずれを特に見ます。
- トイレまで一人で行けると予測していないか
- 尿意や便意で焦ったときにナースコールを使えるか
- 下衣操作中にバランスを崩さないか
- 方向転換や立ち座りで手すりを使えるか
- 失敗後に次回の安全手順へつなげられるか
車椅子・病棟生活
車椅子や病棟生活では、次の点を確認します。
- ブレーキをかけずに立たないか
- 麻痺側上肢が車輪やベッド柵へ挟まらないか
- ナースコールを使うか
- 必要な場面で援助を求められるか
- 病棟スタッフ間で支援条件が統一されているか
- 家族の前で無理にできる姿を見せようとしていないか
病態失認の評価は、本人が「麻痺があります」と言えるかだけでなく、安全な行動を選べるかまで見ます。
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支援は「説得」より安全確保と条件調整から
病態失認がある人へ、「麻痺しています」「できません」と繰り返しても、理解や安全行動につながるとは限りません。
むしろ、対立、羞恥、焦燥が強くなり、リハビリや病棟生活での協力が得にくくなることもあります。
支援では、本人を説得することより、転倒や損傷を防ぎ、安全行動が出やすい条件を作ることを優先します。
1.環境で危険を減らす
まず、環境調整で危険を減らします。
- ベッドの高さを調整する
- 車椅子の位置を整える
- ブレーキ確認を共通手順にする
- 手すりを使いやすい位置にする
- ナースコールを手の届く位置に置く
- 麻痺側上肢を保護する
- 無断離床が起こりやすい時間帯を共有する
- 補助具とスタッフの対応を統一する
病態失認がある場合、本人の理解が進むまで待つだけでは危険です。先に環境で事故を起こしにくい条件を作ります。
2.課題を具体的にする
「自分の状態を理解してください」と言っても、具体的な行動へつながりにくいことがあります。
次のように、行動へ結びつく問いを使います。
- 立つ前に何を確認しますか
- 左手は今どこにありますか
- 次はどの手すりを使いますか
- 何人の介助が必要でしたか
- 次に一人で立とうと思ったら、何をすれば安全ですか
抽象的な理解より、次の行動をどう変えるかを重視します。
3.予測と実際を短い単位で比べる
安全に実施できる小さな課題を選び、予測、実行、直後の振り返りを行います。
例:
- 立つ前に「一人で立てるか」を聞く
- 安全確保下で立ち上がる
- 実際のふらつきや介助量を確認する
- 次に必要な手すりや介助を一緒に確認する
一度に多くの失敗を指摘せず、一つの観察事実へ絞る方が、本人が受け止めやすくなります。
4.フィードバック方法を調整する
口頭説明、鏡、写真、動画、数値、他者の観察などが用いられることがあります。
ただし、病態失認への介入研究はまだ限られており、特定の方法が全員に有効と確認されているわけではありません。反応を見ながら、本人の心理的負担と安全性を優先して選択します。
動画提示は、本人に強い衝撃や羞恥を与える可能性があります。使用する場合は、同意、心理状態、目的、安全性、提示後の支援を確認し、必要に応じて段階的に行います。
「現実を見せれば分かるはず」という発想で、いきなり失敗場面を見せるのは避けます。
5.安全行動が再現するかを見る
「麻痺を認めた」という発言だけを成果にしません。
成果として見るべきなのは、次のような行動です。
- 援助を求めた
- ブレーキを確認した
- 補助具を使用した
- 麻痺側上肢を保護した
- 手すりを使った
- 課題難度に応じて行動を変えた
- 失敗後に次の方法を修正した
- 別スタッフでも同じ安全手順を使えた
こうした安全行動が、訓練室だけでなく、病室、トイレ、夜間、家族の前でも再現するかを確認します。
中止・相談・共有する場面
次のような場面では、通常のリハビリ評価や気づきを促す練習として進めず、医師・看護師・チームへ相談します。
- 急に気づきが悪化した
- 新しい麻痺が出た
- 構音障害が出た
- 視野変化が出た
- 歩行状態が急に変わった
- 意識や覚醒が変動する
- 無理な立ち上がりや転倒が反復する
- 麻痺側上肢の挟み込みや牽引など、損傷リスクがある
- フィードバックで強い焦燥、抑うつ、怒り、対立が生じる
- 家族だけでは自宅の安全を確保できない
急性変化では、病態失認の訓練として扱う前に医学的評価を優先します。
退院後や在宅で、急な片側の脱力・しびれ、話しにくさ、見えにくさ、歩きにくさ、意識の変化が出た場合は、自己判断で様子を見ず、救急相談や救急要請を含めて速やかに対応してください。
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記録・申し送りの例
あいまいな記録
病態失認あり。何度説明しても麻痺を認めない。
この記録では、何を予測し、何が起こり、どの支援が必要か伝わりません。
具体的な記録
ベッドから車椅子への移乗前、「一人で立てる」と回答。実施時は左下肢支持が不十分で体幹が左へ偏位し、中等度介助を要した。直後も「ほぼ一人でできた」と評価。動画提示は行わず、左下肢位置と介助量を一項目ずつ確認すると、次試行では「手すりと見守りが必要」と回答した。病棟では単独移乗を避け、ブレーキ確認とナースコール使用を共通手順とする。
このように、病名だけでなく、予測、実際の介助量、事後評価、有効だった支援、病棟で統一する手順まで記録します。
申し送りで共有する項目
申し送りでは、次の項目を共有します。
- どの機能・活動への気づきが乏しいか
- 課題前に本人がどう予測したか
- 実際の介助量と危険は何か
- 課題後の自己評価はどうだったか
- 有効だった説明・手掛かりは何か
- 焦燥や対立を招いた方法は何か
- 病棟・家族で統一する安全手順は何か
- 再評価すべき場面はどこか
患者・家族への説明例
患者さんや家族へは、本人の性格や努力不足として説明しないことが大切です。
説明例:
ご本人がわざと無理をしているとは限りません。脳の損傷によって、体の動きにくさを実感しにくいことがあります。何度も言い聞かせるだけでは変わりにくいため、まず転倒を防ぎ、実際の動作を一緒に確認しながら、安全にできる方法を探します。
家族には、説得や叱責を求めるのではなく、見守りが必要な場面と具体的な手順を共有します。
たとえば、次のように伝えます。
「一人でできる」と言った場合でも、実際には立ち上がりやトイレでふらつくことがあります。ご本人を責めるのではなく、立つ前にナースコールを押す、手すりを使う、左手の位置を確認するなど、具体的な手順を一緒に確認してください。
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新人療法士向けチェックリスト
病態失認を評価・支援するときは、次の点を確認します。
- 病態失認と身体失認を同義にしていない
- 本人の性格、拒否、努力不足と決めつけていない
- 失語、注意障害、記憶障害、せん妄、心理反応を確認した
- 質問だけでなく、課題前の予測を確認した
- 実際の介助量と危険を記録した
- 課題後の自己評価を確認した
- 訓練室だけでなく、病室やトイレでの行動を確認した
- 転倒と麻痺側上肢損傷を環境で予防した
- 一つのフィードバック方法を押しつけていない
- 動画提示を行う場合、同意と心理的負担を確認した
- 安全行動の再現性をADLで確認した
- 病棟・家族と具体的な手順を共有した
FAQ
病態失認と身体失認は同じですか
同じではありません。
病態失認は、麻痺などの神経学的障害への気づきが乏しい状態です。身体失認は、身体部位の認識、位置づけ、所有感などに関する障害を広く指すことがあります。
併存する場合はありますが、評価では分けて考えます。
病識がない人は病態失認ですか
すぐに病態失認とは判断しません。
病識欠如は広い概念です。神経学的障害への気づきの問題なのか、質問理解、記憶、せん妄、失語、心理的否認などが関係しているのかを確認します。
発言だけで病態失認と決めつけるのは避けます。
失語があると評価できませんか
評価は難しくなりますが、できないわけではありません。
選択式、ジェスチャー、実際の課題、予測と遂行の比較などを組み合わせます。言語反応だけに依存せず、ADL場面での行動を確認します。
麻痺を繰り返し説明すれば改善しますか
説明だけで安全行動が変わるとは限りません。
むしろ、繰り返しの指摘で対立や羞恥が強くなることがあります。環境調整、短い課題、予測と実際の比較、具体的な手掛かりを個別に試します。
動画を見せる方法は有効ですか
動画提示は、気づきの変化を促す方法として検討されることがあります。
ただし、効果には個人差があり、研究もまだ限られています。全員に一律で行う方法ではありません。使用する場合は、目的、同意、心理的負担、提示後の支援を確認します。
病態失認は治りますか
経過の中で改善する場合もありますが、全員が同じように改善するわけではありません。
また、「麻痺があります」と言えるようになることと、実際のADLで安全行動を選べることは同じではありません。リハビリでは、発言だけでなく、援助を求める、ブレーキを確認する、麻痺側上肢を保護するなどの行動変化を見ます。
家族はどう対応すればよいですか
まず、本人を責めたり、何度も強く説得したりしないことが大切です。
「なぜ分からないの」と責めるより、立つ前にナースコールを押す、手すりを使う、麻痺側の手の位置を確認するなど、具体的な安全手順を一緒に確認します。
転倒や無断離床が続く場合は、家族だけで対応しようとせず、医療者や介護サービスへ相談してください。
どのADLを確認しますか
本人に必要で、危険へつながりやすいADLを優先します。
特に、移乗、歩行、トイレ、更衣、車椅子操作、麻痺側上肢管理は重要です。できるかどうかだけでなく、危険を予測できるか、援助を求められるか、同じ安全行動が別場面でも再現するかを確認します。
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まとめ
病態失認は、片麻痺などの障害への気づきが乏しい状態です。
ただし、単に「麻痺を認めない」という発言だけで判断するものではありません。身体失認、病識欠如、心理的否認、失語、注意障害、記憶障害、せん妄などと分けて考える必要があります。
評価では、次の流れを使います。
- 全身状態、理解、関連する高次脳機能を確認する
- 課題前の成功予測を聞く
- 安全を確保して実際の遂行を観察する
- 課題後の自己評価を確認する
- 条件を変えて再現性を見る
- 有効な安全手順を病棟・家族と共有する
目標は、本人に「麻痺がある」と言わせることだけではありません。
転倒や損傷を防ぎ、必要な援助を選び、安全行動を別場面でも再現できるよう支援することです。
参考文献
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- Orfei MD, Robinson RG, Prigatano GP, Starkstein S, Rüsch N, Bria P, Caltagirone C, Spalletta G. Anosognosia for hemiplegia after stroke is a multifaceted phenomenon: a systematic review of the literature. Brain. 2007;130(Pt 12):3075-3090. doi:10.1093/brain/awm106. PMID:17533170.
- Jenkinson PM, Preston C, Ellis SJ. Unawareness after stroke: a review and practical guide to understanding, assessing, and managing anosognosia for hemiplegia. Journal of Clinical and Experimental Neuropsychology. 2011;33(10):1079-1093. doi:10.1080/13803395.2011.596822. PMID:21936643.
片麻痺の存在を無視したり、否認する症状を、片麻痺に対する病態失認といいます。今回病態失認について、文献を参考に知識の整理をしていきたいと思います。
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